願掛がんが)” の例文
一時に全国諸社の奉幣ほうへいを遊ばすので、なにか一つの社だけに願掛がんがけをすることが、ほかをおろそかにするように感じられたのであろう。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
あら、またお母さまはあんな事ばかり云っていらっしゃるんですもの、御病気は時節が来ないと癒りませんから、私は一生懸命に神さまへお願掛がんがけを
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何も言わずに、心に怨んで、薄情ものに見せしめに、命の咒詛のろいを、貴女あなた様へ願掛がんがけさしゃった、あねさんは、おお、お怜悧りこうだの。いいおだ。いいおだ。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わたくしぞんじてりますのは、ただきれいな願掛がんがけのおはなしばかりで、あまり面白おもしろくもないとおもいますが、一つだけ標本みほんとして申上もうしあげることにいたしましょう……。
「でしょう。何かの願掛がんがけで、親たちがわざとあんな男の子の服装なりをさせてあるんだそうです。」
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この榎に願掛がんがけすれば、浮気男に夢が通じるとか、恋仇こいがたきみつかせるとかいう迷信が生まれ、袴垂が獄死した永延えいえん二年六月七日の七ノ日を賽日さいにちとして、クサ市の盗児から
もう十六にも成りましたし、お弟子さんのお話に三十三番札所の観音様を巡りさえすれば、んな無理な願掛がんがけでも屹度きっと叶うということを聞きまして
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それからモーひと申上もうしあげてきたいのは、あの願掛がんがけ……つまり念入ねんいりの祈願きがんでございまして、これはたいていひと寝鎮ねしずまった真夜中まよなかのものとかぎってります。
前後三たびまでかかる不思議にい、そのたびごとに鉄砲をめんと心に誓い、氏神うじがみ願掛がんがけなどすれど、やがて再び思い返して、年取るまで猟人かりうどの業をつることあたわずとよく人に語りたり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
お沢 はい、封じます、その願掛がんがけなんでございますもの。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
本当にこう早くなおろうとは思わなかった、山田さんも丹精なすったし私も心配致しましたが、実に有難い、私は一生懸命にいけはたの弁天様へ願掛がんがけをしました
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そうするうちにも、おんなほうでは、あめにもかぜにもめげないで、初夜しょやころになるとかならず願掛がんがけにまいり、熱誠ねっせいをこめて、はや子供こどもさずけていただきたいとせがみます。
照「はい、わたくしはあのいけはたの弁天様へ、養子を致す事を三年の間願掛がんがけをしてちました」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
心持こゝろもちばかりの追善供養ついぜんくようを致しやして、良人に命があらば、何卒どうぞ帰って親子四人よったり顔が合わしていと、無理な願掛がんがけをして居りやんした、此の観音さまは上手じょうず彫物師ほりものしが国へ来た時
親父と手を引合って弁天さまへ参詣して願掛がんがけをしたが、酒を禁って置きながら味淋でも呑んで酔えば同じことだ、味淋酒というからこれも矢張やっぱり酒だ、どうぞ堪忍しておくんなさい