非凡ひぼん)” の例文
もしこの評眼ひようがんをもちて財主の妹を財主と共に虐殺したる一節をまば、作者さくしや用意よういの如何に非凡ひぼんなるかをるにまどはぬなるべし。
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
学校に行かなければ学問が出来ないような、教育を受けなければ立身が出来ないような、そんな人間なら別段非凡ひぼんな能力や材幹があるのじゃない。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それほど、ジェンナーは自然を観察する非凡ひぼんな力をもっていました。それであればこそ、搾乳婦さくにゅうふの言葉をきいて、ただちに種痘法しゅとうほうに思いついたのです。
ジェンナー伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
忍剣にんけんのうしろには木隠龍太郎こがくれりゅうたろう山県蔦之助やまがたつたのすけ巽小文治たつみこぶんじ竹童ちくどうなど、いずれも非凡ひぼん面構つらがまえをしてッ立っている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ゆきが、あのようにもっては、どんなおとこやましてくることはできぬだろう。……しかし、その勇士ゆうしは、また非凡ひぼんじゅつで、ゆきうえわたってこないともかぎらない。
びんの中の世界 (新字新仮名) / 小川未明(著)
われわれのような俗人ぞくじんが論ずるから右のようになるが、しかし非凡ひぼんなる頭脳ずのう深遠しんえんなる学識がくしきをそなえた針目博士自身としては、新しい金属の創造などということは
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかしそれを別な言葉で云って見ると非凡ひぼんなものを平凡へいぼんにするという馬鹿気た意味にもなって来ます。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
六十歳の金貸と言つても、武家崩れの非凡ひぼんの體格で、しかも刄物は眞つ直ぐ突つ立つた樣子です。
この言葉にもかかわらず孔子の偉大いだいな完成はその先天的な素質の非凡ひぼんさにるものだといい、宰予は、いや、後天的な自己完成への努力の方があずかって大きいのだと言う。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
たとへ非凡ひぼん手腕しゆわんありとも艦員かんゐんならぬものがほううごかし、じうはなこと出來できないのである。
非凡ひぼんなる人といはるる男に会ひしに
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
この非凡ひぼんやま
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
実業家マルタン氏が舵手だしゅだったが、氏は非凡ひぼんなうでをあらわして、波をうまくのり切った。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
にもかくにも非凡ひぼん智能ちのう遠大えんだい目的もくてきとをいうすることなれば、何時いつ意外いぐわい方面はうめんより意外いぐわい大功績だいこうせきもたらしてふたゝ吾人ごじん眼前がんぜんあらはれきたるやもからず、刮目くわつもくしてきなり。
その早技はやわざも、非凡ひぼんであったが、よりおどろくべきものは、かれのこい眉毛まゆげのかげから、らんらんたる底光をはなってくる二つのひとみである。それは、やりの穂先よりするどい光をもっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
娘お幾の可愛らしさは非凡ひぼんですが、下女のお崎も、健康さうな良い娘でした。
非凡ひぼんなる人のごとくにふるまへる
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)