大望たいもう)” の例文
「さすがにいまだご若年じゃくねん、ごむりではありますが、だいじなときです。お心をしかとあそばさねば、この大望たいもうをはたすことはできません」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうかい、そいつは知らなかった。お政の顔を見ながら間の抜けた小唄なんかうなって、実は大望たいもうがあったわけだね。いや、恐れ入ったよ、八」
要するに僕は絶えず人生の問題に苦しんでいながらまた自己将来の大望たいもうに圧せられて自分で苦しんでいる不幸ふしあわせな男である。
忘れえぬ人々 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
これはお絹の身体を抵当に、なんぞという嫌味なものではなく、七兵衛は七兵衛としての一つの大望たいもうがありました。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
丸多を嚇かして何千両をゆすり取ろうという大望たいもうをおこして、その手先に万次郎を使うことになりました
半七捕物帳:50 正雪の絵馬 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
望事のぞみごとは近く遂げられるが、其処そこの所がちと危ない事で、これと云う場合に向いたなら、水の中でも火の中でも向うへ突切つッきる勢いがなければ、必ず大望たいもうは遂げられぬが
この木部がたびたび葉子の家を訪れるようになった。その感傷的な、同時にどこか大望たいもうに燃え立ったようなこの青年の活気は、家じゅうの人々の心を捕えないでは置かなかった。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
したがつなにゆゑとなくむつましくはなれがたくおもはれたが、其後そのゝちかれ學校がくかう卒業そつぎやうして、元來ぐわんらいならば大學だいがくきを、大望たいもうありとしようして、幾何いくばくもなく日本ほんごくり、はじめは支那シナあそ
……頼みとはこのことじゃが、どうか水野より先に捨蔵さまの居所を捜し出して、この書状をお渡しくだされ。……この書状には、そなわらぬ大望たいもうにこころを焦すはしょせん身の仇。
顎十郎捕物帳:01 捨公方 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ころたれしらぬ樣になし成人せいじんの後に名乘出なのりいづべしと心ふとくも十二歳の時はじめおこ大望たいもうの志ざしこそおそろしけれ既に其歳もくれて十二月十九日となりければ感應院には今日けふは天氣もよければ煤拂すゝはらひを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
明智君、きみはわしの大望たいもうを知っているじゃろう。それは人間をひとりずつ透明にしてゆくことだ。百人、千人、万人、透明人間の大集団をつくろうというのだ。まあ考えてみたまえ。
透明怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「そうよなあ、十八か、九かな。二人とも大望たいもうをもってな。あわよくば外国船に乗りこんで、メリケンへ渡ろうというんじゃ。シアトルにでも行ったとき、海にとびこんでおよわたろうという算段さんだんよ」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
大望たいもうを遂げて帰国すれば、蜂須賀家では屈指くっしな格式にとりあげられるのは無論のこと、やがてまた、幕府が仆れ蜂須賀家が将軍の職をつぐ日には、自分も
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
行く末のかれが大望たいもうは霧のかなたに立ちておぼろながら確かにかれの心をき、恋は霧のごとく大望を包みて静かにかれの眼前めのまえに立ちふさがり、かれは迷いつ、怒りつ
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
老女の言葉の裏には、我々を三千石以下と見ているものらしい。不肖ふしょうながら我々、未来の大望たいもうを抱いて国を去って奔走する目的は、三千や一万のところにあるのではない。
つねづね、果心居士かしんこじからよくお叱言こごとばかりいただいているくせに、竹童はもう鞍馬山くらまやまへ帰るのもわすれて、こんな大望たいもうをおこした。思いたっては、たてもたまらないかれだった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
盲のすがたを見られたら、一の人たちにも恥ずかしゅうございます。なおしてください。八神殿の神々さま、その大望たいもうをとげましたら、わたしのこしにさしている般若丸はんにゃまるを、きッと奉納ほうのういたします
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さして二度にど大望たいもう
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大望たいもう
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)