陰影いんえい)” の例文
やや下ぶくれでくちびるが小さくいて出たような天女型の美貌びぼうだが、額にかざした腕の陰影いんえいが顔の上半をかげらせ大きな尻下しりさがりのが少し野獣やじゅうじみて光った。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
陽はすつかりかたむいたせゐか、霜柱を碎いた足跡が、先刻よりは濃い凹みの陰影いんえいを作つて、はつきり見えるのです。
……とびらあさうして、しかくらおくに、一人面蛇体にんめんじやたいかみの、からだを三うねり、ともに一ふりつるぎまとうたのが陰影いんえいつて、おもてつるぎとゝもに真青まつあをなのをときよ。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それは、子供の頭にぼんやりたゞよつてゐる總てのなま半可はんかな考へのやうに陰影いんえいの多い、しかし、妙に印象的なものだつた。解説の文章は、次の揷繪とつながつてゐた。
風はやわらかに吹いてゐた。五月さつきの空は少し濁ツて、眞ツ白な雲は、時々宛然さながら大きな鳥のやうにゆるやかに飛んで行く。日光は薄らいだり輝いたり、都ての陰影いんえいは絶えず變化する。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
輪廓りんくわくといひ、陰影いんえいひ、運筆うんぴつといひ、自分じぶんたしかにこれまで自分じぶんいたものは勿論もちろん志村しむらいたものゝうちでこれにくらぶべき出來できはないと自信じしんして、これならばかなら志村しむら
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
うちしめ石油色せきゆいろ陰影いんえいうちうすひかぎん引手ひきてのそばに
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
銀の陰影いんえいに吸ひついてゐる
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
陰影いんえい奥行おくゆき
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
もつれてやまぬ秦皮とねりこ陰影いんえいにこそひそみしか。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そが背後うしろたなうへ、ややあをみたる陰影いんえいうち
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
陰影いんえいのそこはかとなきおぼろめき
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
なつかしき陰影いんえいをつくらんとて
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)