希代きたい)” の例文
そこで手まえのあつかいますのは、近江おうみ琵琶湖びわこ竹生島ちくぶしまに、千年あまりつたわりました、希代きたいふしぎな火焔独楽かえんごま——はい、火焔独楽!
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伊豆はそこまで云いかけると咄嗟に自分もじたばた格好をつくったが、希代きたいな興奮に堪え難くなってほとばしるように笑いだした。
小さな部屋 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
総て功利の念をもて物を候わば、世の中に尊き物は無くなるべし、ましてやその方が持帰り候伽羅は早速さっそくき試み候に、希代きたいの名木なれば
あのひめ美麗あてやかさで、かゞや燭火ともしびまただんかゞやくわい! よるほゝ照映てりはゆるひめ風情ふぜいは、宛然さながら黒人種エシオツプ耳元みゝもと希代きたい寶玉はうぎょくかゝったやう、使つかはうにはあま勿體無もったいな
そら希代きたいに大きなうちばかり狙って、どこから入ってどこから出たのやらちっとも分からないのに、いつの間にか金目のものがなくなっていたり、用心すればする程面白がって
ニッケルの文鎮 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
繼「まア何うも希代きたいなこと、私のねえお父さんを殺して逃げた奴も永禪和尚と申しますので、真言寺の住持に成ったが、元は水司又市と云う者で、やっぱり私の尋ねる敵だわ」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
今度こんど發見はつけんされた駒岡附近こまをかふきんにも、すですで澤山たくさん横穴よこあな開發かいはつされてあるのだが、て、果報くわはうなのは今回こんくわいのお穴樣あなさまで、意外いぐわい人氣にんき一個ひとり背負せおつて、まこと希代きたい好運兒かううんじいな好運穴かううんけつといふべきである。
後に話合うと、階下したへ用達しになど、座をって通る時、その窓の前へくと、希代きたいにヒヤリとして風が冷い。処で、何心なく障子をスーツと閉めてく、……帰りがけに見るとさらりといている。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのわりにゃア試験に好結果を得るから希代きたいだヨ。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
希代きたいの名木なれば「聞く度に珍らしければ郭公ほととぎすいつも初音はつね心地ここちこそすれ」と申す古歌にもとづき、銘を初音とつけたり、かほどの品を求め帰り候事天晴あっぱれなり
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
菊村宮内からもらって、ふところに入れていた、希代きたい火独楽ひごま! その火独楽だ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うも不思議、お國さんがこゝにおでとは計らざる事で、これは妙、内々ない/\御様子を聞けば、思うお方と一緒なら深山みやまの奥までと云うようなる意気事筋いきごとすじで、誠に不思議、これは希代きたいだ、妙々々
ここ希代きたいな事は——
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
惣「お園はまことに希代きたいだ、あれは感心な堅い娘だ、あれは女中のうちでも違って居る、姉は何だか、稽古の師匠で豐志賀とよしがというが、姉妹きょうだいとも堅い気象で、あの新五郎はしきりとお園に優しくするようだが」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)