罪人つみびと)” の例文
彼わがかたに進み我彼の方に進めり、貴き國司ニーンよ、汝が罪人つみびとの中にあらざるを見て、わが喜べることいかばかりぞや 五二—五四
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
道具方の男たちは、ひそひそ話しあっていました。わたしはこの罪人つみびとのあとについて、この男の家の部屋までのぼって行きました。
百人の正しい人々の白衣に対してよりも、悔い改めた一人の罪人つみびとの涙にぬれた顔に対して、天にはより多くの喜びがあるでしょう。
「齒が痛い。痛いよう! 痛いよう! 罪人つみびとと人に呼ばれ、十字架にかかり給へる、救ひぬしイエス・キリスト……齒が痛い。痛いよう!」
宿命 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
自分がいやしい罪人つみびとだったからといって、まるでむしけらみたいなものだったからといって、自分じぶんの身がつくづくいやになった時のもある。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
義人のすぐ隣に住むと考えられている罪人つみびと(己れの罪を知ってそれを悲しむ人)は自分の強味と弱味との矛盾を声高く叫び得る幸福な人達なのだ。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「倭文子さん、僕はもう罪人つみびとの様な密会にえられなくなった。君の境遇をハッキリさせて下さい。例の畑柳未亡人というのは、一体何のことです」
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
もとより罪人つみびとではないので、客の来訪や出入りは自由だった。これが囚人めしゅうどならここへは来ない。直接、侍所ノ別当へ廻され、断獄されるまでである。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
忘れずに居る程のなさけがあらば、せめて社会よのなか罪人つみびとと思へ、う言つて、お志保の前に手を突いて、男らしく素性を告白うちあけて行つたことを話した。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
これと大たい同じの動機や恐怖が、誘惑されて震えおののいている罪人つみびとのために運命のサイコロを投じたのである。
おれが罪人つみびとで、役者のティム・ハーリーガーリーよりほかの誰でもねえ、ってことを知ってるようにおれの知ってる、そこにおいで遊ばすあの不器量な陛下に
不当にも世に蔑まれ踏みにぢられた可憐な罪人つみびとを救ふために、左門の思ひ得た唯一の策がそれであつた。
それは、主が『汚れなき者正しき者は殺すべからず』と言われたにもかかわらず、おまえは偽りの裁きを言い渡し、罪なき者を罪にし、罪人つみびとを許してやつたからだ。
悪人も一転して善を行ふを罪人つみびとも一変して義を行ふを、これぞ基督教くりすとけうが教ふる実行的道徳なる。
実行的道徳 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
したがわしが全体として申しあげたいのは、もしみんなが罪業を理想化して罪人つみびとらしいポーズを取つたりしなければ、醜聞などはずつと少なくなるということですわい。
人生終局の目的とは如何いかん罪人つみびとは罪を洗去あらいさるの途あるや、如何いかにして純清に達し得べきか、これらの問題は今は余の全心を奪い去れり、しかして眼をあげて天上を望めば
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
「僕はお前の不名誉や、罪悪に対してそういったのじゃない、お前の偉大なる苦痛に対していったのだ。ところで、お前が偉大なる罪人つみびとだってことは、そりゃそのとおりだ」
「イエス・クリストよ、神の子よ、不便ふびんなる罪人つみびとに赦し給へ。主よ不便なる罪人に赦し給へ。」こんな唱事となへごとを続けさまにしてゐる。心のうちでしてゐるばかりでなく、唇まで動いてゐる。
例えば自分の父親のような心の弱い罪人つみびとたちを脅やかしているように思われた。
サンタ麻利亞マリヤ、かくもよわかる罪人つみびとしんうしほ
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
罪人つみびとゆる
起き上れる罪人つみびとのさままた斯くの如くなりき、あゝ仇を報いんとてかくはげしく打懲す神の威力ちからはいかにきびしきかな 一一八—一二〇
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
もし私が罪人つみびとかしらであるならば、私はまた苦しむ者のかしらでもあるのだ。この世がこんなに恐ろしい苦悩と恐怖とを容れる余地があるとは考えられなかった。
のみならず、この一年の間に、大赦たいしゃの令が出た。特に、五代綱吉の治代に、例の、畜類違犯で獄中にあったり、その起因による罪人つみびとは、一人あまさず、赦免しゃめんになった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
然れども誠信なる者はまことに難事にして、ポーロの如き大聖すら、嗚呼われ罪人つみびとなるかなと嘆じたる事ある程なれば、厭世の真相を知りたる人にしてこれに勝つほどの誠信あらん人は
厭世詩家と女性 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
悪事をはたらいてしまつたやうな罪人つみびとの卑屈な悔ひに悩むことなく、堂々と帰つてくることを希つてゐる。誰しも恋のまちがひはある。姦通といへども、時にはやむをえないことだね。
僕らは等しく神の前に罪人つみびとです。しかしその罪を悔い改める事によって等しく選ばれた神のしもべとなりうるのです。この道のほかには人の子の生活を天国に結び付ける道は考えられません。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
非実験的に丸呑まるのみにし自ら信条の純正を以て誇り、人にゆるにこれを以てし、もし人の信仰または行為にして自分らの信条と相反する時は、ただちに彼を不信非行の罪人つみびととして排斥せんとする。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
さうですよ。ですがあなたの言つてゐられるその名高いセルギウスではありません。わたしは大いなる罪人つみびとステパン・カツサツキイです。神様に棄てられた、大いなる罪人です。どうぞわたくしを
自分が賤しい罪人つみびとだったから、虫けらみたいなつまらない者だったからといって、自分の身がいやになった時のもある。他人が親切にしてくれなかったからといって、泣きたくなったときのもある。
聞かれ此訴訟のおもぶきにては大いなる罪人つみびとぎやくの者多し是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
せめてはわれを罪人つみびと
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
我等は皆そのかみ横死を遂げし者なり、しかして臨終いまはにいたるまで罪人つみびとなりしが、この時天の光我等をいましめ 五二—五四
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
私がとうとう誘惑の攻撃に負けてしまったのは、ありきたりの密かな罪人つみびととしてであったのだ。
せめてはわれを罪人つみびと
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
苦しみをかろめんため、をりふし罪人つみびとのひとりその背をあらはし、またこれをかくすこと電光いなづまよりも早かりき 二二—二四
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
罪人つみびとと名にも呼ばれむ
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
焔はいづれもほりの喉を過ぎてすゝみ、いづれもひとりの罪人つみびとを盜みてしかもぬすみをあらはすことなかりき 四〇—四二
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
罪人つみびとと名にも呼ばれむ
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)