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怯
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おそ
ふりがな文庫
“
怯
(
おそ
)” の例文
黒吉は、何かわからぬゾッとした
怯
(
おそ
)
れに、ぶるぶる顫えながら、思わず腕の痛みも忘れて、胸から腹、腹から腰と撫ぜて見た。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
下谷
(
したや
)
の
外祖父
(
がいそふ
)
毅堂
(
きどう
)
先生の詩に小病無
ク
レ
名怯
ル
二
暮寒
ヲ
一
〔
小病
(
しょうびょう
)
に
名
(
な
)
無
(
な
)
く
暮寒
(
ぼかん
)
を
怯
(
おそ
)
る〕といはれしもかくの如き心地にや。
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
万事をその神の御思慮に
順
(
したが
)
わせ奉らば、さてこともなかるべきを、いかなればかこの世のほかの
憂懶
(
ゆうらん
)
を
怯
(
おそ
)
れて、覚なき後の栄華を求めむずらむ
通俗講義 霊魂不滅論
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
単于
(
ぜんう
)
は漢兵の
手強
(
てごわ
)
さに驚嘆し、
己
(
おのれ
)
に二十倍する大軍をも
怯
(
おそ
)
れず日に日に南下して我を誘うかに見えるのは、あるいはどこか近くに、伏兵があって
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
そうだ! あんな
卑
(
いや
)
しい人間に
怯
(
おそ
)
れてなるものか。
彼
(
あ
)
の男こそ、自分の清浄な
処女
(
おとめ
)
の
誇
(
ほこり
)
の前に、
愧
(
は
)
じ怯れていゝのだ。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
▼ もっと見る
籠の中の鳥は、籠の揺れるのを
怯
(
おそ
)
れてか、止まり木をしっかり攫んで、羽をすぼめるようにして、身動きもしない。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
矧
(
いはん
)
や彼人は物に
怯
(
おそ
)
るゝこと
鹿子
(
かのこ
)
の如く、同じ席に
列
(
つらな
)
るものもたやすく近づくこと能はざるを奈何せん。われは必ずしもかの人心より此の如しと説かず。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
「殺人犯で、懲役五箇年です。」緩やかな、力の這入った詞で、真面目な、憂愁を帯びた目を、
怯
(
おそ
)
れ
気
(
げ
)
もなく、大きく睜って、己を見ながら、こう云った。
冬の王
(新字新仮名)
/
ハンス・ランド
(著)
挙止
(
とりなり
)
侠
(
きゃん
)
にして、人を
怯
(
おそ
)
れざる
気色
(
けしき
)
は、
世磨
(
よず
)
れ、場慣れて、
一条縄
(
ひとすじなわ
)
の
繋
(
つな
)
ぐべからざる魂を表わせり。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
やらせるなどと言いくさる。この年になって若い者に
怯
(
おそ
)
れを取ったら神田一門の名折れじゃと、恥を忍んで聴きにいったよ、お前さんの高座を。するとうまい。滅法いい
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
紋羽二重
(
もんはぶたへ
)
の
小豆鹿子
(
あづきかのこ
)
の
手絡
(
てがら
)
したる
円髷
(
まるわげ
)
に、
鼈甲脚
(
べつこうあし
)
の
金七宝
(
きんしつぽう
)
の玉の
後簪
(
うしろざし
)
を
斜
(
ななめ
)
に、
高蒔絵
(
たかまきゑ
)
の
政子櫛
(
まさこぐし
)
を
翳
(
かざ
)
して、
粧
(
よそほひ
)
は
実
(
げ
)
に
塵
(
ちり
)
をも
怯
(
おそ
)
れぬべき人の
謂
(
い
)
ひ知らず
思惑
(
おもひまど
)
へるを、
可痛
(
いたは
)
しの
嵐
(
あらし
)
に
堪
(
た
)
へぬ花の
顔
(
かんばせ
)
や
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
何事と眉を
顰
(
ひそ
)
むる瀧口を、重景は
怯
(
おそ
)
ろしげに打ち
※
(
みまも
)
り
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
この
恐
(
おそ
)
ろしい
一致
(
いっち
)
は。
怯
(
おそ
)
れずになお
仔細
(
しさい
)
に
観
(
み
)
るならば、前世に
喚起
(
かんき
)
した、その前々世の記憶の中に、恐らくは、前々々世の己の同じ姿を見るのではなかろうか。
木乃伊
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
牡牛
(
おうし
)
のように
巨
(
おお
)
きい勝平と相対していながら、彼女は一度だって、
怯
(
おそ
)
れたことはなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「寝るんだよ。」と、もう一度、今度はやや烈しい口調で彼は言った。彼女は
怯
(
おそ
)
れたように身を
退
(
ひ
)
いた。
プウルの傍で
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
始めよ。
仮令
(
たとえ
)
、医者が汝に一年の、或いは一月の余生すら保証せずとも、
怯
(
おそ
)
れずして仕事に向い、而して、一週間に為され得る成果を見よ。我々が意義ある労作を
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
怯
漢検準1級
部首:⼼
8画
“怯”を含む語句
卑怯
卑怯者
怯気
怯々
怯懦
気怯
物怯
勇怯
怯者
聞怯
御卑怯
怯勇
怯々然
心怯
氣怯
卑怯至極
悪怯
怯弱
怯気々々
怯惰
...