感得かんとく)” の例文
これをつたない筆で描くよりは、世の親たる人たちの想像にまかせたほうが、はるかにその真実を感得かんとくすることができよう。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
実際にその咲いている花に対せば淡粧たんしょう美人のごとく、実にその艶美えんび感得かんとくせねばかない的のものである。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
如何に汚い下らないものでも、自分というものがその鏡に写って何だか親しくしみじみと感得かんとくせしめる。
教育と文芸 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
讀者どくしや小地震しようぢしん場合ばあひおいて、初期微動しよきびどう主要動しゆようどう明確めいかく區別くべつして感得かんとくせられたことがあるであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
ナントおつ出来でかしたではござらぬか、此詩このし懐中くわいちうしたれば、もんたゝいておどろかしまをさんかとは思ひしが、夢中むちう感得かんとくなれば、何時いつ何処どこにても、またやらかすとわけにはかず
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
ころからいつとなく感得かんとくしたものとえて、仔細しさいあつて、白痴ばかまかせてやまこもつてからは神変不思議しんぺんふしぎとしるにしたがふて神通自在じんつうじざいぢや、はじめはからだつけたのが、あしばかりとなり
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「天授の槍法を感得かんとくしたのだ。これでわしも初めて安心した。さらば、永く別れねばならぬ。めいを愛し、国に報ぜよ」
剣の四君子:04 高橋泥舟 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
フムと感心のコナシありて、此子このこなか/\話せるワエと、たちま詩箋しせん龍蛇りうだはしり、郵便箱いうびんばこ金玉きんぎよくひゞきあることになるとも、われまた其夜そのよ思寝おもひね和韻わゐんの一をすら/\と感得かんとくして
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
此地震このぢしん初期微動繼續時間しよきびどうけいぞくじかん七八秒程しちはちびようほどあつたようにおもはれる。各先生かくせんせいとも地震ぢしん感得かんとくせられるやいなや、本能的ほんのうてきそとされたが、はつといてみると老母ろうぼ屋内おくないのこされてあつた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
が、それにしても、此方このほうの申したことは、多年の体験と感得かんとくからつかみ得た単純な道理にすぎない。まだ、その理法を明らかにし、それを基本として一流の兵法を構成するまでには至っていない。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)