不状ぶざま)” の例文
手織縞ておりじまのごつごつした布子ぬのこに、よれよれの半襟で、唐縮緬とうちりめんの帯を不状ぶざまに鳩胸に高くしめて、髪はつい通りの束髪に結っている。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あまりの不状ぶざまに、むすめはうが、やさしかほをぽつと目瞼まぶたいろめ、ひざまでいて友禪いうぜんに、ふくらはぎゆきはせて、紅絹もみかげながれらしてつた。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
盲目聾めくらつんぼで気にはしないが、ちと商売人の端くれで、いささか心得のある対手あいてだと、トンと一つ打たれただけで、もう声が引掛ひっかかって、節が不状ぶざま蹴躓けつまずく。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はてな、そういえば、朝また、ようをたした時は、ここへ白い手が、と思う真中のは、壁が抜けて、不状ぶざまに壊れて、向うが薮畳やぶだたみになっていたのを思出す。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
江戸児えどっこだと、見たが可い! 野郎がそんな不状ぶざまをすると、それが情人いろならかんざしでも刺殺す……金子かねで売った身体からだだったら、思切って、つっと立って、袖を払って帰るんだ。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
で、老爺ぢい今度こんど自分じぶんきざんだうをを、これはまた不状ぶざま引握ひんにぎつたまゝひとしくげる、としぶきつたが、浮草うきくささつけて、ひれたて薄黒うすぐろく、水際みづぎはしづんでスツととまる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かかる時にも、片袖きれた不状ぶざまなるよりは……とや思う、真三は、ツと諸膚もろはだに払って脱いだ。、姿見に映った不思議は、わが膚のかくまで白く滑らかだった覚えはない。
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
来たらば知らしておくれよ、と不断、お茶っぴいを斥候ものみ同然だったものですから、聞くか聞かないに、何とも、不状ぶざまを演じました。……いま、そのわけを話しますが。……
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
筒服ずぼんの膝を不状ぶざまに膨らましたなりで、のそりと立上ったが、たちまちキリキリとした声を出した。
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(不器用千万なる身ぶりにて不状ぶざまに踊りながら、白拍子のむくろを引跨ひんまたぎ、飛越え、刎越はねこえ、踊る)おもえばこの鐘うらめしやと、竜頭りゅうずに手を掛け飛ぶぞと見えしが、ひっかついでぞ
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鼻と口と一所に突き出た不状ぶざまなのが、前のめりにぶくりと浮いて、膝を抱いて、! と一つ声を掛けると、でんぐりかえしを打ちそうな、彼これ大小もあったけれども、どれが七月児ななつきごか、六月児むつきご
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)