妻籠つまご)” の例文
しかるに『岐蘇考』に天正十二年山村良勝妻籠つまごに城守りした時、郷民徳川勢に通じて水の手をふさぎけるに、良勝白米もて馬を洗わせ
やがて納棺の用意もできるころには、東西の隣宿から泊まりがけで弔いに来る親戚しんせき旧知の人々もある。寿平次、得右衛門は妻籠つまごから。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
始めて木曾の大溪に逢ひしは、妻籠つまご驛を經て、新舊兩道の分岐點なるなにがし橋と稱する一溪橋を渡れるのちにあり。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
妻籠つまごより舊道を辿る、溪水に襯衣を濯ぎて日頃の垢を流す、又巨巖の蓬を求めて蓙しきて打ち臥す、一つは秋天の高きを仰ぎ、一つは衣の乾く程を待つなり
長塚節歌集:2 中 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
妻籠つまご通り過ぐれば三日の間寸時も離れず馴れむつびし岐蘇きそ河に別れ行く。何となく名残惜まれて若し水の色だに見えやせんと木の間/\を覗きつゝ辿れば馬籠まごめ峠の麓に来る。馬を尋ぬれども居らず。
かけはしの記 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
隱し車に乘る表にたちて見るもの子供まじりに十四五人あり梅花道人我身に受けてグツト氣張り車やれとおつな調子なり妻籠つまご宿しゆくにて晝餉したゝ馬籠まごめの峠なれば車は二人曳にんびきならでは行かずそれもなか/\遲し馬にて越させ玉へと宿やどの主の心付けに荷を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
隣宿妻籠つまごの本陣には寿平次がこの二人ふたりを待っていた。その日は半蔵も妻籠泊まりときめて、一夜をお民の生家さとに送って行くことにした。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
木曾の松本平の倉科くらしな様ちゅう長者が、都へ宝くらべにとて、あまたの財宝を馬に積んで木曾街道を上り、妻籠つまごの宿に泊った晩、三人の強盗、途中でその宝を奪おうと企て
落合おちあひ驛を過ぎて、路二つにわかる。一は新道にして木曾川の流に沿ひ、一は馬籠峠まごめたうげえて妻籠つまごる。われは其路のわかるゝ一角に立ちて、久しくその撰擇に苦しまざるを得ざりき。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
これはすでに妻籠つまごの旧本陣でも始めている自給自足のやり方で、彼女はその生家さとで見て来たことを馬籠の家に応用したのであった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この友は木曾山中の妻籠つまご驛に生れて、其のすぐれたる詩想とそのやさしく美しき胸とは、曾てわれをして更に木曾の山水にあくがれしめたるもの、今しも共にその山水に對して、詩を談し
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
その時、背後うしろから軽く半蔵の肩をたたくものがある。隣村妻籠つまごの庄屋として立ち合いに来た寿平次が笑いながらそこに立っていた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
霊前には親戚しんせき旧知のものが集まったが、一同待ち受ける妻籠つまごからの寿平次、実蔵、それに木曾福島からのおくめ夫婦はまだ見えなかった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ふるい屋敷の一部は妻籠つまご本陣同様取りくずして桑畠くわばたけにしたが、その際にもき父吉左衛門きちざえもんの隠居所だけはそっくり残して置いてある。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
隣宿妻籠つまごの本陣、青山寿平次じゅへいじの妹、おたみという娘が半蔵の未来の妻に選ばれた。このせがれの結婚には、吉左衛門も多くの望みをかけていた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
馬籠以東の宿では、妻籠つまご三留野みどの両宿ともに格別のさわりはないとのうわさもあり、中津川辺も同様で、一向にそのうわさもない。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ともかくも江戸に出ている十一宿総代が嘆願の結果を待つことにして、得右衛門は寿平次より先に妻籠つまごの方へ帰って行った。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そこにはまた、妻籠つまご三留野みどのの両宿の間の街道に、途中で行き倒れになった人足の死体も発見されたというような、そんなうわさも伝わっていた。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
だから、参覲交代のような儀式ばった御通行はそういつまで保存のできるものでもないというあれの意見なんだろう。妻籠つまご寿平次じゅへいじもその説らしい。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
これは馬籠一宿の事にとどまらない。同じような事は中津川にも起こり、落合にも起こり、妻籠つまごにも起こっている。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
隣村となりむら妻籠つまごには、お前達まへたち祖母おばあさんのうまれたおうちがありました。妻籠つまご祖父おぢいさんといふ人もまだ達者たつしや時分じぶんで、とうさんたちをよろこんでむかへてれました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
妻籠つまご吾妻橋あづまばしといふはし手前てまへまできますと、鶺鴒せきれいんでました。その鶺鴒せきれいはあつちのおほきないはうへんだり、こつちのおほきないはうへんだりして
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
彼が子供の時分に一分か二分の金を借りるにも隣宿の妻籠つまごか美濃の中津川邊でするくらゐのところで
桃の雫 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そこで、はじめ妻籠つまごとまりまして翌朝よくあさまた伯父をぢさんにれられて出掛でかけました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)