返辞へんじ)” の例文
旧字:返辭
うするとその時の閣老役人達がいろ/\評議をしたと見え、長々と返辞へんじやったその返辞の中に、開鎖論と云うことをとんと云わない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
なにかでつくったみののようなものが、彼のからだにせられた。その時から、忍剣がなにをきいても、さる返辞へんじをしなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ゴーゴンゾラ博士ったらサ! ご返辞へんじなさらないと、ペンチで高圧電源線こうあつでんげんせん切断ってしまいますよ、アリャ、リャ、リャ、リャ……」
遊星植民説 (新字新仮名) / 海野十三(著)
決して他人にこれを標示ひょうじするというような潜越せんえつな考えはありませんがたってとの御質問にしがたくてざっとお返辞へんじしましたまでです。
そうして一個月たってようやく返辞へんじが来たのを見ると、判決文の中に阿 Quei の音に近い者は決して無いという事だった。
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
一二杯でもう眼をトロンとさせている大工は、さされたさかずきを不器用に大きなてのひらをそろえて受取りながら、間の抜けた返辞へんじをした。
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
〽雁がとどけし玉章たまづさは、小萩のたもとかるやかに、返辞へんじしおんも朝顔の、おくれさきなるうらみわび……
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ただ柔らかで愛嬌あいきょうがあって、可憐かれんな点は中の君のよさがお思われになる宮であった。話をされた時にする返辞へんじじらってはいるが、またたよりない気を覚えさせもしない。
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
『おい、どうも堪らなくお前は汗臭いぞ。銭湯へでも行けばいいのに。』それに対してペトゥルーシカは返辞へんじ一つしないで、壁にかかっている主人の燕尾服にブラシを掛けるとか
人を喰った返辞へんじだ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
二つのを口にかざしながら、雲とも夕霧ゆうぎりともつかない白いものにボカされているてへ、声かぎりび歩いてきた。返辞へんじがない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何日に戦争があるなどと云う評判、その二十日の期間もすで過去すぎさって、又十日と云うことになって、始終しじゅう十日と二十日の期限をもって次第々々に返辞へんじのばして行く。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
鷲尾はいい加減な返辞へんじをしながら、もう一言娘に云いたい機会をネラっていたが、最初は小格子のかげにうずくまり、次には奥の佛壇ぶつだんそばで向うむきのままたたずんでいたのが
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
電話の声は、そうです、なんのことか分らないが、確かにパチノと書いてありますよ、と返辞へんじをして、その電話を切った。ジュリアは倒れるように、安楽椅子あんらくいすに身を投げかけた。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その上母君の所在を自分らが知らずにいては、問われた場合に返辞へんじのしようもない。
源氏物語:22 玉鬘 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「なぜくのだ。返辞へんじをしたまえな」
村芝居 (新字新仮名) / 魯迅(著)
源女は返辞へんじをしなかった。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それにも返辞へんじはなく、殿中でんちゅう、ただなんとなくものさわがしいので、いまはジッとしていることもできないで、錠口じょうぐちまで足を早めながら
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると店先で団子を焼いている田舎女房風の鷲尾の妹は、いきどおったような返辞へんじをするのだった。
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
成程れはい話で、此方こっちはモウ実に金にこがれて居るその最中に、二人の子供の洋行費が天からふって来たようなもので、即刻そっこく応と返辞へんじをしなければならぬ処だが、私は考えました。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
加冠の大臣には夫人の内親王との間に生まれた令嬢があった。東宮から後宮にとお望みになったのをお受けせずにお返辞へんじ躊躇ちゅうちょしていたのは、初めから源氏の君の配偶者に擬していたからである。
源氏物語:01 桐壺 (新字新仮名) / 紫式部(著)
というような返辞へんじと、カタリと靴の鳴る音が、ドア彼方あっちでした。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
返辞へんじはなく、その代りに、渦の中へ巻き込まれるように急にグルグル廻り初める。——そしてまた直線に、どことも知らず駆けだしてゆく。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
僧の返辞へんじはこんなだった。
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
帆村は憂鬱ゆううつ返辞へんじをした。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
すぐ低いいらえが洩れてきた。しかもきわめて優しい女の返辞へんじ! 万吉はドキンと胸を躍らすと一緒に思わず「ありがてえ」と心の奥でつぶやいたことである。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ようやく新七は少し返辞へんじらしい声が出せて来た。八弥太は大真面目おおまじめなのである。嘘とは思われない。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「でも、誰ひとりとして、私のたずねることに、はっきり返辞へんじをしてくれたことがない」
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
銀五郎さんをよんでも返辞へんじはなし、多市さんをよんでもウンもスウもありません。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かたんと、音がしたようであったが、返辞へんじがないので
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
誰も返辞へんじをする者がない……。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女房のような返辞へんじ為方しかた
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)