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愛誦
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あいしょう
ふりがな文庫
“
愛誦
(
あいしょう
)” の例文
私は彼女と別れて放浪中、偶然、古本屋で買った、「無門関」を
愛誦
(
あいしょう
)
していた。その中でも、「百丈
野狐
(
やこ
)
」という公案が好きだった。
野狐
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
東京
下谷
(
したや
)
の
池
(
いけ
)
の
端
(
はた
)
の下宿で、岸本が友達と一緒にこの詩を
愛誦
(
あいしょう
)
したのは二十年の昔だ。市川、菅、福富、足立、友達は皆若かった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
柳湾は江戸詩人の中わたくしの最も
愛誦
(
あいしょう
)
するものである。
鄙稿
(
ひこう
)
『
葷斎
(
くんさい
)
漫筆』にその伝と
並
(
あわ
)
せて記述する所があるから
茲
(
ここ
)
には除いて言わない。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
万葉集にある
浦島
(
うらしま
)
の長歌を
愛誦
(
あいしょう
)
し、日夜
低吟
(
ていぎん
)
しながら
逍遥
(
しょうよう
)
していたという小泉八雲は、まさしく
彼
(
かれ
)
自身が浦島の子であった。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
鶴見は鴎外の
許多
(
あまた
)
の翻訳中でその物語をこの上なく
愛誦
(
あいしょう
)
している。聖ジュリアン物語は悪魔の誘惑を書き綴ったものである。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
▼ もっと見る
私は青年時代からよく先人の紀行が好きでそれを
愛誦
(
あいしょう
)
したおぼえがあるので、自分も新・平家紀行では、さぐりえた史実の報告やあつかいなどよりも
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
藤村の仙台時代の詩は、私も学生時代に、
柄
(
がら
)
でもなく
愛誦
(
あいしょう
)
したものだが、その詩風には、やはりキリスト教の影響がいくらかあったように記憶している。
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
今でも多くの若い人たちに
愛誦
(
あいしょう
)
せられている「椰子の実」の歌というのは、多分は同じ年のうちの製作であり、あれを
貰
(
もら
)
いましたよと、自分でも言われたことがある。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
前日来生は客観詩をのみ取る者と誤解被致候ひしも、そのしからざるは右の例にて相分り可申、那須の歌は純客観、後の二首は純主観にて、共に
愛誦
(
あいしょう
)
する所に有之候。
歌よみに与ふる書
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
信長の独特な狩の方法、信長
愛誦
(
あいしょう
)
の唄、信長を解く鍵の一つが、たしかにそこにはあるのである。
織田信長
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
相聞
(
そうもん
)
の歌では、これがいちばん男性的であるというような意味で、良斎先生の
愛誦
(
あいしょう
)
となっているところから、その口うつしが、思わず知らず、お雪ちゃんの口癖になっているのかも知れない。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
チェーホフの数ある作品の中でも最も
愛誦
(
あいしょう
)
され、最も人口に
膾炙
(
かいしゃ
)
した作品であろう。トルストイがこれを四度も続けさまに朗読して、しかも少しも
倦
(
う
)
まなかったという逸話は余りにも有名である。
「可愛い女 犬を連れた奥さん 他一編」あとがき
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
その言葉をわれわれに残したあの中世紀の
大放蕩
(
だいほうとう
)
詩人の作物を
愛誦
(
あいしょう
)
して、いとしみからと思えば憎しみで、憎しみからと思えばいとしみで、あれからこれへ、これからあれへ、
転
(
ころ
)
がそう転がそう
吊籠と月光と
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
あの北極の太陽に
自己
(
おのれ
)
が
心胸
(
こころ
)
を
譬
(
たと
)
え歌った歌、岸本が東京浅草の
住居
(
すまい
)
の方でよく
愛誦
(
あいしょう
)
した歌を
遺
(
のこ
)
して置いて行ったのも同じ仏蘭西の詩人である。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
天保十四年六月簡堂が
生野
(
いくの
)
銀山視察の途上、大坂の客舎にあってその母の
訃
(
ふ
)
に接した時の日記の文の如きはわたくしの
愛誦
(
あいしょう
)
して
措
(
お
)
く
能
(
あた
)
わざるものである。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
著者は昔から蕪村を好み、蕪村の句を
愛誦
(
あいしょう
)
していた。しかるに従来
流布
(
るふ
)
している蕪村論は、全く著者と見る所を異にして、一も自分を
首肯
(
しゅこう
)
させるに足るものがない。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
前日来
生
(
せい
)
は客観詩をのみ取る者と誤解
被致
(
いたされ
)
候いしも、そのしからざるは右の例にて相分り可申那須の歌は純客観、後の二首は純主観にてともに
愛誦
(
あいしょう
)
するところに有之。
歌よみに与ふる書
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
こっそり取り出してその名文を
愛誦
(
あいしょう
)
し、遠く離れた周さんをなつかしんだものだが、卒業
真際
(
まぎわ
)
に、ある学友から取り上げられてしまって、いま思うと実に惜しいのである。
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
短い
刃
(
やいば
)
を持って、山の端の月とも見える真白い
面
(
おもて
)
を
仰向
(
あおむ
)
けたまま目をふさいだ夫人が、日頃、
愛誦
(
あいしょう
)
している
法華経
(
ほけきょう
)
の五之巻の一章をしずかにその
唇
(
くち
)
から
唱
(
とな
)
えているすがたを。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
酒の酔いが回るにつれて、正香は日ごろ
愛誦
(
あいしょう
)
する
杜詩
(
とし
)
でも読んで見たいと言い出し、半蔵がそこへ取り出して来た幾冊かの和本の集注を手に取って見た。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
わたしはかつて
愛誦
(
あいしょう
)
した『
春濤詩鈔
(
しゅんとうししょう
)
』中の六扇紅窓掩不
レ
開——妙妓懐中取
レ
煖来という絶句を
憶
(
おも
)
い起すと共に
妓
(
ぎ
)
を
擁
(
よう
)
せざるもパンを抱いて歩めばまた寒からずと覚えず笑を
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
かの
歴山
(
アレキサンドル
)
大王やシーザアやの、古代の英雄によって
愛誦
(
あいしょう
)
され、彼等の少年時代に於て、早くそのヒロイックな権力感情を養成した時、後者はより民衆的な青年の間に読まれ
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
有名な彼の遺文「
独行道
(
どっこうどう
)
」の句々は、今日でも、
愛誦
(
あいしょう
)
に足るものである。もとより彼の時代と現代とのひらきはあるが、
玩味
(
がんみ
)
すれば、人間本能の今も変らない素朴な良心にふれてくることは否めない。
随筆 宮本武蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“愛誦”の意味
《名詞》
愛 誦(あいしょう)
お気に入りの詩文を常に口ずさむこと。
(出典:Wiktionary)
愛
常用漢字
小4
部首:⼼
13画
誦
漢検1級
部首:⾔
14画
“愛”で始まる語句
愛
愛嬌
愛想
愛撫
愛宕
愛惜
愛宕山
愛相
愛憎
愛娘