振分ふりわけ)” の例文
脚絆きゃはんを着け、素足に麻裏穿き、柳行李やなぎごうり袱裹ふくさづつみ振分ふりわけにして、左の肩に懸け、右の手にさんど笠をげ、早足に出づ。
まんちやんのはう振分ふりわけかたに、わらぢ穿ばきで、あめのやうななか上野うへのをさしてちてくと、揉返もみかへ群集ぐんしふ
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「……なんにもねえや、徳利と茶碗、火鉢が一ツ、あとは、戸棚に女? ……」と感心して、それから悠々と壁に懸けてあった振分ふりわけ真田紐さなだひもを解いた。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
成田の祇園会ぎおんえを八日で切上げ九日を大手住おおてずみ宿しゅくの親類方で遊びほうけた小物師の与惣次が、商売道具を振分ふりわけにして掃部かもんの宿へかかったのは昨十日そぼそぼ暮れ
振分ふりわけかみみじか春草はるくさかみくらむいもをしぞおもふ 〔巻十一・二五四〇〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
二枚折にまいおりよしの屏風の蔭に、蛇形じゃがた単物ひとえものに紺献上の帯を神田に結び、結城平ゆうきひらの半合羽を着、わきの方に振分ふりわけの小包を置き、年頃三十ばかりの男で、色はくっきりと白く眼のぱっちりとした、鼻筋の通った
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ふたりの振分ふりわけまで自分のかたに持ってやって、もくもくとあるき、もくもくとあたりの山をながめ、時には立ちどまって、地理山川さんせんをふところがみにうつしている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
喜多八きたはち、さあ、あゆばつしと、いまこそ着流きながし駒下駄こまげたなれ、以前いぜんは、つかさやをかけたお太刀たち一本いつぽん一寸ちよつとめ、振分ふりわけ荷物にもつ割合羽わりがつぱ函嶺はこね夜路よみちをした、内神田うちかんだ叔父的をぢき
城の石垣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「おいコラア! その振分ふりわけはあらためんでもよい。さっさと失せろっ」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ふたりは、一種の好奇心をもってうしろに置いた振分ふりわけをほどき、所司代へ公務をつたえたついでに、京町奉行所へ寄って打合せをするはずの一たばの書類を出した。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひょいと振分ふりわけを渡されたので、馬春堂は何気なく、肩にそれを預かりますと、伊兵衛はフワリと自分の合羽かっぱまで脱いで、かれのうしろから着せかけてやった上に
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
針屋の振分ふりわけ、人形箱など、あたふたと身につけると、彼等は風のごとく岡の空屋敷から消えました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬の背には、鎧櫃よろいびつ行李こうりとを振分ふりわけに附けている。そこからにこにこと赭顔あからがおに笑みをたたえて来る白髪の老武士は、陣笠をかぶり、手甲てっこう脚絆きゃはんのきびしい旅扮装たびいでたちに体をつつんでいた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
石神堂のぬれ縁に腰をかけて、伊兵衛が振分ふりわけの中から解き出したのはいうまでもなく、夜光の短刀の来歴をつぶさにした「ばてれん口書くちがき」の一じょうと、洞白どうはく仮面めんとを秘めたあの箱です。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、無性むしょうに、あぶない世間が恋しくなって、有馬の槌屋つちやを立ったのが七十日ぶりの爽やかな秋の朝で、湯治中すっかり馴染になった湯女ゆなのお仙が、彼の振分ふりわけを持って、坐頭谷まで送ってくれた。
治郎吉格子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
喋々ちょうちょうとさえずるばかりでなく、信濃そだちの強力で、笹をひッたくる、振分ふりわけを預かってしまう、合羽のそでにほころびをこしらえる。文句をいえば、晩にわたしが縫ってあげます——と上手に見る。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
笠や振分ふりわけをそこに置いて、庭の隅にある石井戸のほうへ歩いて行った。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
眼八はていねいにこういってから、自分の振分ふりわけを解いて
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)