真蒼まつさを)” の例文
旧字:眞蒼
烈々れつ/\える暖炉だんろのほてりで、あかかほの、小刀ナイフつたまゝ頤杖あごづゑをついて、仰向あふむいて、ひよいと此方こちらいたちゝかほ真蒼まつさをつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この時ふと、戸外そとで犬の吠える声と、門を叩く音が聞えた。ヒーヴリャは急いで駈けだして行つたが、すぐに真蒼まつさをな顔で引つ返して来た。
東京神田の駿河台に大きな病院を持つてゐる広川一氏といふ医学博士がある。芸者の噂でもすると、顔を真蒼まつさをにして怒り出すといふ、名代の堅蔵かたざうである。
尤も其日は大変ない天気で、広い芝生のうへにフロツクで立つてゐると、もうなつたといふ感じが、かたから脊中せなかへ掛けていちゞるしくおこつた位、そら真蒼まつさをとほつてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
私はその書物のなかのその話を耳にいれたとき、私もまた何かさういふ罪を犯したことがあるやうな気がしてならなかつた。病身がちな私は、屡々しば/\真蒼まつさをになつて、母に抱きついた。
町の踊り場 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
しきりに問ひ詰めますから、豆小僧はとう/\真蒼まつさをになつて泣き出しました。
豆小僧の冒険 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
はては空いつぱいに飛び廻る真蒼まつさをな太陽の幻覚げんかく
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「はい、真蒼まつさをでゐらつしやいます」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
いろ真蒼まつさをで、血走ちばしり、びたかみひたひかゝつて、冠物かぶりものなしに、埃塗ほこりまみれの薄汚うすよごれた、処々ところ/″\ボタンちぎれた背広せびろて、くつ足袋たびもない素跣足すはだしで、歩行あるくのに蹌踉々々よろ/\する。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彼は母と友人に送られて、頭に氷嚢ひようなうをつけて入場したのであつたが、第一の課目を終へて出て来たときには、顔は真蒼まつさをになつてゐた。そして近所の医者の手当を受けて自動車で帰つて来た。
花が咲く (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
小父をぢさんが来る、真蒼まつさをに、あしも顫へて
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
らうとすると、うつる、つまうつる、もすそ真蒼まつさをみづがある。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)