三叉みつまた)” の例文
こゝに谷は三叉みつまたをなし、街道はゲリジム山麓を西に折れてナブルスのまちに到る。余等はヤコブの井を見る可く、大道より右にきれ込む。
神将は手に三叉みつまたほこを持つてゐましたが、いきなりその戟の切先を杜子春の胸もとへ向けながら、眼をいからせて叱りつけるのを聞けば
杜子春 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
蓮池の計画もあったが、これは実現されなかった。珍しい物としては、甘茶の木だの、三叉みつまたの木などがあった。桑の木のことは、後に記す。
私の父 (新字新仮名) / 堺利彦(著)
詞の初に三叉みつまた、駒形、待乳山の地名を挙げ、「見れば心もすみ田川流に浮ぶ一葉の舟の昔は」と云つて、舟の由来に入る。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
三叉みつまたの女屋敷菖蒲あやめの寮は、大川筋の水明りから明けて、絵絹ににじませたようなあしや寮の屋根などが、ほのぼのと夢のままに浮かんできた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それがまた新に青くなつて、一樣になつて、歸り來る時、葉の裁方たちかたにまでかはりが無い、白楊の葉はしんの臟、橡の樹のはてのひら篠懸すずかけの樹のは三叉みつまたほこの形だ。
落葉 (旧字旧仮名) / レミ・ドゥ・グルモン(著)
それは三叉みつまたになった棒の先に、釘を曲げたのを植えつけた輪があり、それをさりげないようすで転がして歩く。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
たゞ、大川に面した河岸側だけ、むかし三叉みつまたと言って夏の涼みや秋の月見の風雅な場所だったことをしのばしめるように上品で瀟洒とした料理店が少し残っております。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
まづしい人人の群で混雜する、あの三叉みつまたの狹い通りは、ふしぎに私の空想を呼び起す。みじめな郵便局の前には、大ぜいの女工が群がつてゐる。どこへ手紙を出すのだらう。
散文詩・詩的散文 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
そして其処は道が三叉みつまたになって、東の方から上って来た道がそこで分かれて、一方は今の別荘の裏を通って外人部落のなかに消え、もう一方はこれは昔ながらの村道らしく
晩夏 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
第一段の上には三叉みつまたほこの形が刻まれている。登ることのできないそれらの階段はなお承口うけぐちのうちに丈夫についている。他の部分はちょうど歯のぬけたあごのようなありさまをしている。
向うは往来おうらい三叉みつまたになっておりまして、かたえは新利根しんとね大利根おおとねながれにて、おりしも空はどんよりと雨もよう、かすかに見ゆる田舎家いなかや盆灯籠ぼんどうろうの火もはや消えなんとし、往来ゆきゝ途絶とだえて物凄ものすご
BDM(ドイツ女子青年団)の〈三叉みつまたの物干棒〉のバッジをつけてルロンへ口紅を買いに行って、あっさりお断りをくったというトンチキだが、なんのつもりか鶴のように片足で立って
だいこん (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
傷口を診察するタヨリになるのは蛍色の月の光りと、木の枝の三叉みつまたに結び付けて地に立てた懐中電燈の光りだけで、それすら電池が弱りかけているらしく光線がダンダンと赤茶気て来る。
戦場 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
傾いたふなべりから、二にん半身を乗りいだして、うつむけに海をのぞくと思うと、くろがねかいなわらびの手、二条の柄がすっくと空、穂尖ほさきみじかに、一斉に三叉みつまたほこを構えた瞬間、畳およそ百余畳、海一面に鮮血からくれない
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三叉みつまたに裂けた太い尾を肩に高々と背負ったまま奇怪の舞踏をやっている。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
兵士らは殺戮さつりくの叫びを発しながら、あらゆる人家に闖入ちんにゅうして、あらゆる狼藉ろうぜきを働こうとした。百姓らは棒を持って追っかけ、荒れ犬をけしかけていた。第三の兵士が、三叉みつまたに腹を刺されて倒れた。
その三叉みつまたやじりある矢にマカオーン勇將の 505
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
神将は手に三叉みつまたほこを持っていましたが、いきなりその戟の切先きっさきを杜子春のむなもとへ向けながら、眼をいからせて叱りつけるのを聞けば
杜子春 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それは三叉みつまたになった棒の先に、くぎを曲げたのを植えつけた輪があり、それをさりげないようすで転がして歩く。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
小舟は程なく彼女たちを苫の下にかくして、矢のように、三叉みつまたの洲から、大川へ漕ぎ出て行った。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まづしい人人の群で混雑する、あの三叉みつまたの狭い通りは、ふしぎに私の空想を呼び起す。みじめな郵便局の前には、大ぜいの女工が群がつてゐる。どこへ手紙を出すのだらう。
田舎の時計他十二篇 (新字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
化粧机のあったところに食器棚をすえ、壁の靴摺くつずれ三叉みつまたのソケットから電気コンロを二つとってご飯蒸と味噌汁の鍋をかけ、食事の間に台所へ立たなくとも、居なりで用が足りるようにしてある。
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
葛城山かつらぎやまの麓にある、路が三叉みつまたになった往来へ、笛を吹きながら来かかりますと、右と左と両方の路から、弓矢に身をかためた、二人の年若な侍が、たくましい馬にまたがって
犬と笛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そこらの手頃の樹をり仆して来い。そして空井戸の上へ三叉みつまたを組め。それへ竹籠の麻縄をかけるんだ。……なに、籠をどうするのかッて。べら棒め、飾り物じゃあねえ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
神将はかうわめくが早いか、三叉みつまたほこひらめかせて、一突きに杜子春を突き殺しました。さうして峨眉山もどよむ程、からからと高く笑ひながら、どこともなく消えてしまひました。
杜子春 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
頼房は子を連れて、やしきを出、舟にのせて、河幅のもっとも広い三叉みつまたの対岸から
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そのお島姉さんが、また、使い屋に手紙を持たせて、どうしても、もう一ぺん、お前に会わなければならないことがあるから、三叉みつまた菖蒲橋あやめばしまで私に来てくれといってよこした……その返辞を」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)