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薄
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うっ
ふりがな文庫
“
薄
(
うっ
)” の例文
彼女は身をかがめて、手でさわってみてそれと悟った。細かな灰が
薄
(
うっ
)
すらと、二、三メートルの間廊下じゅうにまいてあった。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
それは初夏の明るい日で開け放した
障子
(
しょうじ
)
の外はすぐ
山路
(
やまみち
)
になっていて、そこをあがりおりする人の影が時とすると
雲霧
(
くもぎり
)
のように
薄
(
うっ
)
すらした影を
曳
(
ひ
)
いた。
竈の中の顔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
朝の八時頃、まだ昨日の雨の名残がどこやらに
薄
(
うっ
)
すらと籠って、しっとりとしたいい香気の空気であった。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
三吉は
指
(
ゆびさ
)
して見せた。「あそこに
薄
(
うっ
)
すらと灰紫色に見える山ねえ、あれが八つが岳だ。ずっと
是方
(
こっち
)
に紅葉した山が有るだろう、あの
崖
(
がけ
)
の下を流れてるのが
千曲川
(
ちくまがわ
)
サ」
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
既に
旅人
(
たびと
)
の歌のところで解釈した如く、柔かく消え易いような感じに降ったのをハダラニ、ホドロニというのであって、ただ「
薄
(
うっ
)
すらと」というのとは違うようである。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
▼ もっと見る
しかしまた振り返って自分等が住んでいた甲斐の国の笛吹川に添う一帯の地を望んでは、
黯然
(
あんぜん
)
としても心も
昧
(
くら
)
くなるような気持がして、しかもその
薄
(
うっ
)
すりと霞んだ
霞
(
かすみ
)
の
底
(
そこ
)
から
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
化粧水と
水白粉
(
みずおしろい
)
とだけを
薄
(
うっ
)
すらと刷いた横顔が、神々しいほど淋しく見えた。その彼女を前にして、火燵の中に蹲りながらひそかに涙を流してる自分の姿が、想像のうちに浮んできた。
反抗
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
また、前の年の秋頃から、時々、浅間山が噴火し、江戸の市中に
薄
(
うっ
)
すらと灰を降らせるようなこともあったので、
旁々
(
かたがた
)
、何か天変の起る
前兆
(
まえぶれ
)
でもあろうかと、
恟々
(
きょうきょう
)
たるむきも少くなかった。
平賀源内捕物帳:萩寺の女
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
杉
(
すぎ
)
は
鳶色
(
とびいろ
)
になり、松は
微黄
(
びこう
)
を
帯
(
お
)
び、
裸
(
はだか
)
になった
楓
(
かえで
)
の
枝
(
えだ
)
には、
四十雀
(
しじゅうから
)
が五六
羽
(
ぱ
)
、
白頬
(
しろほ
)
の
黒頭
(
くろあたま
)
を
傾
(
かし
)
げて見たり、ヒョイ/\と枝から枝に飛んだりして居る。
地蔵様
(
じぞうさま
)
の影が
薄
(
うっ
)
すら地に落ちて居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
怨じ顔の目元が、蜜酒の酔いに、
薄
(
うっ
)
すりと染まって、言うばかりなく
艶
(
あだ
)
だ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
暫
(
しばら
)
くすると、茶碗の水は
薄
(
うっ
)
すらと黄色に変った。
流線間諜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
あがり口の右側に二階の
梯子段
(
はしごだん
)
が
薄
(
うっ
)
すらと見えていた。哲郎は女に押あげられるようにされてあがって往った。
青い紐
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
僧は
菅笠
(
すげがさ
)
を
著
(
き
)
て
竹杖
(
たけづえ
)
をついていた。緑樹の色が
薄
(
うっ
)
すらとその
白衣
(
びゃくい
)
を染めて見せた。
岩魚の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
と、小さな
旋風
(
つむじかぜ
)
が起ってそれが
薄
(
うっ
)
すりと
塵
(
ちり
)
を巻きながら、
轎夫
(
かごかき
)
の頭の上に巻きあがって青い
簾
(
すだれ
)
の
垂
(
たれ
)
を横に吹いた。簾は鳥の飛びたつようにひらひらとあがった。
艶麗
(
えんれい
)
な顔をした夫人が坐っていた。
悪僧
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
薄
常用漢字
中学
部首:⾋
16画
“薄”を含む語句
薄暗
薄明
薄暮
薄氷
薄笑
薄命
薄紅
薄倖
薄紗
薄荷
薄情
薄衣
薄闇
薄汚
薄化粧
薄茶
薄気味
薄穢
薄光
薄墨
...