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肉體
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にくたい
間斷なく
消耗して
行く
肉體の
缺損を
補給するために
攝取する
食料は一
椀と
雖も
悉く
自己の
慘憺たる
勞力の一
部を
割いて
居るのである。
おゝ、
御坊、をしへて
下され、
此肉體の
何のあたりに、
予の
醜穢しい
名は
宿ってゐるぞ? さ、をしへて
下され、
其憎い
居所を
切裂いてくれう。
時々遠くから
不意に
現れる
訴も、
苦しみとか
恐れとかいふ
殘酷の
名を
付けるには、あまり
微かに、あまり
薄く、あまりに
肉體と
慾得を
離れ
過ぎる
樣になつた。
只、その
時知つたのは
自分の
心の
自分の
肉體の
限りない
淋しさであつた。
寧ろ
相反した
放縱な
日頃が
自然に
精神にも
肉體にも
急激な
休養を
與へたので
彼は
自分ながら一
時はげつそりと
衰へた
樣にも
思はれて
あのやうな
可憐しらしい
人間の
肉體にすら
夜叉の
魂を
宿らせたなら
苟且にも
血液の
循環が
彼等の
肉體に
停止されない
限りは、一
旦心に
映つた
女の
容姿を
各自の
胸から
消滅させることは
不可能でなければならぬ。