さはり)” の例文
これは「さはり」の用例に本づく説であるが、「さはりあらめやも」、「さはり多み」、「さはることなく」等だけにるとそうなるかも知れないが
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
命惜まぬ客人よ。生くといふには種々あり。少年の心は物に感じ易しといふに、吾黨がかくわずらひなくさはりなき世渡するを見て、羨ましとは思はずや。
能久親王を城に迎へまつらんとせさせ給ひしに、さはりありて果させ給はず。五月十五日官軍東叡山を囲みて彰義隊を討つ。能久親王東叡山を出でさせ給ふ。
能久親王年譜 (新字旧仮名) / 森鴎外森林太郎(著)
御免成おゆるしなされて御役目のさはりなるべしと申けるを粂之進かうべふり我其方に心をかくればこそ沙汰さたなしに致しおきたり其恩を思はゞ我方わがかたに居よいとまは出すまじと無體むたい引寄ひきよせるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さしも願はぬ一事いちじのみは玉を転ずらんやうに何等のさはりも無く捗取はかどりて、彼がむなしく貫一の便たよりを望みし一日にも似ず、三月三日はたちまかしらの上にをどきたれるなりき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
なほさぐりし手先てさきさはりしはまさしく熊也。
ほとけさはりにもんべぢやねえか
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
はや浅ましき死様しにやうは知れたる事に候へば、外に私の願のさはりとも相成不申あひなりまをさずやと、始終心に懸り居り申候まをしさふらふ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
申す共八十五歳の老人らうじん後々のち/\さはりになることは申すまじよし申にもせよ老耄らうもう致し前後のわきまへ無と申さば少も其方の邪魔じやまには成申すまじ氣遣きづかひ無此方に案内致す可と申さるゝゆゑ大隅守殿には越前守殿を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
善し/\。我はたゞ汝に戲れたるのみ。我がために汝を驅りて懺悔のたふに就かしめんは、初より我願にあらず。たゞ汝がヘブライオスの語を學ばんに、いかなるさはりあるべきか、そは我に解せられず。
「もうそ、そ、そんな事……言つて……くれるな! 冥路よみぢさはりだ。両箇ふたりが一処に死なれりや、それで不足は無いとして、外の事なんぞは念はずに、お静、お互に喜んで死なうよ」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
くみて與へたり寶澤は押戴おしいたゞ懷中くわいちうより何やらん取出してのむ眞似まねせり此時以前のをとこ寶澤に向ひ尋けるは其方は年もゆかぬに伊勢參宮いせまゐりと見受たり奇特きどくの事なりいづれの國のうまれなるやと問ふ思慮しりよふかき寶澤は紀州と名乘ば後々のち/\さはりなるべしと早くも心付わざいつはりて私しは信州のうまれにて候と云亭主ていしゆ此を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)