大好だいすき)” の例文
『僕はあゝした男が大好だいすきですよ。僕の知つてる美術家連中も少くないが、吉野みたいな氣持の好い、有望な男は居ませんよ……。』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
しかし自分も貧乏が大好だいすきだとも云兼いいかねる。貧乏神の渋団扇であおがれてふるえながら、ああ涼しいと顎を撫でるほど納まりかえっている訳にも行かぬ。
貧富幸不幸 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
錦手にしきでい葢物ですね、是は師匠が大好だいすきでげす、煎豆腐いりどうふの中へ鶏卵たまごが入って黄色くなったの、誠に有難う、師匠が大好
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
森君は大人のような智慧ちえがあって、何だかこわいけれども、一方ではとても優しい所があるから僕は大好だいすきだ。
贋紙幣事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
僕は堀割の景色が大好だいすきだ、東京も此れあるが爲めにやつと市街の美を保つて居る。堀割ばかりではない。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
……間違まちがつたら、ゆるしツこ、たしか、たう時事新報じじしんぱうもよほしであつたとおもふ。……二人ふたりともまだ玄關げんくわんたが、こんなこと大好だいすきだから柳川やながは見物けんぶつ參觀さんくわんか、參觀さんくわんした。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
都会嫌だから、伯林ベルリンなんぞには足をめないらしいのです。尤もハウプトマンは大好だいすきと見えます。
江戸女「薄紫うすむらさきといふやうなあんばいで意気だねえ」上方女「いつかう粋ぢや。こちや江戸紫えどむらさきなら大好だいすき/\」。すなわち、「いき」と「粋」とはこの場合全然同意義である。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
私には空想とか想像とかで、もっともらしく書かれた作も大好だいすきですが、またほとんど観察ばかりで細かく深く実際の人間を写してある小説も拝見致したい。嘘らしい本当の小説は嫌いです。
産屋物語 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
「あの、何を……。柳屋にいるお葉という女……。い女だね。俺ア大好だいすきだよ。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
何心なく持つて来たるサイフォンのびんにコップ三つ四つ、先づ兼吉にいで出すを、小花そばよりぢつと見て、ねえさんラムネがすきねと声震はせじとやうやういふに、大好だいすきよと無頓着なる返辞
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
かけコレ/\町人其方は大分だいぶんさけが飮る樣子なりといふに彼男は此方こなたに向ひイヤモウ酒は大好物だいかうぶつで御座りますと云ひければ半四郎夫は話せる/\其の酒飮はそれがし大好だいすきなり酒は一人で飮ではうまくなし一ぱいあひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
魔法使を同役にするのは大好だいすきでございます。
『僕は、ああした男が大好だいすきですよ。僕の知つてる美術家連中なかまも少くないが、吉野みたいな気持の好い、有望な男は居ませんよ……。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
もと/\芸人社会は大好だいすき趣味性しゆみせいから、おとよ偏屈へんくつな思想をば攻撃したいと心では思ふものゝそんな事からまたしてもながたらしく「先祖の位牌ゐはい」を論じ出されてはたまらないとあやぶむので
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
大好だいすきあじの新切で御飯が済むと、すずりを一枚、房楊枝ふさようじを持添えて、袴を取ったばかり、くびれるほど固く巻いた扱帯しごき手拭てぬぐいを挟んで、金盥かなだらいをがらん、と提げて、黒塗に萌葱もえぎの綿天の緒の立った
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
町「そうでございますか、私は其の山奥が大好だいすきでございます」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「でも、温良おとなしいわ。あたしこの犬が大好だいすきよ。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ああ云う笑談は己は大好だいすきだ。
もともと芸人社会は大好だいすきな趣味性から、お豊の偏屈へんくつな思想をば攻撃したいと心では思うもののそんな事からまたしても長たらしく「先祖の位牌」を論じ出されてはたまらないとあやぶむので
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
鎧と武者領むしゃえりとが大好だいすきです。