目下もっか)” の例文
淀橋よどばし区、四谷よつや区は、大半焼け尽しました。品川しながわ区、荏原えばら区は、目下もっか延焼中えんしょうちゅうであります。下町したまち方面は、むしろ、小康状態に入りました」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
君の目下もっかの目的は、かねて腹案のある述作を完成しようと云うのだろう。だからそれを条件にして僕が転地の費用を担任しようじゃないか。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
答 彼は目下もっか心霊的厭世主義を樹立し、自活する可否を論じつつあり。しかれどもコレラも黴菌病ばいきんびょうなりしを知り、すこぶる安堵あんどせるもののごとし。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
場所ばしょは、岡山市おかやまし郊外こうがいちかいMまちで、被害者ひがいしゃは、四ねんほどまえまで質屋しちやをやつていて、かたわら高利貸こうりかしでもあつたそうだが、目下もっか表向おもてむ無職むしょくであつて
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
すなわちヨブの目下もっかの惨苦及びきたらんとする滅亡を以て悪の結果と断定したのであって、時代思想の罪とはいえ、いかにも峻酷しゅんこくであるといわねばならぬ。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
だから、与吉がこうやってころげこんでくるのは、目下もっか八方ふさがりの証拠で——もっとも、相手が与の公ですから、お藤姐御はてんで歯牙しがにもかけていない。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
したがって二重につかえるという観念もないのであります。ただ、目下もっかは、キリスト教に対しては、その教理をやや研究的に、仏教にはほとん陶酔とうすい的状態に見うけられます。
「あはれとおぼし、峰、山、たけの、姫たち、貴夫人たち、届かぬまでもとて、目下もっか御介抱ごかいほう遊ばさるる。」
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その金がきれかゝったところで、いゝ工合に彼の健康も恢復かいふくしてきた。彼の目下もっかの急務は職に就く事であった。彼はこの数日努めて元気を奮い起して職を求め歩いた。
緑衣の女 (新字新仮名) / 松本泰(著)
これは政吉を表面に立たせて働かすこそかえって目下もっかのためであろう。——こう私は考えました。
「其処でどういうんです、貴様の目下もっかのお説は?」と岡本はあざけるような、真面目な風で言った。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ひと目下もっかの有様を見聞して、我国文運の命脈はなは覚束おぼつかなしと思い、明治元年のことなり、月日は忘れたり、小川町なる杉田廉卿れんけい氏の宅をおとない、天下騒然た文を語る者なし
蘭学事始再版之序 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
目下もっかも非常な窮境ではござるが、さりとてそのため死にもしまい。この困難を常と思えば別に不安もござらぬよ。ただし、戦争後のことであれば、負傷した者が十数人ござる。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
信州諏訪湖すわこの附近の例は、目下もっか中川・塩田の二君が調査しておられるが、是も手順はまったく同じで、ただ最後の末子ばっしが家に留まり、そのまま住宅を相続した点がちがうのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
小生は、それほどのものを売らねばならぬほど、目下もっか困窮を極めおり候。
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「ぼくは、目下もっか命がけの恋をやっている最中なんですがね。」
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
原本の大部は、目下もっか英国心霊協会に保存されて居る。
「それでは、目下もっかはお一人ですか」
水郷異聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それは、目下もっか売出うりだしの青年探偵、帆村荘六ほむらそうろくにとって、あきらめようとしても、どうにも諦められない彼一生の大醜態だいしゅうたいだった。
麻雀殺人事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
神職 町にも、村にも、この八里四方、目下もっか疱瘡ほうそうも、はしかもない、何のやまいだ。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それから、搭乗員とうじょういんの募集にちょっと手間どったが、これも一週間前に片づき、目下もっかわが独本土上陸の決死隊二百名は、刻々こくこく独本土に近づきつつあるところじゃ。
目下もっか行方不明だというんだろう。くわれたかどうか、そこまではまだわかっていない」
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それで目下もっか、東京ホテルの裏口を暴れまわっている○○獣のことは、折から現場に着き例の強い近眼鏡をひからせながら熱心に観察している蟹寺博士にまかせてしまって、敬二はカメラをもったまま
○○獣 (新字新仮名) / 海野十三(著)
妾は目下もっか姙娠五ヶ月なのであった。
三人の双生児 (新字新仮名) / 海野十三(著)