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野卑
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やひ
ふりがな文庫
“
野卑
(
やひ
)” の例文
しかしてこの人なる
語
(
ことば
)
はあるいは
高尚
(
こうしょう
)
な意味に用いることもあれば、またすこぶる
野卑
(
やひ
)
なる意味を
含
(
ふく
)
ませることもある。たとえば
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
そしてルイ十四世について伝説が主張しているとおり、この初老の男も、その言葉づかいからいっさいの
野卑
(
やひ
)
な語を追放してしまった。
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
野卑
(
やひ
)
な凡下の投げることばのうちには、もっと露骨な、もっと深刻な、顔の紅くなるような
淫
(
みだ
)
らな
諷刺
(
ふうし
)
をすら、平気で投げる者がある。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
かつこの歌の姿、見ゆる限りは桜なりけりなどいへるも極めて
拙
(
つたな
)
く
野卑
(
やひ
)
なり、前の
千里
(
ちさと
)
の歌は理窟こそ
悪
(
あし
)
けれ姿は
遥
(
はるか
)
に立ちまさりをり候。
歌よみに与ふる書
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
あざみは、なまずのいうことに、
耳
(
みみ
)
をかたむけているうちに、
人間
(
にんげん
)
が、
自分
(
じぶん
)
を
毒々
(
どくどく
)
しい、
野卑
(
やひ
)
な
花
(
はな
)
だといって、
足
(
あし
)
げにしたことを
思
(
おも
)
い
出
(
だ
)
しました。
なまずとあざみの話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
▼ もっと見る
口々
(
くち/″\
)
に
喚
(
わめ
)
き立てる
野卑
(
やひ
)
な叫びが、雨の如く降って来るのを、舞台の正面に
屹然
(
きつぜん
)
と立って聞いて居る嬢の顔には、
微
(
かす
)
かに
紅
(
くれない
)
が
潮
(
ちょう
)
して来るようであった。
小僧の夢
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
貧乏と云へば、ぼろの着物、
乏
(
とぼ
)
しい食物、火の氣のない
煖爐
(
だんろ
)
、
野卑
(
やひ
)
な擧動、下劣な不品行を聯想する。貧乏は、私にとつては墮落と同じ意味であつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
問題が焦点をそれていることが、その代りに、
野卑
(
やひ
)
な金銭上の事柄にまで、こうしていがみ合わなければならぬと云う意識が、一層二人を耐らなくした。
灰神楽
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
教育の精神は単に学問を授けるばかりではない、
高尚
(
こうしょう
)
な、正直な、武士的な元気を
鼓吹
(
こすい
)
すると同時に、
野卑
(
やひ
)
な、
軽躁
(
けいそう
)
な、
暴慢
(
ぼうまん
)
な悪風を
掃蕩
(
そうとう
)
するにあると思います。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それはともかく、そのとき春吉君は、藤井先生が、このかたいなかの、学問のできない、
下劣
(
げれつ
)
で
野卑
(
やひ
)
な生徒たちに、しごく適した先生になられたことを感じたのである。
屁
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
野卑
(
やひ
)
な歌を口ぐせに教場で歌って水を満たした茶碗を持って立たせられる子などもあった。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
後輩の自分が
枯草色
(
かれくさいろ
)
の半毛織の
猟服
(
りょうふく
)
——その
頃
(
ころ
)
銃猟
(
じゅうりょう
)
をしていたので——のポケットに
肩
(
かた
)
から
吊
(
つ
)
った
二合瓶
(
にごうびん
)
を入れているのだけが、何だか
野卑
(
やひ
)
のようで一群に
掛離
(
かけはな
)
れ過ぎて見えた。
野道
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
それと同時に啓吉は、死者を前にして哄笑する
野卑
(
やひ
)
な群衆に対する反感を感じた。
死者を嗤う
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
現実に住み飽きてしまったり、現実の
粗暴
(
そぼう
)
野卑
(
やひ
)
に
愛憎
(
あいぞう
)
をつかしたり、あまりに精神の
肌質
(
きめ
)
のこまかいため、現実から追い捲くられたりした生きものであって、死ぬには、まだ生命力があり過ぎる。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
初め一概に
野卑
(
やひ
)
滑稽
(
こっけい
)
としか
映
(
うつ
)
らなかった
胡地
(
こち
)
の風俗が、しかし、その地の実際の風土・気候等を背景として考えてみるとけっして野卑でも不合理でもないことが、しだいに李陵にのみこめてきた。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
かつこの歌の姿、「見ゆる限りは桜なりけり」などいえるも極めて
拙
(
つたな
)
く
野卑
(
やひ
)
なり、前の
千里
(
ちさと
)
の歌は理屈こそ
悪
(
あし
)
けれ姿は
遥
(
はるか
)
に立ちまさり居候。
歌よみに与ふる書
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
それは、隣席の池内光太郎が彼の耳に口をつけて、
囁
(
ささや
)
き声で、芙蓉の舞台姿に、
野卑
(
やひ
)
な品評を加え続けていたことが、彼に不思議な影響を与えたのでもあったけれど。
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
不潔
(
ふけつ
)
な、
野卑
(
やひ
)
な、非文化的な、
下劣
(
げれつ
)
なものがいるということを、都会ふうの、近代的な明るい藤井先生が、どうお考えになるかと思うと、まったく、いたたまらなかった。
屁
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
ゆえにだんだんいわゆる理想の奥を探るとすこぶる
賤
(
いやし
)
むべき
野卑
(
やひ
)
なる動機に到着することがしばしばある。自己の欲望の
汚穢
(
おわい
)
を
掩
(
おお
)
うために理想という文字を用うるものがたくさんある。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
と、酒の勢いもありましょう、
野卑
(
やひ
)
な博労ことばで、
啖呵
(
たんか
)
を切ッたものです。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この歌万葉時代に流行せる
一気呵成
(
いっきかせい
)
の調にて少しも
野卑
(
やひ
)
なるところはなく字句もしまり居り候えども、全体の上より見れば上三句は
贅物
(
ぜいぶつ
)
に属し候。
歌よみに与ふる書
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
田舎芸妓のボロ三味線に、
野卑
(
やひ
)
な俗曲を、女の
甲声
(
かんごえ
)
と、男の
胴間声
(
どうまごえ
)
とが合唱して、そこへ
太鼓
(
たいこ
)
まで入っているのです。珍しく
大
(
おお
)
一座と見えて廊下を走る女中の足も忙しそうに響いて来ます。
湖畔亭事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
しかしさすがに山上の境内に入ると、そこには、謀将旗本たちが多く居て、秩序も一そう厳粛なので、さしたる
野卑
(
やひ
)
も聞えなかった。そのかわりに一種、身に迫る凄気が、十名の心をしめつけた。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
またある時はみずから
野卑
(
やひ
)
と称するほど
謙遜
(
へりくだ
)
る。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
“野卑”の意味
《名詞》
言葉や行動が下品でいやしいさま
(出典:Wiktionary)
野
常用漢字
小2
部首:⾥
11画
卑
常用漢字
中学
部首:⼗
9画
“野卑”で始まる語句
野卑陳套