摘草つみくさ)” の例文
そして摘草つみくさほど子供こどもにとられたとふのを、なんだかだんうらのつまり/\で、平家へいけ公達きんだち組伏くみふせられ刺殺さしころされるのをくやうで可哀あはれであつた。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
高低のある広い地は一面に雑草を以ておおわれていて、春は摘草つみくさ児女じじょの自由に遊ぶに適し、秋は雅人がじんほしいままに散歩するにまかす。
午食前ひるめしまえに、夫妻鶴子ピンを連れて田圃に摘草つみくさに出た。田のくろの猫柳が絹毛きぬげかつぎを脱いできいろい花になった。路傍みちばた草木瓜くさぼけつぼみあけにふくれた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
春風あたたかに菜の花にちょう飛ぶ頃、多くのわらはべ男女うちまじりて、南の野へ摘草つみくさに行くはこよなくうれしき遊びなり。
わが幼時の美感 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
学校の時計と自分のうちのとはその時二十分近く違っていたからである。ところがその摘草つみくさに行った帰りに、馬にられて土堤どてから下へ転がり落ちた事がある。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
丘というほどでもない堆土に子供らは摘草つみくさをしています。右手の方に前橋、伊勢崎の煤煙も望めます。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その頃この辺は全くの田圃続きで、春先になりますと都の人達が先刻御案内申上げた嫩草山わかくさやま摘草つみくさや興福寺東大寺への参詣がてら三々五々郊外散歩に来たものですわ。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
彼女はくせのように、その風呂敷を背中に隠して、ニヤニヤ笑いながら「摘草つみくさしたのよ」と云った。
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
「御夫人以下、みな手籠てかござるを持って、草を摘んでおるらしいです。摘草つみくさですな」
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
思出おもひだしてると奇談きだんがあつた。はゝさい親類しんるゐ子供こどもや、女中ぢよちうや、とほくもいので摘草つみくさかた/\見物けんぶつことつた。其時そのとき生憎あいにくなにないので、採集袋さいしふぶくろ摘草つみくされてかへつたこともあつた。
伊「みんな摘草つみくさに出かけたよ」
食事がすめばサア鬼ごとといふので子供などはほおぺたの飯粒も取りあへず一度に立つて行く。女子供は普通に鬼事おにごと摘草つみくさかをやる。それで夕刻まで遊んで帰るのである。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
それを子供こどもたちが目笊めざるせるのが、「摘草つみくさをしたくらゐざる澤山たくさん。」とふのである。三光社さんくわうしや境内けいだいは、へん一寸ちよつと子供こども公園こうゑんつてる。わたしうちからさしわたし二町にちやうばかりはある。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)