トップ
>
二重瞼
>
ふたえまぶた
ふりがな文庫
“
二重瞼
(
ふたえまぶた
)” の例文
けれど私に、いつまでも忘れられぬのはその眼であった。いくらか神経質な、
二重瞼
(
ふたえまぶた
)
の、あくまでも黒い、賢そうな大きな眼であった。
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
温厚なる
二重瞼
(
ふたえまぶた
)
と先が少々逆戻りをして根に近づいている鼻とあくまで
紅
(
くれな
)
いに健全なる顔色とそして自由自在に運動を
縦
(
ほしい
)
ままにしている舌と
倫敦消息
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
如何
(
いか
)
にも色の白かったこと、眉が三日月形に細く整って、
二重瞼
(
ふたえまぶた
)
の目が如何にも涼しい、面長な、鼻の高い、
瓜実顔
(
うりざねがお
)
であったことを覚えている。
幼い頃の記憶
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
睫毛
(
まつげ
)
の濃い、張りのある
二重瞼
(
ふたえまぶた
)
、青々と長い三日月
眉
(
まゆ
)
、スッキリした白い鼻筋、
紅
(
あか
)
い
耳朶
(
みみたぼ
)
の
背後
(
うしろ
)
から肩へ流れるキャベツ色の
襟筋
(
えりすじ
)
が、女のように色っぽいんだ。
難船小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
おだやかな眉弓の下にある両眼は、
所謂
(
いわゆる
)
「目玉の成田屋」ときく通り、驚くべき活殺自在の運動を
有
(
も
)
った
二重瞼
(
ふたえまぶた
)
の巨眼であって、両眼は離れずにむしろ近寄っている。
九代目団十郎の首
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
▼ もっと見る
と同時に眼鼻立ちは、愛くるしかるべき
二重瞼
(
ふたえまぶた
)
までが、遥に初子より寂しかった。しかもその二重瞼の下にある眼は、ほとんど憂鬱とも形容したい、
潤
(
うる
)
んだ光さえ
湛
(
たた
)
えていた。
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
厚味のある
唇
(
くちびる
)
、唇の両脇で二段になった
豊頬
(
ほうきょう
)
、物いいたげにパッチリ開いた
二重瞼
(
ふたえまぶた
)
、その上に
大様
(
おおよう
)
に
頬笑
(
ほほえ
)
んでいる濃い
眉
(
まゆ
)
、そして何よりも不思議なのは、
羽二重
(
はぶたえ
)
で
紅綿
(
べにわた
)
を包んだ様に
人でなしの恋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
丸顔で色が白く、まつげの長い
二重瞼
(
ふたえまぶた
)
の大きい眼の眼尻が少しさがって、そうしていつもその眼を驚いたみたいにまんまるく睜って、そのため額に
皺
(
しわ
)
が出来て狭い額がいっそう狭くなっている。
パンドラの匣
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
只
(
たっ
)
た一人
年寄子
(
としよりご
)
でお
富
(
とみ
)
と云う娘がございましたが
極
(
ごく
)
別嬪
(
べっぴん
)
でございます、年は十八に相成りますが、誠に世間でも評判の
好
(
よ
)
い娘で、少し赤ら顔の
質
(
たち
)
だが、
二重瞼
(
ふたえまぶた
)
で鼻筋の通った、口元の可愛らしい
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
その時三四郎は美禰子の
二重瞼
(
ふたえまぶた
)
に不可思議なある意味を認めた。その意味のうちには、霊の疲れがある。肉のゆるみがある。苦痛に近き訴えがある。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
羽織袴
(
はおりはかま
)
を着けている三十
恰好
(
かっこう
)
の男はくりくりした
二重瞼
(
ふたえまぶた
)
の、鼻の下の
髭
(
ひげ
)
を短く刈っていたりするのが、あとの四十年配の洋装の男よりも安っぽく思われた。
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
その眼の前の零下二十度近い空気を凝視している
二重瞼
(
ふたえまぶた
)
と、青い、澄んだ瞳には何等の表情も動かなかった。ただその細長い、細い、女のような眉毛だけが、苦痛のためであろう。
戦場
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
唇からは全く血の気が失せ、
二重瞼
(
ふたえまぶた
)
の両眼が、飛び出すのではないかと見開かれた。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それは白い——と云うよりもむしろ蒼白い顔の色に、ふさわしい
二重瞼
(
ふたえまぶた
)
だった。
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
二重瞼
(
ふたえまぶた
)
の大きな眼を見張っている。鼻筋が
真直
(
まっすぐ
)
に通っている。色が
赭黒
(
あかぐろ
)
い。ただの坑夫ではない。突然として云った。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
高くて広い額、ふさふさとした黒髪、
二重瞼
(
ふたえまぶた
)
のすき通るような眼、ギリシャ型の高い鼻、赤くて引きしまった唇。その青年が美男であればあるだけ、しかし、早苗さんは恐ろしかった。
黒蜥蜴
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
栗色の夥しい
渦巻毛
(
うずまきげ
)
を肩から胸まで波打たせて、黄色い裾の長いワンピース式の印度服を着ている。灰色の青白い光沢を帯びた皮膚に、濃い
睫毛
(
まつげ
)
に囲まれた、切目の長い
二重瞼
(
ふたえまぶた
)
、茶色の澄んだ瞳。
冥土行進曲
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「だって、まだあるんですもの」と針の
針孔
(
めど
)
を
障子
(
しょうじ
)
へ向けて、
可愛
(
かわい
)
らしい
二重瞼
(
ふたえまぶた
)
を細くする。宗近君は依然として
長閑
(
のどか
)
な心を頬杖に託して庭を
眺
(
なが
)
めている。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この目の
恰好
(
かっこう
)
だの、
二重瞼
(
ふたえまぶた
)
の影だの、
眸
(
ひとみ
)
の深さだの、なんでもぼくに見えるところだけを残りなく描いてゆく。すると偶然の結果として、一種の表情が出てくる。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
三千代は美くしい線を奇麗に重ねた鮮かな
二重瞼
(
ふたえまぶた
)
を持っている。眼の恰好は細長い方であるが、
瞳
(
ひとみ
)
を据えて
凝
(
じっ
)
と物を見るときに、それが何かの具合で大変大きく見える。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
二重瞼
(
ふたえまぶた
)
の
切長
(
きれなが
)
のおちついた
恰好
(
かっこう
)
である。目立って黒い
眉毛
(
まゆげ
)
の下に生きている。同時にきれいな歯があらわれた。この歯とこの顔色とは三四郎にとって忘るべからざる対照であった。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
二重瞼
(
ふたえまぶた
)
に寄る波は、寄りては
崩
(
くず
)
れ、崩れては寄り、黒い
眸
(
ひとみ
)
を、見よがしに
弄
(
もてあそ
)
ぶ。
繁
(
しげ
)
き若葉を
洩
(
も
)
る日影の、
錯落
(
さくらく
)
と大地に
鋪
(
し
)
くを、風は
枝頭
(
しとう
)
を
揺
(
うご
)
かして、ちらつく
苔
(
こけ
)
の定かならぬようである。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
一座はどっと
噴
(
ふ
)
き出した。老人は首を少し上げて頭の禿を
逆
(
さか
)
に撫でる。垂れ懸った頬の肉が
顫
(
ふる
)
え落ちそうだ。糸子は
俯向
(
うつむ
)
いて声を殺したため
二重瞼
(
ふたえまぶた
)
が薄赤くなる。甲野さんの堅い口も解けた。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「よう、いらっしゃいました」と可愛らしい
二重瞼
(
ふたえまぶた
)
を細めに云う。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
二
常用漢字
小1
部首:⼆
2画
重
常用漢字
小3
部首:⾥
9画
瞼
漢検1級
部首:⽬
18画
“二重”で始まる語句
二重
二重廻
二重外套
二重三重
二重眼瞼
二重顎
二重頤
二重腮
二重奏
二重扉