後方こうほう)” の例文
こう注意ちゅういしてやると、後方こうほうから、前線ぜんせんおくられたばかりの、わか兵士へいし一人ひとりが、目前もくぜんで、背嚢はいのうをおろして、そのうちあらためていました。
少女と老兵士 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なにたもありません、本船ほんせん左舷さげん後方こうほう海上かいじやうあたつて星火榴彈せいくわりうだん一次いちじ一發いつぱつ火箭くわせん、それが難破船なんぱせん信號しんがうであるくらゐりませんか。
「おわかい! お若い! およそ築城の縄取りをなすにあたって、後方こうほうやぶれを思わぬ者やあらん」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
正面しょうめん本院ほんいんむかい、後方こうほう茫広ひろびろとした野良のらのぞんで、くぎてた鼠色ねずみいろへい取繞とりまわされている。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
後方こうほうにとび出している手頃な岩にぐるぐるぐるとかたく巻きつけた。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その遥か後方こうほうの塀外は神田明神鳥居前の道路になるのである。
木犀の花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
いまから數分すうふん以前いぜんにかのふね本船ほんせん右舷うげん後方こうほう海上かいじやうおい不思議ふしぎにも難破信號なんぱしんがうげたこととでかんがあはせるとかゝ配慮しんぱいおこるのも無理むりはあるまい。
この不幸ふこうなからすだけは、みんなから、ややもするとおくれがちでした。けれど、殿しんがりうけたまわったからすは、このよわ仲間なかまを、後方こうほうのこすことはしなかった。
からす (新字新仮名) / 小川未明(著)
船長閣下せんちやうかくか越權えつけんながら報告ほうこくします、本船ほんせん左舷さげん後方こうほう、三海里かいりばかりへだゝつた海上かいじやうあたつて一個いつこ難破船なんぱせんがありますぞ。
いくつか病棟びょうとうがあったが、このおさな子供こどもたちのかったのは、いちばん後方こうほうにあった、しろ病舎びょうしゃでした。そうじのゆきとどいた、おおきなへやのなかには、幾列いくれつとなくベッドがただしくならんでいました。
少女と老兵士 (新字新仮名) / 小川未明(著)