山寨さんさい)” の例文
されどその宝物を、あなたはだれにわたしましたか、または、この山寨さんさいのうちにあるのですか。ききたいのはつまりそのこと一つです
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『困つたなア、大丈夫でせうかなア! 誰だつて命は惜いですからな! 山寨さんさいに幾日も捕虜になつてゐるやうな目にも逢ひたくないからな!』
北京の一夜 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
その大いなる趺坐ふざ僧の姿は、山寨さんさいを構へて妖術を使ふ蝦蟇のやうに物々しく取澄して、とりつく島もない思ひをさせた。
閑山 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
箱根の山に山寨さんさいを構え海道筋を稼ぎ場とし旅人を嚇しおびやかしていた彼人丸左陣よりは貫禄においても上位うえにあるからだ。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
胆吹の山寨さんさいは、今や彼女の軽蔑のために吹き飛ばされてしまいました。自ら築いたものを、自ら軽蔑するのだから、これは手の附けようがありません。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ある日彼媼さへ、ひねもす出でゝ歸らざりしかば、我は賊の一人とこの山寨さんさいの留守することゝなりぬ。この男は年二十の上を一つばかりも超えたるならん。
斡児桓オルコン河に沿い、抗愛山脈こうあいさんみゃくに分け入らんとする麓。納忽ナクの断崖と称する要害の地に築かれたる札荅蘭ジャダラン族の山寨さんさい。石を積みて、絶壁の上に張り出したる物見台。
江戸を過ぎてようよう仙台ちかくなって春とはいえだ山には雪が残っているのを見て泣き、山賊たちをひどく手こずらせて、古巣の山寨さんさいにたどり着いた頃には
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「……姫松ひめまつどのはエ」と、大宅太郎光国おおやのたろうみつくにの恋女房が、滝夜叉姫たきやしゃひめ山寨さんさいに捕えられて、小賊しょうぞくどもの手に松葉燻まつばいぶしとなるところ——樹の枝へ釣上げられ、後手うしろでひじそらに、反返そりかえる髪をさかさに落して
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
山つづきの裏手は酒呑童子しゅてんどうじ山寨さんさい、岩窟中に一党十余名、官女風の女が舞っていて酒宴の体、表門には鬼の番人数名控えいる細密の彫刻、全く無類の作で、これは今美術学校に蔵されているはず。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
「言い分のある者はここへ出て来い。——今からは豹子頭ひょうしとう林冲をわしたちの頭領として、山寨さんさいの主座にいただこうぞ。文句はないか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天丸左陣と人丸左陣とは、いろいろ思案をめぐらした後、洞窟内に住むことにした。つまり山寨さんさいを設けたのである。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼等暴民共の一炬いっきょに附されるか、或いは山寨さんさいの用に住み荒されることは火を見るように明らかである。
傍に瀕死の病人もなきが如く、ひねもす禅定三昧ぜんじょうざんまいであった。その大いなる趺坐僧の姿は、山寨さんさいを構えて妖術を使う蝦蟇がまのように物々しく取澄して、とりつく島もない思いをさせた。
閑山 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
あるひは、ほとけ御龕みづしごとく、あるひひと髑髏どくろて、あるひ禅定ぜんぢやうあなにもつゝ、あるひ山寨さんさい石門せきもんた、いはには、ひとツづゝみなみづたゝへて、なかにはあをつてふちかとおもはるゝのもあつた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「じつはわが輩も、二龍山の宝珠寺ほうじゅじこそ、世を忍ぶにはもってこいな場所と考え、山寨さんさいの頭、鄧龍とうりゅうに会わんものと、訪ねていった」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「うんそうだ、黒姫山に、山寨さんさいを築いて住んでいる地丸左陣の乾児こぶんの中で、名を知られた双六すごろくの六太だ」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
どちらを向いても百姓一揆ひゃくしょういっきてんで、たいした騒ぎでござんしたよ、その中をいいかげん胡麻ごまをすってトッパヒヤロをきめやして、首尾よく仰せつけ通りの胆吹の山寨さんさいへかけつけやして
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それから山寨さんさいをかまえて酒をうる商法。
それらの者を集めておとずれまいったしだい、どうぞ、われわれ両名をはじめ一同を、この山寨さんさいにおとめおきくださるまいか
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不破の関守氏ならば、米友も旧識どころではない、つい近ごろまで、胆吹の山寨さんさいで同じ釜の飯を食っていた宰領なのですから、なあんだ、それならそれと言えばいいにと、少し苦い顔をしていました。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「とんでもない。近所はアカアカと電燈がついているのに、そこだけは真ッ暗ですよ。どうも変だナと思いきってはいってみたら、ローソクでやってますよ。電燈とめられちゃッたんだそうです。梅田通りの一流の土地なんですがね。まるで山寨さんさいですね」
見れば山寨さんさい第一の膂力りょりょく、熊のごときひげをたくわえている轟又八とどろきまたはちだった。すると一ぽうから、軍謀ぐんぼう第一のきこえある丹羽昌仙にわしょうせんがしかつめらしく
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その胆吹山の山寨さんさいに居候をしていたのだそうです。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「おう陳達か。——芸もなくといわれちゃあ面目ねえなあ。したが、三日も山寨さんさいを留守にしたおめえにしろ、やはりなんの土産もなかったじゃねえか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孟獲は、舟の中から、二度ほど振り向いたが、対岸に着くや否や、ひょうのように、山寨さんさいへ駈け登って行った。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ご覧なさい、第六軍の将たる韓暹かんせんは、以前、陝西せんせい山寨さんさいにいた追剥おいはぎの頭目ではありませんか。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なぜ山寨さんさいに住んでいたかといえば、この地方の賊害に災いされて、わたくしどもは安らかに耕農に従事していられないのみか、食は奪われ、生命も常に危険にさらされています。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分で藤次と名乗っているし、物腰から見ても、これが山寨さんさいに住む賊の頭目であろう。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
土蜂どばちの巣のように作って、主従六、七十騎が、一種の山寨さんさいを構成し、しきりに、密偵を放ったり、離散した味方との連絡を計ったり、また食糧の猟り集めなど、営々として、とにかく
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
実は、てまえの山寨さんさいへきて、きょう峠へかかる旅客は天下無双の名馬、赤兎馬というのにまたがっている。金も持っている。女もつれている。そう告げにきて、儲けの分け前を求めました。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なに。——では二夫人の御車は汝らの山寨さんさいへ持ち運ばれて行ったのか」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なあに、金さえあればいいのだ。幸い、俺たちの護衛して来た老いぼれの一族は、金もだいぶ持っているらしいし、百輛の車に、家財を積んでいる。こいつを横奪りして山寨さんさいへ立て籠るんだ」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と雨龍太郎の声は山寨さんさいゆるがすように落ちて来た。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『深い山だね、いったいいつ山寨さんさいへ着くのだい』
人間山水図巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)