黒奴くろんぼ)” の例文
黒奴くろんぼにサアやナイトの爵位、立法議会の選挙権などを与へてある程度まで威張らせて置く英人の度量が大きいと言はねば成らない。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
ロリー氏は椅子に掛けたまま身を動かして、例の黒奴くろんぼのキューピッドたちの病院患者行列の方へ心配そうな眼をちらりと向けた。
滑稽なる道化者が、この中で独りそのおどろきを慎みなく踊って見せたのは皮肉である。それは信長の愛僕であった例の黒奴くろんぼの黒助であった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
唯だ日本人の躰格は世界中或る黒奴くろんぼを除きて最も下等であるが、日本犬の躰格は世界各国の犬と比較して中等以上どころか寧ろ上等に位しておる。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
南方先生若い盛りに黒奴くろんぼ女の夜這よばいをしかかえしたに次いで豪い(『別訳雑阿含経』巻二十、南方先生已下いかやつがれの手製)。
畳一畳ほどのむしろの台へ、見る間にうずたかく積む光景は、油地獄で、むかしキリシタンをゆでころばしたようには見えないで、黒奴くろんぼ珊瑚畑さんごばたけに花を培う趣がある。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
よしは黒奴くろんぼの小娘のように、すっかり土にまみれながら、父親が土の中から掘り出した木の根を、一本ずつ運んで行って、冬籠りの薪をあつめる役を、自ら引き受けていた。
土竜 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
たとえば、枝珊瑚樹えださんごじゅを台にして、それに黒奴くろんぼが大勢遊んでいるようなものをこしらえる。
日出雄少年ひでをせうねんわたくしかほ見詰みつめて『おや/\、叔父おぢさんは何時いつにか、黒奴くろんぼになつてしまつてよ。』と自分じぶんかほ自分じぶんにはえず、昨日きのふ美少年びせうねんも、いまけ、潮風しほかぜかれて
小さな黒奴くろんぼ女のさざめき……夜になれば、私の夢の伴奏をしようとて、音楽的な木立こだちどもが、憂鬱な木麻黄フイラオスが、物悲しい歌をうたふ! さうだ、たしかに、私の欲しい飾りはあそこにあるのだ。
赤子あかごらののなやみ、わら黒奴くろんぼ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
慳貪けんどんなる黒奴くろんぼ曲馬きよくば師は
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
此処ここのアラビヤ族の黒奴くろんぼ馬来マレイ印度インドのに比して一層毒毒どくどくしい紫黒色しこくしよくをして居て、肉も血も骨までも茄子なすびの色を持つて居さうに想はれる。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
或る伴天連は自分が海外から供に連れて来た黒奴くろんぼを、信長に献上した。信長がそれをたいへん珍しがって見ていたからである。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いずれ一度はとりことなって、供養にとて放された、が狭い池で、昔売買うりかいをされたという黒奴くろんぼ男女なんにょを思出させる。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
病院患者の行列のような、黒奴くろんぼのキューピッドたちが、死海の果物を盛った黒い籠を、黒い女性の神々に捧げていたが、——それから彼はマネット嬢に対して彼の正式のお辞儀をした。
あるはまた阿蘭船おらんせんなる黒奴くろんぼ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
アラビヤらしい黒奴くろんぼ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
中に一ぺんの丸木船に杓子しやくしの様な短い櫂を取つて乗つて居る丸裸の黒奴くろんぼ趺坐あぐらをかきながら縦横に舟を乗廻してしきりに手真似でぜにを海中に投げよと云ふ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
彼がオルガンチノを愛するのも、他の伴天連たちを見るのも、要するに、黒奴くろんぼを可愛がるのと同じ意味のものだった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(公には、よほど黒奴くろんぼがお気に入ったとみえますな。いったい何処がよろしくてそんなに御寵愛なさるのですか)
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黒奴くろんぼ特有な油光りのしている皮膚に、ギョロと、眼が白く、唇は厚くて赤い。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
更紗さらさまとい、黒い皮膚に、たま金環きんかんを飾っている二人の黒奴くろんぼだった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「一見して分る黒奴くろんぼだ。名は、黒旋風こくせんぷう李逵りきといって」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)