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ふりがな文庫
“
耗
(
へ
)” の例文
今度会津へ帰ってからも、そうした気もちを、胸一杯にもっていたが、慎九郎の噂を聞くと、今までの元気が一度に
耗
(
へ
)
った如く思った。
討たせてやらぬ敵討
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
第一腹が
耗
(
へ
)
って蒲団も帽子も
上衣
(
うわぎ
)
もないのだ。今度棉入れを売ってしまうと、
褌子
(
ズボン
)
は残っているが、こればかりは脱ぐわけには
行
(
ゆ
)
かない。
阿Q正伝
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
僕はしかたがないからなるべく跡まで待っていて、残った下駄を穿いたところが、歯の
斜
(
ななめ
)
に踏み
耗
(
へ
)
らされた、随分歩きにくい下駄であった。
百物語
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そして立ち上つて忙しげに、踵の
耗
(
へ
)
つた靴を引き摩つて戸の外へ出た。間もなく帰つて来た時、パシエンカは二つになる男の子を抱いてゐた。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
巻絹は
裁
(
た
)
ち縫うて衣裳にすれども
耗
(
へ
)
らず、衣服に
充満
(
みち
)
けるが、後にその末を見ければ延びざりけり、鍋は兵糧を
焼
(
た
)
くに、少しの間に煮えしとなり。
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
▼ もっと見る
嫉妬
(
しつと
)
が彼を捉へた、彼を刺したのである。しかしその刺㦸は健康によいものであつた。
咬
(
か
)
み
耗
(
へ
)
らす憂鬱の牙から彼を離して、休息させるものであつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
お友達の家へ寄ったと
仰有
(
おっしゃ
)
る時、蟇口や紙入を検めて見ますと、屹度五六円から十円ぐらい
耗
(
へ
)
っていますわ。
髪の毛
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
頬は、肺病患者によくある病的紅潮を呈し、そして鼻の両側に出来た深い
凹
(
くぼ
)
みは、
恰
(
あた
)
かも止め度ない涙のために、そこのところだけ
擦
(
す
)
り
耗
(
へ
)
ったかと思わせるのであった。
碧眼
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
霊肉の
資本
(
もとで
)
を払って、多大な犠牲を敢えてして、肉を
耗
(
へ
)
らし、心を労して生活してる人はない。私は彼らに作品を提供するまえに、ただちに生活を提供せよと要請したい。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
僕はまず
立派
(
りっぱ
)
な
軍艦
(
ぐんかん
)
の絵を書くそれから水車のけしきも書く。けれども早く
耗
(
へ
)
ってしまうと
困
(
こま
)
るなあ、こう考えたときでした鉛筆が
俄
(
にわ
)
かに
倍
(
ばい
)
ばかりの長さに
延
(
の
)
びてしまいました。
みじかい木ぺん
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
日本のお寺の鐘音がかくも美しいのは、我々のように内側にぶら下る重い金属製の鐘舌で叩かず、外側から、吊しかけた木製の棒の柔かく打ち
耗
(
へ
)
らされた一端で打つからである。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
中日は村
総出
(
そうで
)
の草苅り
路普請
(
みちぶしん
)
の日とする。右左から
恣
(
ほしいまま
)
に公道を
侵
(
おか
)
した雑草や雑木の枝を、一同
磨
(
と
)
ぎ
耗
(
へ
)
らした鎌で遠慮
会釈
(
えしゃく
)
もなく切払う。人よく道を
弘
(
ひろ
)
むを、
文義
(
もんぎ
)
通りやるのである。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
別の虫は何年もかゝつて樫やポプラや松やその他いろ/\の大木の
心
(
しん
)
を咬み
耗
(
へ
)
らす。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
その前屈みの
体
(
からだ
)
つき、じっと一点に凝らした眸、蒼白い汗ばんだ顔、落ち
窩
(
くぼ
)
んだこめかみ、噛み
耗
(
へ
)
らした爪、スリッパの踵の方が垂れ落ちて、靴下の不細工な繕いの跡を見せているあたりまで
決闘
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
丁度昔のやうに、己は波にゆらいでゐるゴンドラの舟を離れて、水に洗はれて
耗
(
へ
)
つた、君が館の三段の石級を踏んだ。丁度昔のやうに、己が石級の上から君の名を呼ぶと、君はすぐに返事をした。
復讐
(新字旧仮名)
/
アンリ・ド・レニエ
(著)
彼は固より英才を詩文の中に
耗
(
へ
)
らすことを
屑
(
いさぎよ
)
しとせざりき。
頼襄を論ず
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
今でも
吝
(
おし
)
みながら使い
耗
(
へ
)
らしているかも知れぬ。6585
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
苅る柴はわずかでも、汲む潮はいささかでも、人手を
耗
(
へ
)
らすのは損でございます。わたくしがいいように計らってやりましょう
山椒大夫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
彼はやっぱり肚が
耗
(
へ
)
っていた。彼は何か想っていながら想い出すことが出来なかった。たちまち何かきまりがついたような風で、のそりのそりと大跨に歩き出した。
阿Q正伝
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
「半々にしても急に註文が
耗
(
へ
)
れば変に思われますわ。何だって又二俵なんて取ったんでしょうね!」
好人物
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
短気の石山さんが、
鈍
(
どん
)
な久さんを
慳貪
(
けんどん
)
に叱りつける。「車の
心棒
(
しんぼう
)
は
鉄
(
かね
)
だが、鉄だァて
使
(
つか
)
や
耗
(
へ
)
るからナ、
俺
(
おら
)
ァ段々
稼
(
かせ
)
げなくなるのも無理はねえや」と、
小男
(
こおとこ
)
ながら小気味よく稼ぐ
辰
(
たつ
)
爺さんがこぼす。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
あの時の憎の力や愛の力を、
耗
(
へ
)
らさずに返して下さい。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
そして青い
橄欖
(
かんらん
)
の森が見えない天の川の向うにさめざめと光りながらだんだんうしろの方へ行ってしまいそこから流れて来るあやしい楽器の音ももう汽車のひびきや風の音にすり
耗
(
へ
)
らされてずうっとかすかになりました。
銀河鉄道の夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
何も食わずに、腹が
耗
(
へ
)
ったとも思わずにいたのである。
暮六
(
くれむ
)
つが鳴ると、神主が出て「残りの番号の方は明朝お
出
(
いで
)
なさい」
護持院原の敵討
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「病気にならなくても電車の故障か何かで遅刻すれば宜い。一人でも
耗
(
へ
)
ればそれ丈け助かる」
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
あんな腹の
耗
(
へ
)
った男に洒落気があるだろうか。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
収穫は次第に
耗
(
へ
)
つて、家が貧しくなつて、跡には母と私とが殆ど無財産の
寡婦
(
くわふ
)
孤児として残つた。
啻
(
ただ
)
に寡婦孤児だといふのみではない。私共は
刑余
(
けいよ
)
の人の妻子である。日蔭ものである。
津下四郎左衛門
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
人数もぽつ/\
耗
(
へ
)
つて、
本町堺筋
(
ほんまちさかひすぢ
)
では十三四人になつてしまふ。そのうち
瓦町
(
かはらまち
)
と淡路町との間で鉄砲を打ち合ふのを見て、やう/\
堺筋
(
さかひすぢ
)
を北へ、衝突のあつた処に駆け付けたのである。
大塩平八郎
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
子供を二人しか生まないことにして、そろそろ人口の
耗
(
へ
)
って来るフランスなんぞは、娼妓の型の優勝を示しているのに外ならない。要するにこの
質
(
たち
)
の女は
antisociale
(
アンチソシアル
)
です。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
歯の斜に
耗
(
へ
)
らされた古下駄を穿いて、ぶらりとこの
怪物
(
ばけもの
)
屋敷を出た。
百物語
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
梅田の
挽
(
ひ
)
かせて行く
大筒
(
おほづゝ
)
を、坂本が見付けた時、平八郎はまだ淡路町二丁目の往来の四辻に近い処に立ち止まつてゐた。同勢は見る/\
耗
(
へ
)
つて、
大筒
(
おほづゝ
)
の車を
挽
(
ひ
)
く
人足
(
にんそく
)
にも事を
闕
(
か
)
くやうになつて来る。
大塩平八郎
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
耗
常用漢字
中学
部首:⽾
10画
“耗”を含む語句
消耗
損耗
寸耗
心神衰耗
消耗熱
神経消耗
耗尽
耗弱者
音耗