田地でんぢ)” の例文
食終くひをはりし後九助は金二兩土産みやげに出し九郎右衞門が遺言ゆゐごん并びに伯父をぢ樣の分米ぶんまい田地でんぢ十二石手を付ずに今以て村あづけに成て居ますと話すを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『良いやうでも百姓はあきまへん。うちでも田地でんぢを少しつてますが、税が高うて引合はんよつて、賣つてしまはうか言ふてますのやがな。』
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「さうなつたら、みんなで手をつながつて北海道へでも出かけるより外ないさ。百姓が田地でんぢにありつけなくなつたらもう、どうにもをへないからな。」
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
足利あしかがの町へ縁付いている惣領娘そうりょうむすめにもいくらかの田地を分けてやった。檀那寺だんなでらへも田地でんぢ寄進きしんをした。そのほか五、六軒の分家へも皆それぞれの分配をした。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そこの田地でんぢは皆で一二たんもあらうか、平素ふだん土底つちぞこから女の涙のやうなひやつこい水がちよろちよろ流れ出すので、大抵の者は気味を悪がつて手をつけなかつた。
其頃そのころの百りやう二百りやうふのはたいしたものだから、もうこれくにかへつて田地でんぢへるし、いへてられるといふので、おほいによろこんで多助たすけに相談のうへくにかへつた。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
上總國かづさのくに上野郡かうづけぐん田地でんぢ二十石にじつこくばかりをたがやす、源五右衞げんごゑ百姓ひやくしやう次男じなんで、小助こすけふのがあつた。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
天皇はそれではじめてみこ御前ごぜんへお通しになりました。それから阿知直あちのあたえに対しても、ごほうびにくらつかさという役におつけになり、たいそうな田地でんぢをもおくだしになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
少壮時代に心の田地でんぢに卸された種子は、容易に根を断つことの出来ないものである。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「どのくらいって、山と田地でんぢが少しあるぎりで、金なんかまるでないんでしょう」
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ひそか田地でんぢわかち質入しちいれなしその金にてかりに家を作り、親もかへりてすみけり。
親の如くに尊敬うやまひかりにも其意にそむく事なく五節句其外何事によらず自分が門弟中より申受たる金子有時は兄半作へつかはして田地でんぢ田畑でんばた買求かひもとめさせ兄半作の身代を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ひそか田地でんぢわかち質入しちいれなしその金にてかりに家を作り、親もかへりてすみけり。
併し自分の研究しなくてはならないことになつてゐる学術を真に研究するには、その学術の新しい田地でんぢを開墾して行くには、まだ種々いろいろの要約のけてゐる国に帰るのは残惜のこりをしい。あへて「まだ」と云ふ。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
田地でんぢ3・2
理左衞門はすこしも聞入ず追々吟味致さんが先今日は入牢じゆらう申付るとて此日は調もなかりける扨も九郎兵衞は早く九助を殺して己がとがを遁れんと思ひ田地でんぢ質入しちいれなし漸々やう/\金を拵へて郡奉行松本理左衞門を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)