披見ひけん)” の例文
「以上、申しあげた儀は、それがしの一存のみでなく、呂布の意中でもあること。仔細はこの書面に——」と、披見ひけんを促した。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さっそく右門も披見ひけんすると、いかさまりっぱなお添書といったことばのとおり、それなる一書は次のごとく書かれた松平伊豆守のお直筆でした。
先日は失礼致そうろう。あれより予定の通り阿波あわの鳴門徳島を経て去月二十五日帰洛きらく、二十九日御差立の貴札きさつ昨夜披見ひけん致候。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
吾家にしゃくとどめ給ひてその巻物を披見ひけんせられ、仏前に引摂結縁いんじょうけちえんし給ひてねんごろ読経供養どきょうくようを賜はりしのち、裏庭に在りし大栴檀樹だいせんだんじゅつて其の赤肉せきにくを選み
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
請取うけとり左仲をひかへさせ置て内記殿の前に出で嘉川主税之助用人立花左仲の口上を申しのべ屆書差し出しけるに内記殿は是れを披見ひけんせられし所其書面に曰く
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
室の中はただ薄暗いに照らされていた。その弱い光は、いかに大字だいじな書物をも披見ひけんせしめぬ程度のものであった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
堀は訴状を披見ひけんした。胸ををどらせながら最初から読んで行くと、はたしてきのふ跡部あとべに聞いた、あの事である。陰謀いんぼう首領しゆりやう、その与党よたうなどの事は、前に聞いた所と格別の相違は無い。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
堀尾君はそれを披見ひけんして、真赤になった。道子さんへ宛てた手紙の書き損じだった。
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
お手紙披見ひけんいたしそうろう
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
へやなかはたゞ薄暗うすぐららされてゐた。そのよわひかりは、如何いか大字だいじ書物しよもつをも披見ひけんせしめぬ程度ていどのものであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
披見ひけん仕つり候に主人とは申ながら餘り御なさけなき致され方と存じ候あひだせめては御慈悲おじひを以て死骸だけも御くだされ候樣仕つりたく之に依て此段歎願奉り候以上
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
玄徳はそれを披見ひけんして、ひとまず使者を客館にもてなしておき、その間に、孔明が帰るのを待っていた。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と正晴君は慌て気味で披見ひけんしたが
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
案事あんじ居たるに不※ふと上州大間々おほまゝよりの飛脚到來せしかば何事やらん急ぎ書状しよじやう披見ひけんするに養父秀盛の直筆ぢきひつにて我等此度の病氣殊の外大切と有ける故大いに驚きまづ返事へんじ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「まだ、老公のお手もとにも出さぬうちに、つぶさに披見ひけんするも如何いかが。また、その必要もない。——ただこれが連判状なることゆえ、確かめて参ればよいのではあるまいか」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これだ。——一味の連判はこれにちがいない。ご一同、念のため披見ひけんしてごらんなさい」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、孫権からの一書を呈すると、玄徳はそれを披見ひけんして、たちまち色をした。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「細川殿の手翰しゅかん、ならびに将軍家の御書、とく披見ひけんいたした。不肖信長を、たのみにおぼしめさるるからには、この信長にあたうかぎりなお力にはなり申そう。——使者にも遠路大儀であった」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)