数寄屋橋すきやばし)” の例文
旧字:數寄屋橋
で、帰りに、数寄屋橋すきやばし外から、土橋どばし大塚間を運転している電車に、乗ることは乗って、神保町へまで来たが、降りる気になれない。
妖影 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
人々は、口々にわめきながら、あるいは数寄屋橋すきやばしのほうへ、あるいは日比谷ひびやのほうへ、つなみのように、なだれをうってかけだしました。
宇宙怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
が、とにかく、近頃の大物で、番所へ止め置くわけにも行かず、平次、ガラッ八、勘助の三人で、数寄屋橋すきやばしまで送ろうと言う時
「黙れ、だまれッ! 駈込みの訴えならば、夜が明けてから御奉行所へ参れッ、南のお役所を存じておろう、数寄屋橋すきやばしの袂だ」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
邦楽座ほうがくざわきの橋の上から数寄屋橋すきやばしのほうを、晴れた日暮れ少し前の光線で見た景色もかなりに美しいものの一つである。
Liber Studiorum (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「なるほど、やることが理詰めでいらっしゃらあ。じゃ、辰ッ、おめえは数寄屋橋すきやばしのほうを洗ってきなよ。おいら呉服橋の北町番所へ行ってくるからな」
二十七日の晩に、電車で数寄屋橋すきやばしまで行って、有楽座に這入はいると、パルケットの四列目あたりに案内せられた。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
数寄屋橋すきやばしから幸橋さいわいばしを経てとらもんに至る間の外濠そとぼりには、まだ昔の石垣がそのままに保存されていた時分、今日の日比谷ひびや公園は見通しきれぬほど広々した閑地で
数寄屋橋すきやばし門内の夜の冬、雨蕭々せう/\として立ち並らぶ電燈の光さへ、ナカ/\に寂寞せきばくを添ふるに過ぎず、電車は燈華燦爛さんらんとして、時をさだめて出で行けど行人かうじんまれなれば
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
数寄屋橋すきやばしで乗りえ様と思って、黒いみちの中に、待ち合わしていると、小供をおぶった神さんが、退儀そうに向うから近寄って来た。電車は向う側を二三度通った。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「山田の案山子かかし——だと皮肉った落首なぞもられているが、数寄屋橋すきやばし御門内は、うららかなものさ」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで、ある日、彼は和助に案内させてうわさにのみ聞く数寄屋橋すきやばしわきの小学校へと足を向けた。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
数寄屋橋すきやばしで降りてどう行くのん、と、姉がかえって幸子に尋ねる始末であった。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
翌朝銀子は朝の十時ごろに家を出て、築地つきじまわりの電車で行ってみた。ちょうど数寄屋橋すきやばしを渡って、最近出来たばかりの省線のガードの手前を左へ入ったところに、その骨相家の看板が出ていた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
数寄屋橋すきやばし外の『ナイル・カフェ』では、八時に外出した主人の海保が十一時に戻ってきて、風邪を引いたとみえ寒気がすると言い、ウイスキーを二、三杯ひっかけて棟続きの寝室へ退いてしまった。
宝石の序曲 (新字新仮名) / 松本泰(著)
数寄屋橋すきやばしまでやってくれ。うむ、行く先は北町奉行所」
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こんなことを考えながら歩いているうちに、いつのまにか数寄屋橋すきやばしに出た。明るい銀座ぎんざが暗い空想を消散させた。
蒸発皿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
平次は挨拶もそこそこ、真一文字にお勝手へ抜けて、数寄屋橋すきやばしの南町奉行所まで、韋駄天いだてん走りに駆け付けました。
数寄屋橋すきやばしのたもとへ来かかると、朝日新聞社を始め、おちこちの高い屋根の上から広告の軽気球があがっているので、立留たちどまる気もなく立留って空を見上げた時
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
もし町内に小町娘といわれるべっぴんがいたら、おやじ同道ひとり残らずあしたの朝の四ツまでに数寄屋橋すきやばしのお番所へ出頭しろと、まちがわずに言いつけておいでよ
怪物は銀座四丁目の四つかどを、数寄屋橋すきやばしの方へ、まがりました。しばらく走りつづけるうちに、数寄屋橋の交番から、ふたりのおまわりさんが、とびだしてきました。
鉄塔の怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
まるで青菜に塩のていで、考え込みながらふらふらと数寄屋橋すきやばし御門から西紺屋にしこんや河岸かしぷちへ出た。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
神田橋へ出て、まだ悟らずに鎌倉河岸かまくらがし数寄屋橋すきやばしの方へ向いて急いで行ったことがある。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
半蔵の預けた子供は二人ともあの京橋鎗屋町の家から数寄屋橋すきやばしわきの小学校へ通わせて見たが、兄の森夫の方は学問もそう好きでないらしいところから、いっそ商業で身を立てろと勧めて見たところ
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
用意した三梃の駕籠、三人はまず数寄屋橋すきやばし内南町奉行所に飛ぶと、そこに待っていた与力よりき笹野新三郎は、手を廻して老中の奥印をした赦免状を用意していました。
帰りみちが同じ四谷よつやの方角なので、君江と春代とは大抵毎晩連立つれだって数寄屋橋すきやばしあたりから円タクに乗る。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
銀座四丁目から数寄屋橋すきやばしまで歩いて、それから廻れ右をして帰って来るとやはりもとの同じ銀座四丁目に帰って来る。廻れ右の代りに廻れ左をして帰っても同じである。
KからQまで (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
訴えてきた以上は、むろんご番所へその実物を提供してあるにちがいないと思われましたので、右門は気がつくと同時に、一刻を争いながら数寄屋橋すきやばしへ駆けつけました。
公事くじやその他いっさいの口ききで、数寄屋橋すきやばしぎわの奉行所へは日参していたし、忠相も、しっかりした老人をみて、以前から半官式に深川一帯のことをまかせて、忠相と木場の甚とは、役目を離れて
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
去年の夏数寄屋橋すきやばしの電車停留場安全地帯に一人の西洋婦人が派手な大柄の更紗さらさの服をすそ短かに着て日傘ひがさをさしているのを見た。近づいて見ると素足に草履ぞうりをはいている。
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
突然数寄屋橋すきやばしから急使があって、旅のしたくをととのえ即刻ご番所まで出頭しろという寝耳に水のお達しがあったものでしたから、めったには物に動じないむっつり右門も
平次はそこからすぐ数寄屋橋すきやばしの南町奉行所へ廻り、子さらいの記録を一応見せて貰いました。
次は数寄屋橋すきやばし、お乗換のりかえかたは御在いませんか。
深川の唄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
いたわりながら数寄屋橋すきやばしへ引き揚げていくと、舌をかみ切ってひくひくと苦悶くもんしている玉ころがし屋のそばで、ぼうぜんと失神したようにまごまごとしていたあば敬の前に
数寄屋橋すきやばし、呉服橋、南北両ご番所の同役同僚たちの顔が、もう八分どおり座に見えました。
丁日ちょうびは呉服橋北町お番所の面々、半日はんび数寄屋橋すきやばし南町お番所詰めの面々が、秋口のひと月間、一日おきにこのお馬場へやって来て、朝のうちの半刻はんときずつ馬術を練るならわしなのです。
夜ふけをいといもなく数寄屋橋すきやばしへころころしながら行ったようでしたが、案ずるよりもたやすく用が足りたとみえて、小半ときとたたないうちに帰ってまいりましたものでしたから
まをおかずに、そこへ替え肩づきのたくましいところを二丁ひっぱって帰りましたので、ただちに右門は息づえをあげさせると、まず第一着手に数寄屋橋すきやばしお番所へ駕籠先を向けさせました。
すぐと数寄屋橋すきやばしのお奉行所へ駆け込み訴訟をしたんですが、なんでございますか、お役人はあちらにもご当番のかたが五、六人ばかりいらっしゃいましたのに、きょうは骨休みじゃとか申されて
奇怪にも目ざした道はまがうかたなく数寄屋橋すきやばしのあのお番所なのです。