殘酷ざんこく)” の例文
新字:残酷
それで、天皇てんのう殉死じゆんし風俗ふうぞくはなは人情にんじようにそむいた殘酷ざんこくなことであるから、これはどうしてもやめなければならぬとおかんがへになりました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
人の死體や、殘酷ざんこくな場面は、嫌ひだといつても隨分澤山見て來た平次ですが、まだ、こんな變つたのは見たこともありません。
だから其所そこふにしのびない苦痛くつうがあつた。彼等かれら殘酷ざんこく運命うんめい氣紛きまぐれつみもない二人ふたり不意ふいつて、面白おもしろ半分はんぶんおとしあななかおとしたのを無念むねんおもつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
もしか殘酷ざんこくな惡い人達にいつも親切に云ふまゝになつてゐたら、惡い人達は自分のしたいことばかしするわ。
こんなことまをげると、きつとわたしはあなたがたより殘酷ざんこく人間にんげんえるでせう。しかしそれはあなたがたが、あのをんなかほないからです。ことにその一瞬間しゆんかんの、えるやうなひとみないからです。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その渾天儀を据ゑた塔の頂上、北向の欄干から、美しい妾のお照が、眞つ逆樣にブラ下つた圖は、殘酷ざんこくで無恥な惡戯としか思へなかつたのです。
彼女かのぢよは三度目どめ胎兒たいじうしなつたときをつとから其折そのをり模樣もやういて、如何いかにも自分じぶん殘酷ざんこくはゝであるかのごとかんじた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
昂奮して來ると、私は毒々どく/\しげに殘酷ざんこくになるので、遠慮せず、緩和くわんわせず、思つた通りを話してしまつた。
沓脱くつぬぎには赤井左門、沓脱の下には錢形の平次、ガラツ八と中間が責手で、この殘酷ざんこくな見物が幕を切つて落されたのです。
時々とき/″\とほくから不意ふいあらはれるうつたへも、くるしみとかおそれとかいふ殘酷ざんこくけるには、あまりかすかに、あまりうすく、あまりに肉體にくたい慾得よくとくはなぎるやうになつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
殘酷ざんこくに私をきずつけるのが彼女の性質だつたから。彼女の前で、私は幸福だつたことはない。
殘酷ざんこくで、念入りで、憎んでも憎み足りない、そのくせ手のつけやうのない破局に持込まれて居たのです。
平次もガラツ八もこの曲者のやり口の殘酷ざんこくさに、腹の底から義憤のやうなものがコミ上げました。
八五郎が引出した結論は、あまりにも殘酷ざんこくで、そして適切過ぎたのです。
こんな殘酷ざんこくなことをするのか、平次にはまるつきり見當も付きません。
平次の眼はこの殘酷ざんこくな下手人を憎む心に燃えます。