“扇(あふ)” の例文
面白く発(はや)りし一座も忽(たちま)ち白(しら)けて、頻(しきり)に燻(くゆ)らす巻莨(まきたばこ)の煙の、急駛(きゆうし)せる車の逆風(むかひかぜ)に扇(あふ)らるるが、飛雲の如く窓を逸(のが)れて六郷川(ろくごうがわ)を掠(かす)むあるのみ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
後羽を動かして、哀れむ者はその魂慰(なぐさめ)の女主となるがゆゑに福なることを告げつつ我等を扇(あふ)げり 四九—五一
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
『でも、可愛(かあい)い犬(いぬ)ころだッたわね!』息(やす)まうとして毛莨(キンポーゲ)に凭(よ)り掛(かゝ)つた時(とき)に、其葉(そのは)の一枚(まい)を取(と)つて扇(あふ)ぎながら愛(あい)ちやんが云(い)ひました、『私(わたし)が若(も)しそんな事(こと)をする年頃(としごろ)ならば、 ...
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
いえもう何(なん)でございます、実(じつ)は此先(このさき)一町(ちやう)行(ゆ)け、然(さ)うすれば上段(じやうだん)の室(へや)に寝(ね)かして一晩(ばん)扇(あふ)いで居(ゐ)て其(それ)で功徳(くどく)のためにする家(うち)があると承(うけたまは)りましても、全(まツた)くの処(ところ)一足(あし)も歩行(ある)けますのではございません
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
三八夏は蚊帳(かや)の代りにせし身を腰元(こしもと)共に床(とこ)を扇(あふ)がせ、女房は又姑(しうとめ)にあたへし乳房(ちぶさ)を虎屋(とらや)が羊羹(やうかん)にしかへ、氷から鯉(こひ)も古めかしと、水晶の水舟(みづぶね)に朝鮮金魚を泳がせて楽しみ、是(これ)至孝のいたす所なり。
案頭の書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
団扇(うちは)とり児等(こら)を扇(あふ)げば
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
席より席と花の中にくだる時、かれらは脇を扇(あふ)ぎて得たりし平和と熱とを傳へたり 一六—一八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)