御諚ごじょう)” の例文
「そうです。御諚ごじょう至極ごもっともに存じます。早速、質子を入れよとのご一書を、おつかわし下されば、必ず送って参りましょう」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これ、これ、永居は平太夫の迷惑じゃ。すぐさま縄目を許してつかわすがよい。」と、難有ありがた御諚ごじょうがございました。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「はっ。心得まして厶ります。御諚ごじょう伝えましたらいずれも感泣かんきゅう致しますることで厶りましょう。取替えまする間、おろうそくを持ちまするで厶ります」
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
只今にも伏見より検使あらば自害すべし、亡からん跡は誰をか頼み申すべきと云いもあえず、ふたゝび涙を流したので、上人承り、御諚ごじょうにて候えども
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
其亡き骸は、大和の国を守らせよ、と言う御諚ごじょうで、此山の上、河内から来る当麻路の脇におけになりました。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
もっとも家事不取締で罰せられたり、御諚ごじょう百箇条的思想で人を律されては、少しぐらい手加減をして頂かなければ、人民どものほうがかなわないわけである。
江戸の昔を偲ぶ (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
如水は敬々しく辞退して、かたじけな御諚ごじょうですが、すでに年老ひ又生来の多病でこの先の御役に立たない私です。
二流の人 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
……とはいえ御諚ごじょうを拒んだら、今後お出入りは出来ないだろう。おれにとってはこれも苦痛だ。紀州家の後ろ楯があればこそ、世間でもおれを信用してくれる。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「殿様よりの御諚ごじょうで御座ります。尾藤様は最早もはや、御退出になりましたか見て参れとの御諚で……」
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
わがやんごとなき父君、国王様には、只今、ながの旅路におわせど、そなた達を饗宴にしょうぜよと、わらわ御諚ごじょう下されしぞ。何じゃ、楽士共か。六絃琴ヴァイオル、また低音喇叭バッスウンを奏でてたもれ。
「さ候えば、即刻、みかどをお迎えし奉ッて、かねがねの手筈てはずにたがわず、山陰の宮方をこぞり集められよ。——御諚ごじょう、以上のとおりであるが」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御意見代りにお膝汚し奉ったこの主水之介が不埓か、黒白は上のお目次第、もし万一、主水之介に不埓ありとの御諚ごじょうならば、切腹、お手討、ゆめいといませぬ。
「いちめいを許して取りたてゝつかわそう」という御諚ごじょうでござりましたけれども、「このうえはなんの望みもござりませぬ」と申されてひたすらおいとまをねがわれました。
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
綸旨りんじを降しおかれ、隣境の乱あらば討つべし、皇土をみだし、民を苦しめるの暴国あらばおもむいて平定せよと、不才謙信に身にあまる御諚ごじょうであった。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
向けたわたくし、このままお手討になりましょうとも、お力添えとは少しく異な御諚ごじょうではござりませぬか
とのさまのおん姉末森殿ならびに御息女をおつれ申してたちのくようにとの御諚ごじょうがござりまして、余人に仰せつけくださりませと申されましても、いや/\、これはその方にたのむ
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
あのような御諚ごじょうではあっても、御心みこころのうちでは、其許そこの御真情を、おうれしくおぼしめされていたにちがいありませぬ
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主命との御諚ごじょうござりますれば致し方厶りませぬ。千之介がけわしく叱ったのも無理からぬこと、実は波野と二人してこの怪談を先達せんだつてある者から聞いたので厶ります。
十万石の怪談 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
さてあるだけの名酒の樽をのこらず持ってまいれとの御諚ごじょうでござりました。
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「ご当主には、だいぶお長い御病気、どんなか、よう見舞うてこいとの御諚ごじょうでおざる。さしつかえなくば、ご病間でもいい、親しゅうお顔を拝したいが」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「下郎共が無礼仕ったゆえ、直参旗本早乙女主水之介、松平の御前の御諚ごじょうによって、とくと、承わりたい一儀がござる。島津殿、お墨付にござるぞ。乗物棄てさっしゃい」
御諚ごじょうではござりますけれども、戦と云うものは時の運でござりますから、人数の多い少いには拘りませぬ、しかしそれでも勝ち目がないと思し召すなら、某一人にお任せなされて下さりませ
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「すべては御諚ごじょうです。われらは、みかどの上命のままあなたをここに捕縛したまでのこと。さッ、お歩きなさい」
「はッ。御帰館との御諚ごじょうならば立ち帰りまするでござりますが、釣れぬのは——」
いかさま御諚ごじょうに従いましょうと、清六は直ぐに越前へ下った。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
行家ゆきいえ追討の御諚ごじょうについては、耳もかされず、く帰れとの御一言あったのみ、取りつく島もなく立戻りました
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ふ、ふ、古道具でござります。只今お主侯様とのさまから、もう不用じゃ、払い下げいとの御諚ごじょうがござりましたゆえ、出入りの古道具屋へ売払いに参るところでござります。御退おのき下されませい」
「ただいまの御諚ごじょうは口惜しいことにござります。多年御恩顧のともがらを、左様に心許こころもとなき者と思し召されてか」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御諚ごじょうよく分りかねまする。不意にまた何をおおせられまするので厶ります」
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
妻子をのこせとの御諚ごじょうではあったが、あの高時公、ふとお忘れか、母をも質とするとは仰せられなんだ。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
思いもよらぬ御諚ごじょうです。
しかし、そこも龍淵りゅうえんのごとくめいとしていた。しばしは何の御諚ごじょうもなかった。そしてただあの大きなおん目をらして、じっと正成を見ていらっしゃるのみである。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これにはまた、みかども常々お悩みらしくあって、近ごろはとみに自分への寵幸もおとろえぎみとなっていた折……はしなくも「義貞へけ」との御諚ごじょうであったという。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
本来、辰の口より今日すぐに、安房どののお邸の方へ戻るべきなれど、この度のこと、お取止めの御諚ごじょうあるからには、武蔵の身に、将軍家御不審あればこそである。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
王定の請願を奏上すれば「——よきにしておけ。枢密院の衆議にまかせる」というのみの御諚ごじょうだけだ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
臣下の正行まさつらへ、汝を股肱ここうとたのむぞと御諚ごじょうあそばされたことは、まこと正行のほまれ、亡き父君にも、御満足に在すらめとはふと思うたが、深く思えば、この御国に
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みかどから「俊基、琵琶せよ」との御諚ごじょうに、他の人々も「それなん聞きもの。そのうえ小右京ノ君に、琴を合奏あわさせなば、なお、おもしろからんに」と、言いはやした。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いえ、御来屋みくりやうらからいくらの道でもない由です。したが、御諚ごじょうはとつぜんな儀、事は何せい、ゆゆしきお迎えでもありますれば多少の遅滞は無理ならずとも思われまする」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なろうものなら、その手は、帝のおんのすそにすがりついて、なおこと御諚ごじょうをと、おせがみしたかったに違いあるまい。指のさきも、ひれ伏したびんも、ふるえていた。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちょっとわが城へ来て対面してはどうか——とありがたい御諚ごじょうがあったにもかかわらず、お母堂さまのお答えには、中国のえきすら、まだ半途と聞く、安土に来たのも、おおやけの御用
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「こは、思いがけぬ御諚ごじょうにござりまする。人の沙汰やら存じませぬが、何で将帥しょうすいのよりごのみなどいたしましょう。すべては、御軍みいくさの下、この正成もみかどの一兵でしかございませぬ」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さればです、主人信玄公の御諚ごじょうには、このたびの御挑戦こそまことに遺憾至極。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、彼の姿を見そなわすや、なかなかなお元気で、こう御諚ごじょうであった。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
との有難い御諚ごじょうに、初めて彼もきざはしを踏むことができたのであった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ありがたい、勿体もったいない、御諚ごじょうではござりませぬか」
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「げにも冥加にあまる御諚ごじょう有無うむなく、おうけ申しあげるべきでございましょうが、元々、さしたる力は持たずのうもなき正成。とてもおん頼みにこたえ奉るなどは、思いもおよびません。ひらに御辞退申しあげまする」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お目どおりはならんという御諚ごじょう!」
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
思いきや、この御諚ごじょうである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御諚ごじょう、身にすぎまする」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御諚ごじょう、身に余ります」