此男このをとこ)” の例文
うも」とくびげたが、「大抵大丈夫だらうと思つてゐたんだがな。そくなつた。もつと此男このをとこが大分運動をしてゐると云ふはなしいた事もあるが」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
足袋たび股引もゝひき支度したくながらに答へたるに人々ひと/\そのしをらしきを感じ合ひしがしをらしとはもと此世このよのものにあらずしをらしきがゆゑ此男このをとこ此世このよ車夫しやふとは落ちしなるべし。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
たく酒井伝吉さかゐでんきちといふ車ををとこがある、此男このをとこは力が九人力にんりきある、なぜ九人力にんりきあるかといふと、大根河岸だいこんがし親類しんるゐ三周さんしうへ火事の手伝てつだひにやつたところが、一人でたゝみを一度に九枚持出もちだしたから
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
じんすけもとより吾助ごすけ贔負びいきにて、此男このをとこのこと一も十も成就じやうじゆさせたく、よろこかほたさの一しんに、これまでのふみ幾通いくつう人目ひとめれぬやうとヾこほりとヾけ、令孃ひめこヽろらず返事へんじをとめしが
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此男このをとこちゝしんあと市街外まちはづれにちひさな莊園しやうゑん承嗣うけついだので、この莊園しやうゑんこそ怠惰屋なまけやみせともいひつべく、そのしろかべ年古としふりくづち、つたかづらおもふがまゝに這纏はひまとふたもん年中ねんぢゆうあけぱなしでとぢたことなく
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
平岡はふに従つて、段々くちが多くなつてた。此男このをとこはいくら酔つても、なか/\平生を離れない事がある。かと思ふと、大変に元気づいて、調子に一種の悦楽えつらくを帯びてる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)