きん)” の例文
それに合わせて誰かゞきんのことをく。扇で拍子を取りながら唱歌をうたう。つゞいてそうのことや、和琴わごんや、琵琶びわが運び出された。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
又中根香亭の記する所を見るに、樗園は善くきんを鼓した。其伝統は僧心越、杉浦琴川、幸田親益しんえき宿谷空々しゆくだにくう/\新楽閑叟しんがくかんそう、杉本樗園である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
源氏に近い京へ来ながら物思いばかりがされて、女は明石あかしの家も恋しかったし、つれづれでもあって、源氏の形見のきんいとを鳴らしてみた。
源氏物語:18 松風 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「さしもの司馬懿も、まんまと自己の智に負けた。もし十五万の彼の兵が城に入ってきたら、一きんの力何かせん。天佑てんゆう、天佑」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すくなくとも形の上だけはきんひつと相和したが、けれども十九ではじめて知つた悦びに、この張り切つた音に、彼女の弦は妙にずつた音を出してぴつたり來ない。
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
もっとも、それは、きん坊とあんぽんたんだけで、あとの人は普通なみに、器楽の方を主にして教えはしたが、二人の子供は歌の方が三日、きんの方は一日で自分から弾けてしまった。
ある人は天地の耿気こうきに触るると云うだろう。ある人は無絃むげんきん霊台れいだいに聴くと云うだろう。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
五節というのは、天武天皇の御代、月白くえた嵐の夜、天皇が心すましてきんを弾かれていると、これに感じた天女が天降り、五度び袖をひるがえして舞ったという、これが五節の初めである。
そうして、宮の婦人たちは彼らの前で、まだ花咲かぬ忍冬すいかずらを頭に巻いた鈿女うずめとなって、酒楽さかほがいうたうたいながら踊り始めた。数人の若者からなる楽人は、おけ土器かわらけを叩きつつ二絃にげんきんに調子を打った。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「悲哀」のきんの絲のを、ゆしあんずるぞ無益むやくなる。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
きんのすみれ、箜篌くごのもくれん
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
悲哀のきんに指ふせて
小曲二十篇 (新字旧仮名) / 漢那浪笛(著)
そのほかではきんをおきになることが第一の芸で、次は横笛、琵琶びわ、十三げんという順によくおできになる芸があると院も仰せになりました。
源氏物語:17 絵合 (新字新仮名) / 紫式部(著)
渺茫びょうぼう千七百年、民国今日の健児たちに語を寄せていう者、あにひとり定軍山上の一きんのみならんやである。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「悲哀」のきんの糸のを、ゆしあんずるぞ無益むやくなる。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
落ちるともない涙にいつかまくらは流されるほどになっている。きんを少しばかりいてみたが、自身ながらもすごく聞こえるので、弾きさして
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
非理曲直ひりきょくちょくすこぶる公明で、私のいとまにはらんを愛しきんかなしょもよく読むといったような文彬だった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兵部卿の宮が琵琶びわ、内大臣は和琴わごん、十三げんが院のみかどの御前に差し上げられて、きんは例のように源氏の役になった。皆名手で、絶妙な合奏楽になった。
源氏物語:21 乙女 (新字新仮名) / 紫式部(著)
と気づいたので、館のあるじは、侍女にいいつけて、弾琴だんきんをとりよせた。主は七げんきんのたしなみを持ち、朗詠ろうえいが上手であった。微吟、風流、おのずからすさぶる男たちをも優しくなだめた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いつも篳篥ひちりきを吹く役にあたる随身がそれを吹き、またわざわざしょうの笛を持ち込んで来た風流好きもあった。僧都が自身できん(七げんの唐風の楽器)を運んで来て
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
(十二のきんをならべて、女どもにきそわせよ)
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
身体からだを楽になさいましてはおきになりましたきん琵琶びわを持ってよこさせになりまして、仏前でお暇乞いとまごいにお弾きになりましたあとで、楽器を御堂みどうへ寄進されました。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
琵琶びわは例によって兵部卿ひょうぶきょうの宮、院はきん、太政大臣は和琴わごんであった。久しくお聞きにならぬせいか和琴の調べを絶妙のものとしてお聞きになる院は、御自身も琴を熱心におきあそばされたのである。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
いたします。きんがいちばんお友だちらしゅうございます
源氏物語:06 末摘花 (新字新仮名) / 紫式部(著)