島田髷しまだ)” の例文
月なき暗い夜に、うすものはだが白く透く、島田髷しまだと、ひさし髪と、一人は水浅葱みずあさぎのうちわを、一人は銀地の扇子を、胸に袖につかって通る。
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……島田髷しまだ艶々つやつやしい、きゃしゃな、色白いろじろな女が立って手伝って、——肥大漢でっぷりものと二人して、やがて焜炉こんろを縁側へ。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
高嶺たかねはるかに雪をかついで、連山の波の寂然と静まった中へ、島田髷しまだに、すすきか、白菊か、ひらひらとかんざしをさした振袖の女が丈立ちよくすらりとあらわれた、と言うと
屋號やがう樓稱ろうしようかは。)と、(まつ。)とあゐに、紺染こんぞめ暖簾のれんしづかに(かならず。)とかたちのやうに、むすんでだらりとげたかげにも、のぞ島田髷しまだえなんだ。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
女房にようばうでは、まるでとしちがふ。むすめか、それとも因果いんぐわなにとかめかけであらうか——なににしろ、わたしは、みゝかくしであつたのを感謝かんしやする。……島田髷しまだでは遣切やりきれない。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そこを両脇、乳も、胸も、もぞもぞと尾花がくすぐる! はだかる襟の白さを合すと、合す隙に、しどけない膝小僧の雪を敷く。島田髷しまだも、切れ、はらはらとなって
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
支えたかいなが溶けるように、島田髷しまだせて、がっくりと落ちて欄干てすり突伏つッぷしたが、たちまちり返るように、つッと立つや、蹌踉々々よろよろとして障子に当って、乱れた袖を雪なすひじ
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
顔立もおなじような——これは島田髷しまだの娘さんであった——十八九のが行違った。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……あの大漢おおおとこのまる顔に、口許くちもとのちょぼんとしたのを思え。の毛で胡粉ごふんいたような女のはだの、どこか、あぎとの下あたりに、黒いあざはなかったか、うつむいた島田髷しまだの影のように——
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
立直った時、すっきりした横顔に、もつれながら、島田髷しまだも姿もすわりました。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
帽子をよけて、幹に立った、振袖は肩ずれに、島田髷しまだは男よりやや高い。
盛の牡丹ぼたん妙齢としごろながら、島田髷しまだもつれに影がす……肩揚をったばかりらしい、姿も大柄に見えるほど、荒いかすりの、いささか身幅も広いのに、黒繻子くろじゅすの襟の掛った縞御召しまおめしの一枚着、友染ゆうぜん前垂まえだれ
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蝶吉は振乱すように壁に押着おッつけた島田髷しまだゆすぶって
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
縺毛もつれげがはらはらとかかって島田髷しまだが見えた。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)