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押被
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おっかぶ
ふりがな文庫
“
押被
(
おっかぶ
)” の例文
「人聞きのわるいことを言って下さるなよ」お島は
押被
(
おっかぶ
)
せるように笑った。「あの人達に笑われますね。それが嘘なら聴いてみるがいい」
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「はあ。」と云う、和尚が声の幅を
押被
(
おっかぶ
)
せるばかり。鼻も大きければ、口も大きい、額の
黒子
(
ほくろ
)
も大入道、眉をもじゃもじゃと動かして聞返す。
菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そう
押被
(
おっかぶ
)
せられると、彼は口を噤むより外仕方がなかった。黙ってると、保子は暫くしてこう云った。
反抗
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
真蒼
(
まっさお
)
な
水底
(
みなそこ
)
へ、黒く
透
(
す
)
いて、底は知れず、
目前
(
めさき
)
へ
押被
(
おっかぶ
)
さった
大巌
(
おおいわ
)
の
肚
(
はら
)
へ、ぴたりと船が
吸寄
(
すいよ
)
せられた。岸は
可恐
(
おそろし
)
く水は深い。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
村田は熱っぽい眼付で見上げながら、一寸唇を震わしたが、それを周平は咄嗟に、上から
押被
(
おっかぶ
)
せた。
反抗
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
▼ もっと見る
柄杓とともに、助手を投出すと
斉
(
ひと
)
しく、俊明先生の
兀頭
(
はげあたま
)
は皿のまわるがごとく
向
(
むき
)
かわって、
漂泊
(
さすらい
)
の男女の上に
押被
(
おっかぶ
)
さった。
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と答えて、保子がじろりと見上げたのを、周平は慌てて
押被
(
おっかぶ
)
せるように云った。
反抗
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
二人は顔を背け合って、それから総曲輪へ出て、四十物町へ行こうとする、杉垣が
挟
(
さしはさ
)
んで、樹が
押被
(
おっかぶ
)
さった
径
(
こみち
)
を四五間。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それを更に頭から
押被
(
おっかぶ
)
せられた。
幻の彼方
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
森は
押被
(
おっかぶ
)
さっておりますし、
行燈
(
あんどう
)
はもとよりその立廻りで
打倒
(
ぶったお
)
れた。何か私どもは深い狭い谷底に
居窘
(
いすく
)
まって、
千仞
(
せんじん
)
の崖の上に月が落ちたのを
視
(
なが
)
めるようです。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
爾時
(
そのとき
)
、これから参ろうとする、
前途
(
ゆくて
)
の石段の真下の処へ、
殆
(
ほとん
)
ど路の幅一杯に、両側から
押被
(
おっかぶ
)
さった
雑樹
(
ぞうき
)
の中から、
真向
(
まむき
)
にぬっと、
大
(
おおき
)
な馬の顔がむくむくと
湧
(
わ
)
いて出た。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
地球の
薄皮
(
うすかわ
)
が破れて空から火が降るのでもなければ、大海が
押被
(
おっかぶ
)
さるのでもない、
飛騨国
(
ひだのくに
)
の
樹林
(
きばやし
)
が蛭になるのが最初で、しまいには
皆
(
みんな
)
血と泥の中に筋の黒い虫が泳ぐ
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お雪は
吻
(
ほっ
)
と息を
吐
(
つ
)
いて、肌を納めようとした手を動かすに
遑
(
いとま
)
なく、きゃッといって平伏した。声に応じて少年はかッぱと
刎
(
は
)
ね起きて
押被
(
おっかぶ
)
さり、身をもってお雪を
庇
(
かば
)
う。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
雲助の御威光、こうまでに衰えたか、とあんまり
強腹
(
ごうはら
)
だから、ちと
凄味
(
すごみ
)
に、厭だと
吐
(
ぬ
)
かしや、と
押被
(
おっかぶ
)
せて、それから、もし、あの胸にかけていやす、その新しい
苞
(
つと
)
の中を
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
気がつくと、四、五人、山のように
背後
(
うしろ
)
から
押被
(
おっかぶ
)
さって、
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか
他
(
た
)
に見物が出来たて。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
串戯
(
じょうだん
)
のように云って、ちょっと
口切
(
くぎ
)
ったが、道学者の呆れて口が利けないのに、
押被
(
おっかぶ
)
せて
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
門まで
僅
(
わず
)
か三四
間
(
けん
)
、
左手
(
ゆんで
)
は
祠
(
ほこら
)
の前を一坪ばかり花壇にして、
松葉牡丹
(
まつばぼたん
)
、
鬼百合
(
おにゆり
)
、
夏菊
(
なつぎく
)
など
雑植
(
まぜうえ
)
の繁った中に、
向日葵
(
ひまわり
)
の花は高く
蓮
(
はす
)
の葉の
如
(
ごと
)
く
押被
(
おっかぶ
)
さって、
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか星は隠れた。
星あかり
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
何かに
取掴
(
とッつか
)
まったらしく、堅くなってそこらを
捻向
(
ねじむ
)
く……と、峠とも山とも知れず、ただ樹の上に樹が
累
(
かさ
)
なり、中空を
蔽
(
おお
)
うて四方から
押被
(
おっかぶ
)
さって
聳
(
そび
)
え立つ——その向って
行
(
ゆ
)
くべき
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
退引
(
のっぴ
)
かせず詰寄るに従って、お夏はますます
庇立
(
かばいだて
)
、蔵人に
押被
(
おっかぶ
)
さるばかりにしつつ
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「ええ、」と言うのに
押被
(
おっかぶ
)
せて、「馬鹿々々しく安いではないか。」と義憤を起すと、せめて言いねの半分には買ってもらいたかったのだけれど、「旦那さんが見てであったしな。……」と何か
小春の狐
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
押
常用漢字
中学
部首:⼿
8画
被
常用漢字
中学
部首:⾐
10画
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