打寄うちよ)” の例文
土用波どようなみという高い波が風もないのに海岸に打寄うちよせるころになると、海水浴にているみやこの人たちも段々別荘をしめて帰ってゆくようになります。
溺れかけた兄妹 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
ひさりのせふが帰郷をきゝて、親戚ども打寄うちよりしが、母上よりはかへつせふの顔色の常ならぬに驚きて、何様なにさま尋常じんじやうにてはあらぬらし、医師を迎へよと口々にすゝめ呉れぬ。
母となる (新字旧仮名) / 福田英子(著)
そのしたうたがひもなき大洞窟おほほらあなで、逆浪ぎやくらう怒濤どたう隙間すきまもなく四邊しへん打寄うちよするにかゝはらず、洞窟ほらあななかきわめて靜謐せいひつ樣子やうすで、吾等われらあゆたびに、その跫音あしおとはボーン、ボーン、と物凄ものすごひゞわたつた。
れから彼方あちらの貴女紳士が打寄うちよりダンシングとかいって踊りをして見せるとうのは毎度の事で、さていって見た処が少しもわからず、妙な風をして男女なんにょが座敷中を飛廻とびまわるその様子は
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
飛騨の山人やまびと打寄うちよって、この国特有のふごを作ることを案じ出した。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
荒浪あらなみ鞺々どう/\打寄うちよするみさき一端いつたんには、たか旗竿はたざほてられて、一夜作いちやづくりの世界せかい※國ばんこくはたは、その竿頭かんとうから三方さんぽうかれたつなむすばれて、翩々へんぺんかぜなびく、その頂上てつぺんにはほまれある日章旗につしようき
そうするとしばらくをおいてまたあとの波が小山のように打寄うちよせて来ます。そして崩れた波はひどい勢いで砂の上にあがって、そこらじゅうを白い泡で敷きつめたようにしてしまうのです。
溺れかけた兄妹 (新字新仮名) / 有島武郎(著)