かん)” の例文
旧字:
かんの壁があまりに強く振動するものだから、其のうちにとうとう、密着していた飯粒ががれてポロリと下に落ちてくるのである。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その長いかまどの上に海水を入れた石油かんを、一列にならべ、かまどの口もとで火をたくと、おくの方までじゅうぶんに火がまわった。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
がやがやと話し出したと見る間に、腰をかがめて、塵芥の山から、ブリキかんや、釘の折れや、竹切れなどを拾って、塵のつぶてを飛ばし出した。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
なかにも三四郎は腹のなかで、あの福神漬ふくじんづけかんのなかに、そんな装置がしてあるのだろうと、上京のさい、望遠鏡で驚かされた昔を思い出した。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
至って心やすい番人よりその大好物なる米と炙肉汁の混ぜ物を受けしずかに吸いおわり、右手指でその入れ物ブリキかんの底に残った米を拾い食うた後
私はそのとき、彼の小さな心臓がドラムかんのようにふくれあがり、大太鼓の乱打のような搏動はくどうをするのが感じられた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
園丁えんていはまた唐檜とうひの中にはいり洋傘ようがさ直しは荷物にもつそこ道具どうぐのはいった引き出しをあけかんを持って水をりに行きます。
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ドラムかんなどが、壕の入口にいくつも転がっていた。そして兵隊が壕を出たり入ったりしている。皆、年取った兵ばかりであった。静かななみの音がした。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
でも、大人でも、よっぽど待どおしいと見えて十字は実に早くやる、お茶碗もすぐ口にもってゆく。食物たべものは家のよりまずいが牛乳のかんは毎朝台所にぶらさがっている。
しばらく口をかずに歩いた後、Sは扇に日をけたまま、大きいかんづめ屋の前に立ち止った。
死後 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ズガニを三匹とった正は、それをあきかんにいれて得々とくとくとして石垣いしがきをのぼってきた。三角形の空地にあるあんずの木は夏にむかって青々としげり、黒いかげを土手どての上におとしている。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
そして時々おどけたことを云って悦子や姉達を笑わせ、砂糖菓子だのもちだのの小さなかんを、手品のように次々に取り出してはこっそり口を動かしたり、皆に分けてやったりした。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
石油なども口を封蝋ふうろうかんしてある大きな罎入かめいり一缶ひとかんずつもとめねばならなかった。
亡び行く江戸趣味 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
そこで僕の発明なんだが、それはね、クレオソートを一杯入れて大きなブリキかんに、丈夫な取手をつけて、そいつを自動車の後尾の車体の下へちょっと、引っかけておきさえすればいいんだ。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
こうして、小屋の屋根に降る雨水が、石油かんにどんどんたまるのを、楽しく見ながら、また食事が、にぎやかにつづくのであった。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
そこで、もう一つのドロップのかんをとりあげて、前と同じように、糸でとめて、ぶら下げて置く、その上で、最初の缶を思いきり強く叩くのである。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
もっとも、とのさまがえるのウィスキーは、石油かんに一ぱいありましたから、粟つぶをくりぬいたコップで一万べんはかっても、一分もへりはしませんでした。
カイロ団長 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そのほかにやすりとナイフとえり飾りが一つ落ちている。最後に向こうのすみを見ると、三尺ぐらいの花崗石みかげいしの台の上に、福神漬ふくじんづけかんほどな複雑な器械が乗せてある。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
井谷が「いかがでございます」と、これも何処かからの贈物らしいチョコレート菓子のかんを出したが、一同お腹が出来ているので、誰も手を出す者がなく、番茶ばかりがよく売れた。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
鉄なあこ——いや、もうそう呼んではいけないだろう、一日に六千個のてんぷらとフライを揚げてさばく、という店の主人なのだから、——一日に油をかんも使ってしまう、と鉄さんは語った。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
かどから見た煙草屋の飾り窓。巻煙草のかん、葉巻の箱、パイプなどの並んだ中に斜めにふだが一枚懸っている。この札に書いてあるのは、——「煙草の煙は天国の門です。」おもむろにパイプから立ちのぼる煙。
浅草公園:或シナリオ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
雨降りのときは、風よけの帆布を、そとの方へ四方に引っぱって、屋根から落ちる雨水を受けて、石油かんにためるようにした。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
「なァに、換えられるような式にして、三つか四つ炭と綿の入ったかんを用意しておけばいいじゃないか」
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この夏見た福神漬ふくじんづけかんと、望遠鏡が依然としてもとのとおりの位置に備えつけてあった。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いつかアルコールがなくなったとき石油せきゆをつかったら、かんがすっかりすすけたよ
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いまドロップスの入っていたかんの蓋を払いのけて底に小さなあなをあけ、そこに糸をさし入れて缶を逆さに釣り、鉛筆のじくかなにかでコーンと一つ叩いてみるがいい。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この静かな夫婦は、安之助の神戸から土産みやげに買って来たと云う養老昆布ようろうこぶかんをがらがら振って、中から山椒さんしょりの小さく結んだ奴をり出しながら、ゆっくり佐伯からの返事を語り合った。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今は一かん十セントです。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
お延は手早く包紙を解いて、中から紅茶のかんと、麺麭パン牛酪バタを取り出した。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)