屈強くっきょう)” の例文
すると、楽屋口から、肉じゅばんに、金糸のぬいとりのあるさるまたをはいた屈強くっきょうな男たちが、つぎつぎと、とび出してきました。
サーカスの怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
マルラ秘書は数名の屈強くっきょうな船員をひきつれ、いつのまにかクーパーのところへかえってきた。そして、籠城作業ろうじょうさぎょうをきびきびとやってのけた。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
……が、むなしくいるよりは、一策でも手を打っておくべきかと思い直し、屈強くっきょうな者をえらんですぐ持たせてやるつもりです。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あたしの母は十二になって、屈強くっきょうな体力をもっていた。姉と妹二人はどうにもならなかった。彼女は小船をいだ。
旧聞日本橋:08 木魚の顔 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
細長い、薬研やげんづくりの、グイとみよしのあがった二間船。屈強くっきょうの船頭が三人、足拍子を踏み、声をそろえて漕ぎ立て漕ぎ立て、飛ぶようにしてやって来る。
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
また象の団体が進行するときには屈強くっきょうな牡象が周囲に並び、牝や子供は中に立たせ、弱き者を助け幼き者を導いて進むが、これはすなわち「象道」である。
人道の正体 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
の家でも、五人六人子供の無いうちは無い。この部落ぶらくでも、鴫田しぎだや寺本の様に屈強くっきょう男子おとこのこの五人三人持て居るうちは、いえさかえるし、何かにつけて威勢いせいがよい。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
色めき立った声と共に、いかさま馬上せわしく駈け近づいて来たのは、七八人の屈強くっきょうな供侍を引き随えた老職らしいひとりです。同時に馬上から声がありました。
「主命をこばむではござりませぬが、私如き若年者より、他にどなたか屈強くっきょうなお方が……」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
御随行おとも人数にんずおよそ五六十にん、いずれもみこと直属ちょくぞく屈強くっきょう武人つわものばかりでございました。
ことにこの青梅街道の中で丸山台というところあたりは追剥おいはぎたぐいが常に出没して、日のうちに心強い人連れでもなければ屈強くっきょうな男でさえ容易にここを通りません。まして日の暮や夜は無論のこと。
非人情の旅にはもって来いと云う屈強くっきょうな場所だ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いきなり一火のたまへドカドカと入ろうとすると、なかから姿すがたをあらわした鐘巻一火じしんと、屈強くっきょう門弟もんていが、とばりの入口にたちはだかって
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
舞台裏全体にたった一つ、高い天井から電燈がぶら下っているばかりだから、そのゴタゴタした隅っこは、殆ど暗闇も同然、屈強くっきょうの隠れ場所だ。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それにこうして平然と、画面に見入みいっていていいものかしら、赤外線男の出てくるには屈強くっきょうな地下室ではないか。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
病院というものは、犯罪者にとって、実に屈強くっきょうの隠れがなんだよ。探偵小説狂の鶴子さんがそこへ気のつかぬ筈はない。僕はこんな風に考えたんだ
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
と、脇屋義助は言って、瓜生保のほか、里見新兵衛、世良田兵庫助など、屈強くっきょうな供二十人を選んで兄を送り出した。
十騎の武者は、どれも屈強くっきょうなつらだましいの者どもだった。いずれも河内者だろうか。二騎はたいまつをかざしてやや先に立ち、尊氏を中にかこみ、深夜の町を戛々かつかつと行く。
丁度その時休み場所には屈強くっきょうの森が見つかった。彼は倒れ込む様にその中へ入って行った。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
はや車寄くるまよせには、随身たちがを揃えていた。つねの参内ならずとして、これも殿でん法印ほういんの用心か。屈強くっきょうなのが、供人ともびとの装いで、こぞッて、ながえの両わきにひざまずいている。
屈強くっきょうの書生が、みじめな、鵞鳥がちょうの鳴声の様な、悲鳴を上げたのを聞くと、室内には、どの様に恐ろしいことが起っているのかと、斎藤老人を初め、ゾッとして、梯子を昇る勇気もなかった。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
かねがね屈強くっきょうな侍や多くの兵を内に蓄えていた宮家でもある。——この者どもは扶持ふちにも離れかけたが、しかし浮浪にまではならずにそのほとんどが新田義貞の麾下きかにかかえられた。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
柾木が予期した通り、これこそ屈強くっきょうの犯罪舞台であった。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
が、屈強くっきょう旗本輩はたもとばらや陣中僧の日野賢俊らはもちろん一刻もそばを離れてはいない。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
近づいてみると、屈強くっきょうな武士、しかし、肩にどっぷりあけをにじませている。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、進んで課役におうじ、屈強くっきょうな串崎男八十人は水夫かこの群れに投じてきた。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五人の屈強くっきょうなるものが、その前後ぜんごにつきしたがっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それには、屈強くっきょう新参者しんざんものがひとりござります」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)