生死しょうじ)” の例文
何よりもまず気遣わしい、お雪はと思うそばに、今息を吸取られてたおれたと同じ形になって、生死しょうじは知らず、姿ばかりはありました。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それらのすばらしい舞台での日夜をわかたぬ狂気と淫蕩いんとう、乱舞と陶酔の歓楽境、生死しょうじの遊戯の数々を、作者は如何に語ればよいのでありましょう。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
しかも「生死しょうじを諦めた人」こそ真に「生死を見ざる人」です。生死を見ざる人こそ、実に「生死にとらわれざる人」です。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
然らずは一殺多生いっせつたしょうの理に任せ、御身おんみを斬つて両段となし、唐津藩当面の不祥を除かむ。されば今こそは生死しょうじ断末魔の境ぞ。地獄天上の分るゝ刹那せつなぞ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
自力門の修行は、智恵を窮めて生死しょうじを離れ、易行門いぎょうもんの修行は、痴愚ちぐにかえって極楽に生れるところにあるのでござる。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妻がこれ位苦んで生死しょうじの境に膏汗あぶらあせをかいて、全身の骨という骨が砕けるほどの思いでうめいているのに、良人おっとは何の役にも助成たすけにもならないではありませんか。
産屋物語 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
(『無量寿経むりょうじゅきょう』に曰く、「生死しょうじの流転、休止くしあることなし」と。また曰く、「生死窮まりむことなし」と)
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
とにかく全巻を通じて無常を説き遁世とんせいをすすめ生死しょうじの一大事を覚悟すべしと説いたものが甚だ多い。
徒然草の鑑賞 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
和尚後年、生死しょうじ代謝たいしゃの際に臨みて一偈いちげを賦するに当たり、偈中に「曹源そうげんの滴水てきすい一生用不尽いっしょうもちうれどもつきず
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
さても方様かたさまの憎い程な気強さ、ここなり丈夫おとこの志をぐるはとむれ同志どうしを率いて官軍に加わらんとし玉うをとどむるにはあらねど生死しょうじ争う修羅しゅらちまたふみりて、雲のあなたの吾妻里あづまじ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
いわんや生死しょうじ輪廻りんねを切る一大事が、生温い心で獲られるわけはない(同上)。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
根本義こんぽんぎは死んでも生きても同じ事にならなければ、どうしても安心は得られない。すべからく現代を超越すべしといった才人はとにかく、僕は是非共生死しょうじを超越しなければ駄目だと思う」
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「如何にしたらば生死しょうじを離れることが出来ようか」
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
どなたも、すでにご存じのあるように、生死しょうじの惑いをのがれ、仏道の安心立命あんじんりゅうめいに至る道に、二つの道があります。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(『維摩経ゆいまきょう』に曰く、「もし生死しょうじしょうを見れば、すなわち生死なし。ばくなくなく、ねんせずめっせず」と)
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
ゆえに空に徹したる人は、生きねばならぬ時には、石にかじりついても、必ず生をりっぱに生かそうと努力します。生死しょうじとらわれざる人は、所詮しょせん死をおそれざる人です。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
念入ねんいりだ、恐しい。」と言いながら、寝返ねがえりの足で船底を蹴ったばかりで、いまだに生死しょうじのほども覚束おぼつかないほど寝込んでいるつれの男をこの際、十万の味方とはげしく揺動かして
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たとひ百練千練の精妙なりとも、虚実生死しょうじの境を出でざるつるぎは悟道一片の竹杖にも劣る。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
(『三教平心論さんきょうへいしんろん』に曰く、「生死しょうじ去来、これ意の適するところ、神通変化じんずうへんげは測量すべからず」と)
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
申すまでもなく、曠野こうやにさ迷うその旅人こそは、私どもお互いのことです。一疋の狂象は、「無常の風」です。流れる時間です。井戸とは生死の深淵しんえんです。生死しょうじ岸頭がんとうです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
生死しょうじの達観のうえに出来上っている肉体なのである。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仏家は曰く、「煩悩即菩提、生死即涅槃。」(煩悩ぼんのうはすなわち菩提ぼだい生死しょうじはすなわち涅槃ねはん
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)