板縁いたえん)” の例文
伊那丸いなまるはしずかに、階段かいだんからおりて、梅雪入道ばいせつにゅうどうの手をとり、宮の板縁いたえんへ迎えあげて、礼儀ただしてこういった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見屆て申すなり彌々いよ/\いはぬに於てはかうすると首筋くびすぢつかんで引摺出し力にまかせて板縁いたえん摺付々々すりつけ/\サア何だ坊主め白状しろ何處どこかくせしぞ但しは落したかと茂助ももろともに聲を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
(さあ、それではご案内申しましょう、どれ、ちょうど私も米をぎに参ります。)とくだんおけ小脇こわきかかえて、縁側えんがわから、藁草履わらぞうり穿いて出たが、かがんで板縁いたえんの下をのぞいて
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その間店の上さんが吊銭を手に載せて、板縁いたえんひざを衝いて待っていたのである。純一はそれに気が附いて、小さい銀貨に大きい銅貨の交ったのを慌てて受け取って、鱷皮わにがわ蝦蟇口がまぐちにしまって店を出た。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
パッと足もとをはらうと見るまに、五体をうかされた梅雪は、板縁いたえんの上からをえがいて下へ落とされた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とめる處は是より少々せう/\ゆけば馬喰町と云處に旅籠屋はたごや多くあれば夫へ到りてとまり給へと挨拶あいさつなすに彼の僧は如何にもくるなる聲にて我は腹痛はらいた歩行事あゆむことかなはず願はくは板縁いたえんにても一夜を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ゆかした……板縁いたえんうらところで、がさ/\がさ/\とおと發出しだした……彼方あつちへ、此方こつちへ、ねずみが、ものでも引摺ひきずるやうで、ゆかひゞく、とおとが、へんに、うへつてるわたしあしうらくすぐるとつたかたち
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
逆手さかてにつかんでいる脇差のつばが、がたがたとわなないて、板縁いたえんに鳴った。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
立退しと聞えたりすれば惣内の妻の里は汝が娘にあらずして此坊主ばうずが娘なり夫に付て我感ずる處ありかの大井河原辨天堂べんてんだうの前にて相果あひはてし二人の死骸しがいは惣内里には有べからず定めし是には仔細しさいのあらんサア返答せよ何とするやと板縁いたえん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
やがて、嫡子の義朝は、客と父の影から遠く、板縁いたえんに、かしこまって