畑地はたち)” の例文
まだその比の早稲田は、雑木林ぞうきばやしがあり、草原くさはらがあり、竹藪たけやぶがあり、水田があり、畑地はたちがあって、人煙じんえん蕭条しょうじょうとした郊外であった。
雑木林の中 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
所どころ高低こうていはあっても、日のとどくかぎり野原であった。畑地はたちもなければ森もない、遠方から見るとただ一色のねずみ色の土地であった。
勘次かんじ黄昏たそがれちかくなつてからひとり草刈籠くさかりかご背負せおつてた。かれ何時いつものみちへはないでうしろ田圃たんぼからはやしへ、それからとほ迂廻うくわいして畑地はたちた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
しかし、針葉樹しんようじゅはありません。さらに畑地はたちがたくさんあるのと、大きな美しい家々がたっているのが目につきます。
一寸ちよつとにくところである。遺跡ゐせきひろいが、先年せんねん、チヤンバーレン大發掘だいはつくつこゝろみたとかで、畑地はたちはう斷念だんねんして、臺地北側だいちきたかは荒地あれち緩斜面くわんしやめんなかに四にんはいつた。
物の二十年もせったなりのこのおばあさんは、二人ふたりのむすこが耕すささやかな畑地はたちのほかに、窓越まどごしに見るものはありませなんだが、おばあさんの窓のガラスは
このあたりは、むかし畑地はたちで、最近さいきんまちになったのであって、まだところどころにや、はたけがありました。もうあきちかづいたので、すすきにはしろはないていました。
子供どうし (新字新仮名) / 小川未明(著)
然るに北多摩郡でももっとも東京に近い千歳村の僅か五百五十町歩の畑地はたちの中、地味ちみも便利も屈指くっしの六十余町歩、即ち畑地の一割強を不毛ふもうの寺院墓地にして了うのは、惜しいものだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
廣い畑地はたちで、星闇のしたに林檎の樹が、收穫後の裸の影を無數に踊らせてゐる。
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
みちは白くぼうとなっていた。右側の畑地はたちの中にまばらった農家は寝しずまって、ちょっとした明りも見えなかった。
雀が森の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
緑葉りよくえふはやしでめぐらしてる、其中そのなか畑地はたちほかには人一個ひとひとりえぬ。
順作と女は柵のない郊外電車の踏切を越えて、人家と畑地はたちの入りまじったみちを歩いて往った。
藍瓶 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)