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啾々
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しゅうしゅう
ふりがな文庫
“
啾々
(
しゅうしゅう
)” の例文
高倉の宮の
御謀議
(
おんくわだて
)
むなしく、うかばれない
武士
(
もののふ
)
たちの亡魂が、秋のかぜの暗い空を、
啾々
(
しゅうしゅう
)
と駈けているかと、性善坊は背を寒くした。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
祖母の妖怪話が頭に
沁
(
し
)
みついているせいか、どこかで
啾々
(
しゅうしゅう
)
として鬼が
哭
(
な
)
いているといったような、屋の棟三寸下るといったような
棚田裁判長の怪死
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
離ればなれの乾雲丸と坤竜丸が、家の
檐
(
のき
)
も三寸下がるという
丑満
(
うしみつ
)
のころになると、
啾々
(
しゅうしゅう
)
としてむせび泣く。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
経文を唱える俊恵の声は
啾々
(
しゅうしゅう
)
たる
鬼哭
(
きこく
)
を思わせる、しばらくすると七兵衛が呟くようなこえでそれに和し、村人たちもそっとそれにつけだした、他聞を
憚
(
はばか
)
りながら
荒法師
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
遥
(
はる
)
かに
瞰下
(
みおろ
)
す幽谷は、
白日闇
(
はくじつあん
)
の別境にて、夜昼なしに
靄
(
もや
)
を
籠
(
こ
)
め、脚下に雨のそぼ降る如く、渓流暗に魔言を説きて、
啾々
(
しゅうしゅう
)
たる鬼気人を襲う、その
物凄
(
ものすご
)
さ
謂
(
い
)
わむ方なし。
妖僧記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
女を生めばなお
比隣
(
ひりん
)
に嫁するを得、男を生めば埋没して百草にしたがう。君見ずや青海の
頭
(
ほとり
)
、古来白骨人の収むるなし。新鬼は
煩寃
(
はんえん
)
し旧鬼は哭す。天
陰
(
くも
)
り雨
湿
(
うるお
)
うて声
啾々
(
しゅうしゅう
)
たり。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
大笑
(
たいしょう
)
の奥には熱涙が
潜
(
ひそ
)
んでいる。
雑談
(
じょうだん
)
の底には
啾々
(
しゅうしゅう
)
たる
鬼哭
(
きこく
)
が聞える。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
とき建安十九年十一月の冬、天もかなしむか、曇暗許都の昼を閉じ、枯葉の
啾々
(
しゅうしゅう
)
と御林に
哭
(
な
)
いて、幾日も幾日も
衙門
(
がもん
)
の冷霜は解けなかった。
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
啾々
(
しゅうしゅう
)
と近づき、啾々と進んで、杖をバタリと置いた。濡鼠の
袂
(
たもと
)
を敷いて、
階
(
きざはし
)
の下に
両膝
(
もろひざ
)
をついた。
貝の穴に河童の居る事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
かつて音楽などに
嗜
(
たしな
)
みをもたなかった伊兵衛は、その韻律がどれほどのものか分らなかったが、じかに胸へ訴えてくる
啾々
(
しゅうしゅう
)
の音には、ほとんど心を戦慄させられるものがあった。
夜明けの辻
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
吉野の
雪
(
ゆき
)
霏々
(
ひひ
)
、奥州の
秋
(
あき
)
啾々
(
しゅうしゅう
)
、
巷
(
ちまた
)
にも、義経詮議の声の
喧
(
かしま
)
しく聞えてきた頃、誰やら、義朝の廟、南御堂の壁へ、こんな落書をしたものがある。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しょぼけ返って、
蠢
(
うごめ
)
くたびに、
啾々
(
しゅうしゅう
)
と陰気に
幽
(
かすか
)
な音がする。
貝の穴に河童の居る事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
最前のあの笛の音が、隙もる風のように、
啾々
(
しゅうしゅう
)
と障子紙に泣きすがって来るようなのを聞いている間、賛之丞はお稲の膝から顔を上げなかったのである。
八寒道中
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ここでは必然に、後鳥羽の
鬼魂
(
きこん
)
ともいえる
啾々
(
しゅうしゅう
)
の松かぜに明け暮れのお誓いを吹き
研
(
と
)
がれずにはいられなかった。
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それを、じっとこらえて、ただ被疑者の弁解ですまして来たのは、伯父憲房の忠言にもよるが、高氏の胸に、かの
啾々
(
しゅうしゅう
)
たる置文の声があったからである。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「一
揮
(
き
)
して、風を断てば、剣は
啾々
(
しゅうしゅう
)
と泣くのだ。星
衝
(
つ
)
いて、
剣把
(
けんぱ
)
から
鋩子
(
ぼうし
)
までを
俯仰
(
ふぎょう
)
すれば、
朧夜
(
おぼろよ
)
の雲とまがう光の
斑
(
ふ
)
は、みな剣の涙として拙者には見える」
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
俄に、晩のような暗さを見てのせいか、昼のきりぎりすが
啾々
(
しゅうしゅう
)
と啼き立ち、どこかでは
遠雷鳴
(
とおがみなり
)
が、いよいよ空の形相を、具行の胸そのもののようにしていた。
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
奔々
(
ほんぽん
)
と
閃
(
ひらめ
)
く川水は前方に見えるが、柿崎隊の
大蕪菁
(
おおかぶら
)
の
馬簾
(
ばれん
)
や、中軍の中之丸旗、
毘沙門旗
(
びしゃもんき
)
のいたずらに
啾々
(
しゅうしゅう
)
と
嘯
(
うそぶ
)
くばかりで、いつまで経っても馬すすまず
兵
(
へい
)
渉
(
わた
)
らず
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
地の底から、
啾々
(
しゅうしゅう
)
と泣く声に似ている。どこの
嬰児
(
あかご
)
だろう? 内蔵助はすっかり醒めていた。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
思いがけない人間の生血を土中に吸って
喊呼
(
かんこ
)
して歓ぶのか、
啾々
(
しゅうしゅう
)
とと憂いて樹心が
哭
(
な
)
くのか、その巨幹を梢の先まで戦慄させ、煙のような霧風を呼ぶたびに、
傘下
(
さんか
)
の剣と人影へ
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
秋の末——野は
撩乱
(
りょうらん
)
の花と丈長き草におおわれていた。日もすでに暮れかけると、大陸の冷気は星を
研
(
みが
)
き人の骨に沁みてくる。
啾々
(
しゅうしゅう
)
として、夜は肌の毛穴を凍らすばかりの寒さと変る。
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして、
畏
(
おそ
)
る畏る封を除くと、紙質のちがった、べつの一書があらわれた。……と、故人の
鬼魂
(
きこん
)
がそこらを
旋
(
めぐ
)
ッて
啾々
(
しゅうしゅう
)
と生き身に何かを訴えるようだった。——高氏は、指のふるえを禁じえない。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
黒風一陣、北斗は雲に
滲
(
にじ
)
んで、
燦
(
さん
)
また滅、天ただ
啾々
(
しゅうしゅう
)
の声のみだった。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
啾々
(
しゅうしゅう
)
、秋の風に、星が白い。——幸いにも、夜だった。
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
啾
漢検1級
部首:⼝
12画
々
3画
“啾々”で始まる語句
啾々乎