脇息けふそく)” の例文
鶴千代は二度までかう言つたが、ついこらへきれないで、ちやんと脇息けふそくもたれたなり、袴のなかに小便しゝを漏した。
何処が悪いのか知らなかつたが、いつも疲れきつた、ものううささうな様子をして、寝床の上で脇息けふそくもたれ、苦りきつた恐しい顔をして、ぢつと一方を凝視みつめて居た。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
自分は反動的に気がふさぎ出したから、小林君に又大津絵おほつゑでも唄ひませんかと、云つた。小林君は脇息けふそくによりかかりながら、子供のやうに笑つて、いやいやをした。
京都日記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
高麗縁かうらいべりの青疊の中、脇息けふそくもたれて、眼をやると、鳥の子に百草のを書いた唐紙、唐木に百蟲の譜をすかぼりにした欄間らんま、玉を刻んだ引手や釘隱くぎかくしまで、此部屋には何となく
内府は病み疲れたる身を脇息けふそくに持たせて、少しく笑を含みて重景を見やり給ひ
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
旅費りよひすくないから、旦那だんな脇息けふそくとあるところを、兄哥あにいつて、猫板ねこいた頬杖ほゝづゑつくと、またうれしいのは、摺上川すりかみがはへだてたむか土手どてはら街道かいだうを、やまについて往來ゆききする人通ひとどほりが、もののいろ姿容なりかたち
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
見渡せば正面に唐錦からにしきしとねを敷ける上に、沈香ぢんかう脇息けふそくに身を持たせ、解脱同相げだつどうさう三衣さんえした天魔波旬てんまはじゆんの慾情を去りやらず、一門の榮華を三世のいのちとせる入道清盛、さても鷹揚おうやうに坐せる其の傍には
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
成程なるほどきにいたうへにも、寝起ねおきにこんな自由じいうなのはめづらしいとおもつた。せき片側かたがはへ十五ぐらゐ一杯いつぱいしきつた、たゞ両側りやうがはつてて、ながらだと楽々らく/\ひぢけられる。脇息けふそくさまがある。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)