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五月闇
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さつきやみ
ふりがな文庫
“
五月闇
(
さつきやみ
)” の例文
それならば
爲方
(
しかた
)
がない。が、
怪猫
(
ばけねこ
)
は
大袈裟
(
おほげさ
)
だ。
五月闇
(
さつきやみ
)
に、
猫
(
ねこ
)
が
屋根
(
やね
)
をつたはらないとは
誰
(
たれ
)
が
言
(
い
)
ひ
得
(
え
)
よう。……
窓
(
まど
)
の
燈
(
ひ
)
を
覗
(
のぞ
)
かないとは
限
(
かぎ
)
らない。
春着
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
高橋の手勢は、橋上を押してゆき、隅田藤内左衛門の一勢は、水馬隊を編成して、橋下を泳ぎわたる——となって、前夜の北岸は
五月闇
(
さつきやみ
)
のうちに殺気立った。
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
真暗い
五月闇
(
さつきやみ
)
に
草舎
(
くさや
)
の紅い火を見るも好い。雨も好い。
春陰
(
しゅんいん
)
も好い。秋晴も好い。
降
(
ふ
)
る様な星の夜も好い。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
平次は紙入を持つて追つかけましたが、八五郎の姿はもう、
五月闇
(
さつきやみ
)
の中に消えてしまひました。
銭形平次捕物控:278 苫三七の娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
朴
(
ほお
)
の一種だそうです。この花も
五月闇
(
さつきやみ
)
のなかにふさわなくはないものだと思いました。然しなんと云っても堪らないのは梅雨期です。雨が続くと私の部屋には湿気が充満します。
橡の花
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
▼ もっと見る
中陰の翌日からじめじめとした雨になって、
五月闇
(
さつきやみ
)
の空が晴れずにいるのである。
阿部一族
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
山梔子
(
くちなし
)
の花はほの暗い
五月闇
(
さつきやみ
)
の中に、白い顔をもたげて、強い匂の手で通る人を呼びとめた、あの素晴らしい
実
(
み
)
の形や色はそんな心根の暖い情愛の言葉でなかつたならば何であつたらう。
雑草雑語
(新字旧仮名)
/
河井寛次郎
(著)
網打やとればものいふ
五月闇
(
さつきやみ
)
雪芝
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
風が、どっと吹いて、蓮根市の土間は
廂下
(
ひさしさが
)
りに
五月闇
(
さつきやみ
)
のように暗くなった。一雨来よう。組合わせた五百羅漢の腕が動いて、二人を
抱込
(
かかえこ
)
みそうである。
古狢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
五月十五日、
生憎
(
あいにく
)
と、こよいは月がよく
冴
(
さ
)
えている。つねならばもう
梅雨雲
(
つゆぐも
)
の
五月闇
(
さつきやみ
)
といわれる頃を。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
……世の暗さは
五月闇
(
さつきやみ
)
さながらで、腹のすいた少年の身にして夜の灯でも繁華な巷は目がくらんで
痩脛
(
やせはぎ
)
も
捩
(
ねじ
)
れるから、こんな処を
便
(
たよ
)
っては立樹に
凭
(
もた
)
れて
遺稿:02 遺稿
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その晩のわしは、まったく
捨身
(
すてみ
)
だった。田も畑も街道も見えなかった。ただ真っ暗な
五月闇
(
さつきやみ
)
の雲の
断
(
き
)
れ
目
(
め
)
に、ぴかぴかと大きく光る星だけが、何かの凶兆のように眼に映った。
茶漬三略
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その癖もの案じの眉が
顰
(
ひそ
)
む。……軒の柳に
靄
(
もや
)
の有る、
瓦斯
(
がす
)
ほの暗き
五月闇
(
さつきやみ
)
。浅黄の襟に頬白う、………また
雨催
(
あめもよい
)
の五位鷺が
啼
(
な
)
くのに、内へも入らず、お孝は
彳
(
たたず
)
む。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
まったくの
五月闇
(
さつきやみ
)
であった。
師
(
もろ
)
ヶ
原
(
はら
)
から豊川筋へかかる頃から、ポツ、ポツと白い雨の
縞
(
しま
)
が闇を斜めに切って来た。やがて、
沛然
(
はいぜん
)
たる大雨は、黙々とゆく三千の影を濡れ鼠にしていた。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それを、しかも松の枝に
引掛
(
ひっか
)
けて、——名古屋の客が待っていた。
冥途
(
めいど
)
の
首途
(
かどで
)
を導くようじゃありませんか、
五月闇
(
さつきやみ
)
に、その白提灯を、ぼっと松林の中に、という。
古狢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「そろそろ
五月闇
(
さつきやみ
)
ですから」
旗岡巡査
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
雲は低く
灰汁
(
あく
)
を
漲
(
みなぎ
)
らして、
蒼穹
(
あおぞら
)
の奥、黒く流るる処、げに
直顕
(
ちょっけん
)
せる飛行機の、一万里の荒海、八千里の
曠野
(
あらの
)
の
五月闇
(
さつきやみ
)
を、
一閃
(
いっせん
)
し、
掠
(
かす
)
め去って、飛ぶに似て、似ぬものよ。
貝の穴に河童の居る事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
下駄穿
(
げたば
)
きに傘を提げて、
五月闇
(
さつきやみ
)
の途すがら、
洋杖
(
ステッキ
)
とは違って、雨傘は、開いて
翳
(
さ
)
しても、畳んで持っても、様子に何となく色気が添って、恋の道づれの影がさし、若い心を
嗾
(
そそ
)
られて
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
五
常用漢字
小1
部首:⼆
4画
月
常用漢字
小1
部首:⽉
4画
闇
常用漢字
中学
部首:⾨
17画
“五月”で始まる語句
五月雨
五月蠅
五月
五月蝿
五月幟
五月晴
五月目
五月野
五月処女
五月躑躅