トップ
>
一刷
>
ひとはけ
ふりがな文庫
“
一刷
(
ひとはけ
)” の例文
野と山にはびこる
陽炎
(
かげろう
)
を巨人の絵の具皿にあつめて、ただ
一刷
(
ひとはけ
)
に
抹
(
なす
)
り付けた、
瀲灔
(
れんえん
)
たる春色が、十里のほかに
糢糊
(
もこ
)
と
棚引
(
たなび
)
いている。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そこから
斜
(
ななめ
)
に濃い
藍
(
あい
)
の一線を
曳
(
ひ
)
いて、青い空と
一刷
(
ひとはけ
)
に同じ色を連ねたのは、いう迄もなく田野と市街と城下を巻いた海である。
縷紅新草
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
池は
玉
(
ぎょく
)
もて張りたらんやうに白く湿める水の
面
(
も
)
に、静に魚の
溌
(
は
)
ぬる聞こえて、
瀲灔
(
ちらちら
)
と石燈籠の火の解くるも
清々
(
すがすが
)
し。塀を隔てて江戸川
縁
(
べり
)
の花の
林樾
(
こずえ
)
は
一刷
(
ひとはけ
)
に淡く、向河岸行く辻占売の声
幽
(
ほの
)
かなり
巣鴨菊
(新字旧仮名)
/
正岡容
(著)
秋風の
一刷
(
ひとはけ
)
したる草木かな
六百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
峰を離れて、
一刷
(
ひとはけ
)
の薄雲を
出
(
いで
)
て玉のごとき、月に向って
帰途
(
かえりみち
)
、ぶらりぶらりということは、この人よりぞはじまりける。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
峰から落し、谷から
推
(
お
)
して、夕暮が次第に迫った。雲の峰は、
一刷
(
ひとはけ
)
刷いて、薄黒く、坊主のように、ぬっと立つ。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
即ち襖の
破目
(
やれめ
)
を
透
(
とお
)
して、一つ突当って、
折屈
(
おりまが
)
った上に、たとえば月の影に、
一刷
(
ひとはけ
)
彩
(
いろど
)
った如く見えたのである。
霰ふる
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
即
(
すなは
)
ち
襖
(
ふすま
)
の
破目
(
やれめ
)
を
透
(
とほ
)
して、
一
(
ひと
)
つ
突當
(
つきあた
)
つて、
折屈
(
をりまが
)
つた
上
(
うへ
)
に、たとへば
月
(
つき
)
の
影
(
かげ
)
に、
一刷
(
ひとはけ
)
彩
(
いろど
)
つた
如
(
ごと
)
く
見
(
み
)
えたのである。
霰ふる
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
薄
(
うっす
)
りと
廂
(
ひさし
)
を包む
小家
(
こいえ
)
の、紫の
煙
(
けぶり
)
の中も
繞
(
めぐ
)
れば、低く裏山の根にかかった、
一刷
(
ひとはけ
)
灰色の
靄
(
もや
)
の間も通る。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一刷
(
ひとはけ
)
黒き愛吉の
後姿
(
うしろつき
)
、
朦朧
(
もうろう
)
として幻めくお夏の
背
(
そびら
)
に
蔽
(
おお
)
われかかって、玉を
伸
(
の
)
べたる襟脚の、手で掻い上げた
後毛
(
おくれげ
)
さえ、一筋一筋見ゆるまで、ものの余りに白やかなるも
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しばらくすると、薄墨をもう
一刷
(
ひとはけ
)
した、
水田
(
みずた
)
の際を、おっかな
吃驚
(
びっくり
)
、といった形で、
漁夫
(
りょうし
)
らが
屈腰
(
かがみごし
)
に引返した。手ぶらで、その手つきは、大石投魚を取返しそうな構えでない。
貝の穴に河童の居る事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
愁眉
(
しうび
)
は
即
(
すなは
)
ち
眉
(
まゆ
)
を
作
(
つく
)
ること
町内
(
ちやうない
)
の
若旦那
(
わかだんな
)
の
如
(
ごと
)
く、
細
(
ほそ
)
く
剃
(
あた
)
りつけて、
曲
(
まが
)
り
且
(
か
)
つ
竦
(
すく
)
むを
云
(
い
)
ふ。
泣粧
(
きふしやう
)
は
目
(
め
)
の
下
(
した
)
にのみ
薄
(
うす
)
く
白粉
(
おしろい
)
を
塗
(
ぬ
)
り
一刷
(
ひとはけ
)
して、ぐいと
拭
(
ぬぐ
)
ひ
置
(
お
)
く。
其
(
そ
)
の
状
(
さま
)
涙
(
なみだ
)
にうるむが
如
(
ごと
)
し。
唐模様
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
刷
常用漢字
小4
部首:⼑
8画
“一刷”で始まる語句
一刷毛
一刷新