とほ)” の例文
日本にほん化物ばけもの貧弱ひんじやくなのにたいして、支那しなるとまつたことなる、支那しなはあのとほ尨大ぼうだいくにであつて、西にしには崑崙雪山こんろんせつざん諸峰しよぼう際涯はてしなくつらな
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
それといふのが、時節柄じせつがらあつさのため、可恐おそろしわるやまひ流行はやつて、さきとほつたつじなどといふむらは、から一めん石灰いしばひだらけぢやあるまいか。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これから釣堀つりぼりへまゐりますと、男女なんによ二人連ふたりづれゆゑ先方せんぱうでもかして小間こまとほして、しゞみのおつけ、おいも煑転につころがしで一猪口いつちよこ出ました。
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
とほりかゝるホーカイぶしの男女が二人、「まア御覧ごらんよ。お月様。」とつてしばら立止たちどまつたのち山谷堀さんやぼり岸辺きしべまがるがいな当付あてつけがましく
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
このとほりに器械觀測きかいかんそく結果けつか體驗たいけん結果けつかとは最初さいしよから一致いつちがたいものであるけれども、それを比較ひかくしてみることは無益むえきわざではない。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
あのしろ着物きものに、しろ鉢巻はちまきをした山登やまのぼりの人達ひとたちが、こしにさげたりんをちりん/\らしながら多勢おほぜいそろつてとほるのは、いさましいものでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
わたくしじゆく御存知ごぞんちとほ高等女學校卒業以上かうとうぢよがくかうそつげふいじやう程度ていどもの入學にふがくせしめるので、女子ぢよし普通教育ふつうけういくはまづをはつたものとなければなりません。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
彼女かのぢよ小使部屋こづかひべやまへとほりかゝつたときおほきな炭火すみびめうあかえる薄暗うすくらなかから、子供こどもをおぶつた内儀かみさんがあわてゝこゑをかけた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
これも、えら婦人ふじん傳記でんきとほり、著者ちよしや讀者どくしや婦人ふじんだといふことは、かならずしも、書物しよもつよりも推奬すゐしやうすべき理由りいうにはなりさうもない。
読書の態度 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「ふん、坊主ばうずか」とつてりよしばらかんがへたが、「かくつてるから、こゝへとほせ」とけた。そして女房にようばうおくませた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
ハヾトフは其間そのあひだ何故なにゆゑもくしたまゝ、さツさと六號室がうしつ這入はひつてつたが、ニキタはれいとほ雜具がらくたつかうへから起上おきあがつて、彼等かれられいをする。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
渡金めつききんに通用させ様とするせつない工面より、真鍮を真鍮でとほして、真鍮相当の侮蔑を我慢する方がらくである。と今は考へてゐる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
は一こく友人ゆうじん送別会席上そうべつかいせきぜう見知みしりになつたR国人こくじんであつたので、わたしはいさゝか心強こゝろつよかんじて、みちびかるゝまゝにおくとほつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
そのうちで、よるひるもぶっとほしにいへそばはなれずに、どうにかして赫映姫かぐやひめつてこゝろざしせようとおも熱心家ねつしんか五人ごにんありました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
父も家庭に対するくるしみ、妻子に対するくるしみ、社会に対するくるしみ——所謂いはゆる中年の苦痛くるしみいだいて、そのの狭い汚い町をとほつたに相違さうゐない。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
西町奉行にしまちぶぎやう荒尾但馬守あらをたじまのかみが、江戸表えどおもてから着任ちやくにんするといふので、三十與力よりきは、非番ひばん同心どうしんれて、先例せんれいとほ守口もりぐちまで出迎でむかへた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
しも貴下こなたが、世間せけんふやうに、阿呆あはう極樂ごくらくひいさまをれてかっしゃるやうならば、ほんに/\、世間せけんとほり、不埓ふらちことぢゃ。
申立てしも今聞とほりなり眞直まつすぐに申立よ此上つゝかくすに於ては急度きつと申付るぞと聞て善右衞門ヘイ明白めいはくに申上ます私しは然樣さやうなる者を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おやないだが、成長せいてうしたらアノとほりの獰惡振だうあくぶりを相續さうぞくするにちがひない、環境かんけうつみだいつそうちつてやらうかとおもつて、また躊躇ちうちよした。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
くちるきおひとこれをきて、さてもひねくれしおんなかな、いまもし學士がくしにありて札幌さつぽろにもゆかず以前いぜんとほなまやさしく出入でいりをなさば
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼等かれら最初さいしよんだつち強大きやうだい牽引力けんいんりよく永久えいきう彼等かれらとほはなたない。彼等かれら到底たうていつちくるしみとほさねばならぬ運命うんめいつてるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
其れからたヽみの破れを新聞で張つた、はしらゆがんだ居間ゐまを二つとほつて、横手の光琳の梅を書いたふるぼけた大きい襖子ふすまを開けると十畳敷許の内陣ないぢん
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
しかし大蛇も負傷したり殺されかかつたりして、永い月日を経て漸く海まで水路をとほす。大蛇の作つた路がシヤノン河になつたといふ話である。
大へび小へび (新字旧仮名) / 片山広子(著)
根本は、ぼくの考へ方に、しよせん、やり拔けない道なら、そして自分の本道でもないのだから「初心うぶとほした方がいゝ」
折々の記 (旧字旧仮名) / 吉川英治(著)
二人ふたりは、子供こどもいてあかるいとほりかられて、くらみちあるいた。くらいところても、銀座ぎんざあかるみをあるひと足音あしおときこえた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
日本につぽんやまのうさぎには二通ふたとほりあつて、そのひとつは平常へいじよう褐色かつしよくをしてゐますが、ふゆになると眞白まつしろかはるもの、もひとつは一年中いちねんじゆうとほして褐色かつしよくのものです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
あいちやんは脚下あしもと生物いきものころすのをおそれて其甕そのかめはふさうとはせず、其處そことほりがけに蠅帳はへちやうひとつにれをしまひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「然うかい、君も然うなのかい、」と私は引取ツて、「工場の前も幾度いくたびとほツたか知れないが、今日ほど悲しいとかんじたことはこれまで一度いちどもなかツた。 ...
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
さくらかはむかされては大變たいへんと、兒童こども早速さつそく親父おやぢとほりになつてその翌日よくじつから平常いつもごと學校がくかうふううちた。けれどもけつして學校がくかうにはかない。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
... 貴樣達きさまたちつとるとほ中根なかねはあの行軍かうぐん途中とちうあやまつてかはちた‥‥」と、軍曹ぐんそうはジロりと中根なかねた。「クスつ‥‥」と、だれかが同時どうじした。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
斯くして支那に到着すると、支那はむやみに體面を重んずる國であり、海外より來る者は之を蠻夷の使者として、國王の上表などが無ければとほりが惡い。
聖徳太子 (旧字旧仮名) / 内藤湖南(著)
火事があつて、とほれないんです。廻り道をしたら自転車のチェーンがはづれて、真暗まつくらなもんで、なかなか……。
雅俗貧困譜 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
雪吹ふゞき其日のくれやみ次日つぎのひ晴天せいてんなりければ近村きんそんの者四五人此所をとほりかゝりしに、かの死骸しがい雪吹ふゞきうづめられて見えざれども赤子あかご啼声なくこゑを雪の中にきゝければ
發見はつけんしたのはこのしゆ例外れいぐわいで、突起つまみいのである。其代そのかはり、兩端りやうたん二箇宛ふたつづゞ小孔せうこう穿うがつてある。ひもるゐしたものとほして、それをつまやうにしたのかもれぬ。
彼は いい鳥が といはぬばかりに忽ちとほせんぼをして二つ三つ犬じらみをぶつつけた。お蕙ちやんは
銀の匙 (新字旧仮名) / 中勘助(著)
せうのおかみさんが河端かわばたいもあらつてをりました。そこをとほりかけた乞食こじきのやうなぼうさんがそのいもをみて
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
あんまりなまけたのでむかしわたくし先祖せんぞ神様かみさまなぐられまして、ごらんのとほ身体中からだぢうこぶだらけになりました
おきとほつてゐて、印南野いなびぬ草原くさはらを、はるかにてゐる。そのうちに、とほ加古川かこかは川口かはぐちえてた。あの川口かはぐちは、つてゐるんだ。なつかしい舟泊ふなどまりのあるところだ。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
こもりづのさはたづみなる石根いはねゆもとほしておもふきみはまくは 〔巻十一・二七九四〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
うしなはれゆく感覚かんかく懸命けんめいたゝかひながら、いたるまで、まもとほしたたうをとぎれ/\にんだ
白鷺が隠遁者いんとんしやとほしてゐるやうに、成るべくなら医者なぞにならぬ方がよい。
そのかへりがけ、それは月夜つきよばんのことでありましたが、あの應神天皇おうじんてんのう伯孫はくそんときから百年ひやくねんほどまへあたる)の御陵ごりようまへとほりかゝると、非常ひじよう立派りつぱあかうまつてゐるひと出會であひました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
それにしてもみぎ所謂いわゆる小櫻姫こざくらひめ』とは何人なんびとか? 本文ほんぶんをおみになればわかとほり、この女性じょせいこそは相州そうしゅう三浦みうら新井城主あらいじょうしゅ嫡男ちゃくなん荒次郎あらじろう義光よしみつ奥方おくがたとして相当そうとうられているひとなのであります。
げられたものは、一人々々ひとり/\検疫医けんえきいならんだ段階子だんばしごしたとほつてうへく。『ミストル・アサヤーマ』。「ヤ」で調子てうしげてすこつて「マ」でげる。成程なるほどやまのやうにきこえる。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
ほんとに私が彼にいて行くとしたら——ほんとに彼のすゝめる犧牲を拂ふとしたら、私は絶望的にやりとほすだらう。私はすべてのものを祭壇へさゝげるだらう——魂も生命いのちもまつたき犧牲いけにえをも。
おそれあたりて、わがにくあらたなるべし。」みんなあとから、かみあかい、血色けつしよく一人ひとりとほる。こいつにけていたのだから、きふ飛付とびついてやつた。この気味きみわるで、そのくちおさへた。
とほりすがる肥満女ふとつちよねぎもてるかひなりてうちいどむ。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
とほつたら
歌時計:童謡集 (旧字旧仮名) / 水谷まさる(著)
四谷よつやとほりへ食料しよくれうさがしにて、煮染屋にしめやつけて、くづれたかはら壁泥かべどろうづたかいのをんで飛込とびこんだが、こゝろあての昆布こぶ佃煮つくだにかげもない。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
丁度ちようど普通ふつうちひさななみについてはまおい經驗けいけんするとほりであるから、此状態このじようたいになつてからは、なみといふよりもむしながれといふべきである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)