精出せいだ)” の例文
生徒せいとさん、今日けふ學校がくかうですか。このさむいのに、よくおかよひですね。毎日々々まいにち/\さうして精出せいだしてくださると、このおばあさんも御褒美ごほうびをあげますよ。』
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
云ひ聞せければ長八は大いに悦こび成程それにてわかりしなりと是より紙屑は勿論もちろんおび腹掛はらかけ古鐵ふるかねるゐ何にても買込かひこみ賣買を精出せいだしけるゆゑ長八は段々と繁昌はんじやうして大いに工面くめん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
……案内者あんないしややとはれるものが、なにらないまへ道案内みちあんないたとふもなにかのえんおもふ。人一倍ひといちばい精出せいだしてさがさうからしづかにやすめ、と頼母たのもしくつて、すぐにまた下階したりた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
地のくような布を織る気になれず、やはりマハツブのごとくひきしまった布を、精出せいだして織ってお尻の出ぬように、手ばやく仕上げるのがよいということになったろうと思う。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
百姓も町人も工匠こうしょうも、流浪の心配なく自分の職業に精出せいだしていた。軍費といえばこぞって税を出した。国主からいわれない先に、彼らは、日常の物を節して、お要用いりようの時に備えていた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
精出せいだして立派な関取におなり、辛いことがあったら、その薄情な親類どもの顔を思い出して、一所懸命おやり、出世したら故郷へにしきを飾って、薄情揃いの奴等に、土下座どげざさせておやり
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
諸君もなるべく精出せいだして人のためにお働きになればなるほど、自分にもますます贅沢ぜいたくのできる余裕を御作りになると変りはないから、なるべく人のために働く分別をなさるが宜しかろうと思う。
道楽と職業 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
故に儒者の道を学ばむと思はゞ、先づ文字を精出せいだして覚ゆるがよし。次に九経きゅうけいをよく読むべし。漢儒の注解はみないにしえより伝受あり。自分の臆説おくせつをまじへず。故に伝来を守るが儒者第一の仕事なり。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
二人ふたりとも、せめてもう二、三年は勤めて、役を精出せいだせ、そう言われて、願書をお下げになりました。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
……けんども、やきもきと精出せいだいてひと色恋いろこひむのが、ぬしたち道徳だうとくやくだんべい、押死おつちんだたましひみちびくもつとめなら、持余もてあました色恋いろこひさばきけるもほふではねえだか、の、御坊ごばう
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)