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煙筒
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えんとつ
ふりがな文庫
“
煙筒
(
えんとつ
)” の例文
肴屋
(
さかなや
)
、酒屋、雑貨店、その向うに寺の門やら
裏店
(
うらだな
)
の長屋やらが
連
(
つらな
)
って、
久堅町
(
ひさかたまち
)
の低い地には
数多
(
あまた
)
の工場の
煙筒
(
えんとつ
)
が黒い煙を
漲
(
みなぎ
)
らしていた。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
岸本は自分の乗って来た二本
煙筒
(
えんとつ
)
の汽船が波止場近くに
碇泊
(
ていはく
)
しているのをその高い位置から
下瞰
(
みおろ
)
して、実にはるばると旅して来たことを思った。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
煙筒
(
えんとつ
)
は断ちきれて空中に飛上った。客車と車掌乗用車とは粉砕されてごちゃまぜになり、機関車の残骸と共に、一二分の間坑口を一ぱいに塞いだ。
臨時急行列車の紛失
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
と見る、偉大なる
煙筒
(
えんとつ
)
のごとき煙の柱が、
群湧
(
むらがりわ
)
いた、入道雲の頂へ、海ある空へ
真黒
(
まっくろ
)
にすくと立つと、
太陽
(
ひ
)
を横に並木の正面、根を
赫
(
かっ
)
と赤く焼いた。
瓜の涙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
窓と
煙筒
(
えんとつ
)
とのある一階建の家が幾軒か、長く並んでいるのは、不思議な光景であった。兵隊はここに一年中住んでいるので、家族も連れて来ている。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
▼ もっと見る
だが、困ったことに家の構造が、角の土蔵なので、煙のはけばに弱らされていた。住居にしている二階の
上
(
あが
)
り
口
(
ぐち
)
へまっすぐに
煙筒
(
えんとつ
)
をつけて、窓から外へ出すようにしてあった。
旧聞日本橋:02 町の構成
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
十八サンチの一弾は豊国丸の
煙筒
(
えんとつ
)
を根本からもぎ取つた。十サンチの砲弾は舷側に
蜂
(
はち
)
の巣のやうに穴をあけた。もしその一発でもが、積んでゐる水雷か、砲弾にか当らうものなら!
怪艦ウルフ号
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
其の
中
(
うち
)
に
此
(
これ
)
はしまったと気が付いた。昨日乃公は何もする事がなかったから、此ストーブの
煙筒
(
えんとつ
)
に土を
填
(
つ
)
めて置いた。これでは燻ぶる筈だと思って消そうとしたが容易に消えない。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
今、
甲板
(
かんぱん
)
で、さわいでいる。なにごとかと聞いたところ、オランダの汽船が、
機雷
(
きらい
)
にやられて沈んでいるのが見えるそうである。水面から二本の
煙筒
(
えんとつ
)
を出してるのが見えるという話だ。
沈没男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それから一ぴきの大きなかうもりが、こはれおちてゐる
煙筒
(
えんとつ
)
の上へ来てとまりました。それは、二人の王女と、妖女の王さまとが、さういふ魚とかうもりとになつてしまつたのでした。
湖水の鐘
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
屋根の
椽木
(
たるき
)
、色紙のはられた屋根部屋の断片、砲弾を待ち受けて物の破片のうちに立てられてるガラスのついた窓の
扉
(
とびら
)
、引きぬかれた
煙筒
(
えんとつ
)
、
戸棚
(
とだな
)
、テーブル、腰掛け、上を下への乱雑な堆積
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
あなたあんな手が
何処
(
どこ
)
が美しいの? 指は棒のように太いし、色は石炭のように黒いし、あの方が体操でもしていらっしゃるところを見ていると、まるで
煙筒
(
えんとつ
)
の掃除男が
喧嘩
(
けんか
)
しているようだわよ。
大きな手
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
細い
煙筒
(
えんとつ
)
から
煙
(
けむり
)
が青く黒くあがっているのを見たことがある。格子戸が男湯と女湯とにわかれて、はいるとそこに番台があった。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
神戸から横浜の方に廻った馴染の船はまだそこに
碇泊
(
ていはく
)
中で、
埠頭
(
ふとう
)
に横たわる汽船の側面や黒い大きな
煙筒
(
えんとつ
)
は一航海の間の種々様々な出来事を語っていた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
これを、あたりの湯屋の煙、また、遠い
煙筒
(
えんとつ
)
の煙が、風の死したる大阪の空を、あらん限り縫うとも言った。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
煙筒
(
えんとつ
)
は一本もなく、かすんでさえもいない有様は、煙に汚れた米国の都会に比して、著しい対照であった。勿論風も無かったのである。風の吹く日は非常に埃っぽく、万事ぼやっとなる。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
古い煉瓦積みの
壁体
(
へきたい
)
には夕陽が燃え立つように当っていた。
遥
(
はる
)
かな屋根の上には、風受けの
翼
(
つばさ
)
をひろげた太い
煙筒
(
えんとつ
)
が、中世紀の騎士の化物のような恰好をして
天空
(
てんくう
)
を
支
(
ささ
)
えているのであった。
地獄街道
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
白いペンキ塗りの汚れた
通運丸
(
つううんまる
)
が、
煙筒
(
えんとつ
)
からは
煤煙
(
ばいえん
)
をみなぎらし、
推進器
(
すいしんき
)
からは水を切る白い波を立てて川をくだって行くのが手にとるように見えた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
実際に彼の方へ近く飛んで来る海の
鴎
(
かもめ
)
の群、実際に波の動揺に任せている沈没した船の帆柱
煙筒
(
えんとつ
)
であった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
この血に
餓
(
う
)
えて
呻
(
うめ
)
く虫の、次第に
勢
(
いきおい
)
を加えたにつけても、天気模様の
憂慮
(
きづかわ
)
しさに、居ながら見渡されるだけの空を
覗
(
のぞ
)
いたが、どこのか
煙筒
(
えんとつ
)
の煙の、一方に
雪崩
(
なだ
)
れたらしい
隈
(
くま
)
はあったが
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一番下の竈に火をつけると熱は順々にそれぞれの竈を通りぬけて、最後に上方の竈の粗末な
煙筒
(
えんとつ
)
から出て行く。この方法に依て熱の流れが最後の竈に到るまで、すべての熱が利用される。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
屋根、物干などの重なり合っている間には、春らしく濁った都会の空気や煙を通して、ゴチャゴチャ
煙筒
(
えんとつ
)
の立つ向うの町つづきに、駒形の方の空を望むことも出来た。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
かれは寺から町の
大通
(
おおどお
)
りに
真直
(
まっすぐ
)
に出て、うどんひもかわと障子に書いた汚ない飲食店の
角
(
かど
)
を裏通りにはいって、細い
煙筒
(
えんとつ
)
に白い薄い煙のあがる
碓氷社
(
うすいしゃ
)
分工場
(
ぶんこうじょう
)
の
養蚕所
(
ようさんじょ
)
や
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
砂礫
(
すなつぶて
)
を
捲
(
ま
)
いて、地を一陣の
迅
(
と
)
き風がびゅうと、吹添うと、すっと抜けて、軒を
斜
(
ななめ
)
に、大屋根の上へ、あれあれ、もの干を離れて、
白帷子
(
しろかたびら
)
の
裾
(
すそ
)
を空に、幽霊の姿は、
煙筒
(
えんとつ
)
の煙が懐手をしたように
怨霊借用
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
煙
常用漢字
中学
部首:⽕
13画
筒
常用漢字
中学
部首:⽵
12画
“煙”で始まる語句
煙草
煙管
煙
煙突
煙草盆
煙草入
煙硝
煙草屋
煙火
煙管筒